オレはキョンシーか、バカヤロー!

やた~っ!ようやく給食の時間だ!


もう、今日は腹が減って腹が減って…


しかも給食なんて何十年ぶりだ?


オラ、ワクワクすっぞ!


しかも何と!今日の献立表にはオレが大好物だった揚げパンがある!


いや~、いいねぇこの給食ってのは。

オレはその当時、給食なんて大した事ないと思っていたが、こうやって改めて給食を食べるという喜び!


とにかく腹減った、食べよう。


ボンっ!


【あぁ~ええのう、給食か…ワシも腹減ってきたわい】


ジジイっ!こんな時に現れて来やがって、人の物パクるつもりなのか!


【なぁ、ワシャ腹減って仕方ないんじゃ。少し恵んでくれんかのぅ…】



…このジジイ、オレの机の上でドカッと座ってやがる!


「ジジイ、テメーオレの給食の上に座るんじゃねえ!飯食えないだろうが!」


ったく邪魔だ!どけっ!


「おい、智…お前朝から変だぞ?誰に向かって喋ってんだ?」


やべっ!泰彦にまた言われちまった…


このジジイはオレにしか見えないんだったっけ…


『また始まったわよ』


『霊能者にでもなったのかアイツはw』


『ザワザワザワザワ…』


うっ!また変な眼差しを向けられてしまった!


【なぁ、頼むから少しだけ食わしてくれんかのう?】


「バカかテメーは。仙人は霞食ってるじゃねえか…

人間様の物を食おうとしてんじゃねぇぞ、このインチキヤローが」


オレは周りに聞こえないようにボソボソと仙人に話をした。


【何を言うか、仙人でも霞だけじゃ腹の足しにならんわい!】


仙人は杖を取られ、冴えない年寄りにしか見えなくなってしまった。


「あっそ。じゃあオレの給食奪い取ってみたらどうだ、ん?あのホンダラホンニャラとか呪文唱えて」


オレはこんなジジイに構ってる暇はない、とにかく腹減ったから給食を食らうのみ!


【なぁ、頼む!食わしてくれんか、この通りだ】


牛乳飲んでる時に急に超至近距離で顔を近づけてくるもんだから、オレは思わず牛乳を吹いた!


「ぶほっ…!」


『汚~い、牛乳吹かないでよ』


『もう、何なのさっきから!』


「おい、山本。今から保健室行こう、おいちょっと手伝ってくれ!」


龍也が周りのヤツらに声を掛け、泰彦とチャッピーがオレを無理矢理席から離そうとした。



「バカ、龍也!何しやがんだ、テメー!まだ給食食ってないぞ!離せ、おいっ!」



「龍也の言うとおり、お前ちょっと保健室で休んでこい」


泰彦も力ずくでオレを席から離し、両足を掴んだ。


「離せ!オレはまだ揚げパン食ってねえぞ!」


まだ一口も食ってないのに離れたくない!


「いいからジタバタすんじゃねえ!チャッピー!お前も手伝え!」


龍也に言われ、チャッピーまでもがオレを引きずり出し、席から離れてしまった…


あぁ、オレの給食が…


バタバタ暴れるオレを龍也と泰彦、チャッピーが手足を押さえつけ、一階の保健室まで拉致られた…


うぅっ、給食が…


「離せ~、オレはまともだぁ、せめて給食だけ食わせてくれ~っ!」


オレの叫ぶ声が階段中に響き渡る


「おとなしくしろ!暴れるんじゃねえっ!チャッピー、ちゃんと足持てよ!」


龍也はオレの両脇を持ち、泰彦とチャッピーは片足ずつ持って一階の保健室まで拉致られるような格好で階段を下りた。


「だってコイツ、スゲー暴れるから…」


チャッピー!オレは給食が食いたいだけなの!


ジジイのせいで何でこんな目に遭わなきゃならないんだ…


「山本!お前保健室じゃなく救急車乗って病院行った方がいいんじゃねえか」


何だと?救急車?病院?


「イヤだ~っ!給食食いたい!」


「ウルセーっ!静かにしろっ!」


…くそっ3人揃って言わなくてもいいのに。


そしてオレは3人に手足を持たれたままの状態で保健室の前まで連れていかれた…


「失礼しまーす」

と言って泰彦が先に保健室に入った。


ホントに保健室に入るのかよ?


