誰かの世界で生きるということ

蜂谷

誰かの世界で生きるということ

 下弦かげんの月が綺麗な夜に母上が亡くなった。

 父上の元へ行ったのだ、とまだ幼かった俺に従者たちは言ったが彼らは何も知らない。


 ***


「綺麗な花の絵ですね。」


 屋敷から六つ角を曲がると隠れるのに丁度良い廃寺がある。才吉さいきちは寺からの帰り道、道端で絵を売る老婆と青年の前で立ち止まる。木札に書かれた墨絵の前に膝を付き、老婆の顔を覗き込む。


「おや…お若いお客さんだ。」

「お婆さん、この絵にはとても温かさを感じます。」

「そうかい、ありがとう。お若い方…良ければお一つ貰っていっておくれ。」


 そう言って絵を差し出した老婆の手は細く関節が浮き出でており、指先は墨で黒ずんでいた。才吉は懐から銭の入った巾着を取り出すと口を開いたが、その手を探り探り掴み老婆が静止する。


「お代は要らないよ。」

「そんな…それにお婆さん、貴方は目が見えないんですね。」


 皺がれた手を才吉の小さな手が包み込む。盲目の老婆が描く花はとても美しいとは言えない、しかし、才吉はそんな絵に何処か惹かれていた。老婆の手を放し、絵を受け取るとずっと隣で黙り込んでいた青年が少し嬉しそうに微笑んだ。そんな表情に才吉も嬉しそうに笑みを浮かべ、巾着から一枚の硬貨を取り出し、今度は青年に差し出した。青年は驚いた表情を浮かべたが、言葉を発する代わりにただ首を左右に振るだけだった。


「これは僕のほんの気持ちだから…」


 才吉がもう一度、青年へと手を差し出した時。遠くから走ってくる足音と共に、血相を変えて才吉の名を呼び近付いてくる二人の大男の姿が見えた。しまった、と麦太が言うのとほぼ同時刻に一人の男が声を上げた。


「才吉様、きっと何時もの場所だと思って行ってみれば居らず、随分探しましたよ。さあ、帰りましょうぞ。」

上月丸じょうげつまる、こちらのお婆さんから絵をいただいたんだ。お礼に屋敷に招きたい。」

「何を言っておられますか…明日は襲名式。このような場所で油を売ってる場合ではございませんぞ。」

下月丸かげつまる、祝いの席なら客人は多い方が…」

「才吉様」


 ほんの少し前まで静まり返っていた道に男たちの声が重なる。そんなやり取りを見ていた老婆がくすりと笑って言葉を続ける。


「才吉様でいらしましたか…これはとんだご無礼をお許しくださいませ。死にぞこないの老婆には勿体無いお言葉まで…」

「さあ、帰りましょうぞ。」


 上月丸と呼ばれた男が才吉の腕を掴む、その力は強く振り払おうと才吉は試みたが敵わなかった。引かれるがまま歩みを進める才吉は老婆を振り返り尋ねる。


「お婆さん、名は何と言うのですか。」

鳴雪めいせつと申します。」

「鳴雪さん…必ずまた会いましょう!必ず、遣いを…!」


 角を曲がる間際、才吉は二人にそう言い残すと屋敷へと続く重苦しい空気を一つずつ拾うように足取り鈍く歩いた。


  ***


「この度は、十三代目津守麦太つもりむぎた、襲名おめでとうございます。」


 儀式で使う独特な匂いを放つ香に才吉は衣で鼻を覆いながら代わる代わる挨拶に出向く人間たちを眺めていた。襲名の儀が終わって早三日。同じような毎日が続いていた。やっと落ち着きを見せた部屋で才吉は大きな伸びをした。母上が亡くなって四十九日の翌日、駆け足の様に執り行われた襲名の儀式。才吉は母上の死に際に合うどころか、死後も顔を拝ませてはもらえなかった。実の子で有りながら、先祖代々の習わしの元、頭首は死が近くなると一部の側近を除き、親族でも会うことが許されないのだ。其の多くは謎に包まれていたが、才吉はまだ幼かった。父上を失くした時、余のことわりを知ってしまったのだ。


