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「蘭子とは幼馴染なんです」

 もう何百回と蘭子さんから聞いた話でも、浩太郎さんから聞くとなると興味深い。蘭子さんは昔から今の蘭子さんだったようで、一度決めたこと絶対に曲げないし、納得するまで言うことをきかない。怖いものがなくて、どんどん自分で進んで行くような子だったらしい。

 だからこそ今、鹿本宝石店の社長をしているんだと思うし、格好いいと思う、と浩太郎さんがほろ酔いで言った。その顔はどこか晴れやかで嬉しそうだ。

 ちなみに蘭子さんはと言うと、デレデレ、と言う表現がぴったりなくらいニヤニヤしていた。大好きな人に褒めてもらっているんだ、そりゃそうだ。

「だからですね」

「うんうん」

「蘭子に彼氏が出来ないのが心配で」

「ぐぇ」

 蘭子さんから変な音が出た。けれど浩太郎さんはそんなこと気にしない。

「仕事もバリバリするし、ハキハキしているし、社長だし、相手が引いちゃっているんじゃないかと心配なんですよ」

「ほうほう」

「きゅう・・・」

「今まで彼氏が出来たってことも聞いたことないし」

 蘭子さんに目をやる、ついに突っ伏したか。

「おかしいと思いませんか?」

「おかしいとは、どの辺りがでしょうか?」

「だって蘭子、こんなに可愛いのに」

「へっ」

 凄い勢いで起き上がったぞ。超高速の逆回転みたいに。

「そこらのモデルさんより綺麗だと思うし、スタイルだって悪くないのに。どうしてなんだろう」

「えっえっ」

 見つめられた蘭子さんが耳まで赤くなる。瞬きが多くなった。「あ」と見つめていた浩太郎さんが手を打った。

「あれか、料理が出来ないからか」

「浩太郎が出来るじゃない」

 すかさず蘭子さんが答える。あれ? ちょっと待てよ、それプロポーズ?

「確かに」

 おっ!?

「料理出来る男性って最近多いしね」

 あー、うん。確かに多いよね。俺も料理が趣味だし。

 ってそんなことより隣の席の顔をちゃんと見ろ。浩太郎さん、あんたのそーゆーとこがもったいない。

「そう、だね・・・」

 蘭子さんの浮き沈みが激しい。見ていて可哀相になる・・・。

「そうだよ」

 再び突っ伏した蘭子さんの頭に、浩太郎さんが優しく触れた。

「オレがいつまでもそばにいてあげられるわけじゃないし」

「え?」

「早く、見つけなきゃね」

 ふふふ、と浩太郎さんが笑う。蘭子さんは困ったように微笑んだ。

 蘭子さん頑張れ。

 心の中で応援団が声を上げる。独り身アラサー同士、応援くらいさせてくれ。

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