近くて遠い

カゲトモ

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「初めまして」

「ようこそいらっしゃいました」

 そうにっこりと微笑んだはずなのに、胸の中はワッショイワッショイと暴れている。おいおいマジかマジかマジか。心の準備してないから、本当! 来るなら来るって言って!

「素敵なお店ですね」

「ありがとうございます」

「っと。浩太郎、何にする?」

 当店に浩太郎さんキターっ!

「何にしようかな」

 想像していた浩太郎さんそのままの人が来た。といっても幾度となく写真を見せられていたから当たり前かもしれないけれど。こう、純情そうな素朴そうな人で、見るからに良い人そう。

「えーっと、蘭子のおススメはなに? オレ、こんなおしゃれなお店来ないから分からないよ」

「え~? えーっとねぇ」

 お、お、お、蘭子さんいつもと違うぞぉ? 女子、女子だ。いつもよりなんか女子だ。髪を耳に掛ける仕草も、いつもより女っぽい。

「それじゃぁそれにしようかな」

「私も同じものを」

「かしこまりました」

 アルコール度数の低いパッシモ・グレープフルーツをオーダー。浩太郎さんは蘭子さんとは違い酒が弱いのだ。

「お待たせいたしました」

 二人の前にピンク色のロンググラスをサーブする。浩太郎さんは興味深そうにそれを見つめた。

「オレには可愛すぎない?」

「え? まぁ、確かに可愛いし、甘口だけど」

 蘭子さんが楽しそうに答える。浩太郎さんはそれを見て少し笑うと、丁寧に「頂きます」と言って口に運んだ。

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