「下月丸、お前は母上に会えたのか。」

「いいえ、私の様な立場の者がお館様になど到底会えるはずもございません。」

「才吉様…いえ、麦太様のお母上を看取られたのは、私共の父、鬼月おにつき、だと伺っております。」

「お前たちの父か」


 都では由緒正しき大家である月影つきかげ家は、津守家の代々の従者として傍に仕えてきた。故に麦太が物心ついた時には、上月丸と下月丸という兄弟がいつも傍にいた。そんな彼らだからこそ、今回の襲名を誰よりも喜んだのは言うまでもない。そんな家族のような二人の姿を微笑ましく思いながらも、いつか自分が生を全うする際は彼らが看取ってくれるのだろう、と幼くも才吉は考えていた。


「お前たちは生涯、僕の傍にいてくれるのか。」

「もちろんです、麦太様。」

「麦太様、それは愚問ですぞ。」

「それなら」


 才吉は「僕よりも長生きでいてくれ」と続けた。

 二人は静かに頷いた。それを見た才吉は安心したのだろうか、ゆっくりと重たい瞼を閉じると肘当てに体を任せるようにして眠りについた。その間も数人の者が挨拶に出向いたが全員が顔を見ることも叶わず帰された。別室の片隅には、襲名祝いの貢ぎ物で溢れかえっていたが、それは良いものばかりではなかった。時に、津守一族に恨みを持つ者から憎悪に満ちた厄介な品が紛れていることがあった。従者たちは其れを探し出しては丁寧に弔うのだった。


 津守一族は代々親しみやすく慈悲深い陰陽師として都では有名であった。そして、彼らは付喪神や式神との繋がりが特に濃く、物を大切に扱うことを教えとしていた。その教えは従者にも受け継がれ、彼らはその教えの通り、憎しみに満ちたその品物に敬意を払った。


「才吉様はまだ子供だと言うのに…なんと卑劣なことを。」

「子供と言えど、実力は確かだ。」


 襖越しに聞こえた従者たちの声で才吉は目が覚めたが、才吉はぼんやりと襖を見つめながら暫し微睡みの中にいた。部屋に下月丸と上月丸の姿はなく、近くで話をしていた従者たちが遠ざかると一気に辺りは冷たい静寂に包まれた。襖に長細い影が映り、そして蝋燭の火が揺らぐように歪んで消えた。それは一瞬の事だったが、才吉は見逃さなかった。眠たい目を擦りながらも背筋を伸ばし、胸の前で順番に九の印を結び唱えた。そして、左手で鞘、右手で刀を作り納刀の構えを取った。その時だった、勢い良く戸が開かれる。


「才…む、麦太様!ご無事で…。」

「ああ…そんなに慌ててどうしたんだ、上月丸。」

「…どうにも。」


 襲名祝いの品に閉じ込められていた悪霊が従者に憑依し刀を振り回して暴れ、頂いた品だけでなく屋敷の一室も破壊されたのだと話した。不安げな表情を浮かべた才吉だったが「皆は無事か」と続けて問う姿は、もうすっかり頭首の顔だった。


「いつの代も襲名披露は一筋縄ではすまん。皆は無事ですぞ、麦太様。御安心なされ。」

明月めいげつじい様。」

「麦太様はまだお若い…襲名にはちと早いかと思っておったが、良い頭首の顔をされている。」

「明月様、一体…何の御用ですか。」

「何、十三代目の襲名とあらば頭首の私も挨拶せねばらなんじゃろう。それと預かりものがあってな。」

「預かりもの?」


 そう言って明月が差し出したのは桜色の風呂敷に包まれた一枚の墨絵だった。小振りの木の板に描かれた昇り龍は、これからの津守家の繁栄を願うように、力強く天に昇っていた。


「美しい…」

「その絵の作者は。」

「鳴雪さんですね。」

「おお、知っておったか。」


 はい、と才吉が嬉しそうに頷き道中で出会った二人の姿を思い返していると、そんな才吉とは対照的に明月は苦い笑みを浮かべ、その絵の裏側を見せる。其処には【鳴雪・没】と彫られていた。才吉は目を疑ったが、其処に指先でもう一度触れたが、それは紛れもなくしっかり彫られており、「亡くなったのだ」と改めて明月の口が其の信じがたい事実を告げた。