「あ、先生いない。どうしようか?」


チャッピーは保健室内を見渡したが、先生はいなかった。



「だからオレは何でもないっつーの!いいから離せって!」


オレは振りほどこうとするが、3人がかりだと振り払う事は難しい。


「そうだ、ベッドに縛り付けようぜ!そのうち先生戻ってくるだろうから」


龍也の案でオレは無理矢理三人にベッドに寝かされるようにされ、手足を押さえつけられていた。


「何っ?冗談じゃねえぞ、おいっ龍也!離せってば」

いくらもがいてもさすがに三人に押さえつけられれば、抵抗は出来ない。



「やかましい!お前ホントマジでおかしいぞ!この際だから脳から爪先まで調べてもらえ、チャッピー!そこら辺にロープないか探してこい!」



チャッピーは龍也の言うとおり、何か縛る物はないか室内を物色している。

オレは龍也と泰彦にベッドに押さえつけられ、身動きが取れない…


「ロープは無いけどタオルなら何枚もあるからこれで手足縛り付けたらどうだろ?」


チャッピーは何枚もの白いタオルや包帯をいっぱい持って龍也と泰彦はオレの両手両足をベッドの両端にある柵に縛り、拘束した。


「テメー、チャッピー!オレは精神病患者じゃねえぞ、コラッ!」


うぅっ!オレこれでもホントは41才なんだぞ…


何が悲しくて中2に戻されて手足拘束されなきゃなんないんだ…


「よし、これでもう暴れる事はないだろう」


龍也が一安心とばかりに、ようやく全部のタオルと包帯を使い、オレは身動きが取れない。


「龍也、確か隣は用具室だからロープあるんじゃね?探せば出てくるかもよ」


泰彦の提案でチャッピーが用具室に入り、長いトラロープを持ってきた。


「はぁっ!何でそんなもんがあるんだよっ?」


マジかよ、手足縛られて、更にロープでまた縛られるのかよ?


「おおっ、これちょうどいいじゃん!じゃ、皆でグルグル巻きにしようぜ」


工事現場とかで使う黄色と黒のトラ模様のロープを手にし、3人はオレの身体をベッドごとグルグル巻きにした。


「タオルだけじゃ暴れて外れるかもしれないしな。よしじゃ行こうか」


「待て待て~っ!龍也!この状態で先生戻ってきたらどうすんだよ?オレは至って正常だっつ~の!」


「全く智はうるせえな、ったく…ちょっと待ってろ」


泰彦は机に向かい、A4サイズのコピー用紙に何やらマジックで書いている。


「プッ…これw」


チャッピーが笑いを堪えている。何書いたんだ、一体?



「泰彦、お前…プッ…ギャハハハハ!」


龍也までもが爆笑している。


「おい、何やってんだよ!泰彦、テメー何書いたんだ?」



「ほれっ!よく見てみろw」


身動きの取れないオレに泰彦はこんな文を書いた。


『先生へ。2年3組の山本君は今朝から意味不明な言動が多く、クラス全員が迷惑しています。

もしかしたら何かに取り憑かれてる可能性があるかも知れません。

ですからこの際、頭の先から爪先まで、特に脳を重点的に検査するようお願いします。

2年3組一同より』


何ぃ~っ!


「このバカっ!取り憑かれれてるって何だよ!お前、ふざけんのもいい加減にしろっ、おいっ、聞いてるのか?」


冗談じゃねえぞ、せめて給食ぐらい食わせてからにしろってんだ!


「ハイハイ、後は先生に任せようぜ、ほれっ」


パチン!


龍也はそのコピー用紙をセロテープでおでこに貼り付けやがった…


「こ、これじゃキョンシーだよっ…」


チャッピーの一言に二人は大爆笑した。


「キョンシーwwwダハハハハハハ!」


「じゃキョンシーwww先生にしっかり診てもらえよな!…ブワハハハハハハ!」



爆笑しながら三人は保健室を出て行った。


「おい、オレを置いていくなっ!こらっ、なぁ頼むから給食だけ食わせてくれっ!おいっ、聞いてるのかっ!お~いっ!」



くそっ、何なんだこの屈辱的な格好はっ!


しかもキョンシー扱いしやがって…


給食食いてえ、揚げパン食いてぇ~っ!



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