「ですが、私が会ったのはつい先日。ほんの3日程前です。こんなはずは…」

「鳴雪が亡くなったのは昨日の朝だ。路上でこの絵を抱え、亡くなったそうだ。」

「なんと…僕が、あの時、鳴雪さんを屋敷に招いていれば…!」


 才吉の白銀の瞳からじわりと大きな水珠が溢れ出す。其れは次々に零れ、畳に濃い染みを作って消えていった。そんな姿を上月丸は見て居られず目を逸らした。そんな才吉の姿に、明月の老いを感じさせぬ大きく逞しい手が才吉の頭を優しく包んだ。


「麦太様は本当にお優しい。鳴雪もそんなに想ってもらえたのだから、報われることでしょうな。」

「…しかし、僕は…」

「鳴雪と私は古くからの知り合いでな。彼女の腕は確かだった。昔、先代の麦太様が彼女の絵を気に入ってな。」

「…父上が?」

「何度か津守家の屋敷に来てくれないか、と招いたが彼女は頑なに断った。」

「何故です?」

「それは誰にも分からぬのです。しかし、貴方は先代の子です。好みが良く似ておられる。」


 そうでしょうか、と才吉は小声で呟いたが、その声を掻き消す程の大声で、そうですぞ、と明月は豪快に笑った。そして、才吉の膝に昇り龍の絵を置くと、才吉の白く細い手を掴み。そっとその絵の縁に触れさせた。明月の瞳に宿る優しい黒紅色が歪む。彼は己の皺だらけの右手で目頭を押さえながら、心配するなと言わんばかりに歯を出して笑う。


「物に命が宿る様に、絵にもまた命が宿るのだ。と良く鳴雪が言っておりましてな。懐かしい…歳を取るとどうも感傷的になって敵いませんな…。」


 再び、部屋に沈黙が不安という影を落とした。其の影はゆっくりと麦太の心を飲み込むようにその灰暗い手を伸ばしていく。其れは誰にも見る事が出来ないが、確実に麦太の優しい心を蝕むべく忍び寄るのだった。しかし、そんな影の企みを打ち消したのは、勢い良く現れた下月丸だった。


「麦太様!大変です。中庭に悪霊に取り憑かれた犬が…!」

「なんだと…こんな時に…」


 麦太は絵を抱えたまま立ち上がると回り廊下へと飛び出すが、その後を直ぐに負った明月の腕が小さな麦太の肩に掛かる。そして後ろから優しい声が麦太の鼓膜を揺らしたのだった。


「ご安心くだされ、麦太様。その為に我ら夜叉一族はいるのですぞ。我々が此処に居るからにはもう心配することなど何一つござらんのです。」

「…頼もしいな、明月じいは。」

「何をおっしゃるか。麦太様を支える月影兄弟ほど頼もしい用心棒がおりますか。」

「うむ…そうだな。」


 二人会話を聞いていた月影兄弟はその傍らで何処か照れ臭そうに笑ったが、そんな穏やかな雰囲気も長くは続かず、室内は一気に針を刺すような鋭さを持った空気へと変わった。才吉は再び身構えると、中庭にいるどす黒い煙のようなものを身に纏った赤い目を持つ大きな獣が不協和音のような鳴き声で吠えた。耳をつんざくようなその声に周囲の誰もが耳を塞いだ。


「なんて声だ…」

「頭がおかしくなりそうだ。」


 月影兄弟は耳を塞ぎながらもその獣の姿から目を逸らさず、じりじりと間合いを詰めていく。時折、二人は目で合図を送りながら、一歩また一歩と前へ進むのだった。


 つんざく様な獣の声、救える筈だった命の終わり、不可解な両親の死、伸し掛かる頭首としての責任。まだ幼く未熟な麦太の不安定な精神と悪霊の悲しくも怒りに満ちた不協和音が共鳴する。


「……うぅっ」


 何者かに握り潰されるかのように才吉の心臓が痛み、唇からは呻き声が上がる。冷たい床に膝が落ち、震える手で体を支える。その手には不釣り合いな昇り龍の姿があった。頭首の姿に月影兄弟の足が止まる。傍らに居た明月が才吉の肩を抱いたが、同様する兄弟の姿に、あの穏やかな表情からは想像付かぬ険しい形相で叫ぶ。


「何をしている!お前たちは眼の前の獣に集中せんか!麦太様はわしに任せい!」


 才吉の心臓が凄まじい音を立てて脈打つと白い肌に細い血管が何本も浮き上がる。幼い麦太は其の痛みに耐える様に歯を食いしばり、眉間に深い皺を刻む。その姿を例えるならば般若。カタリ、と才吉の手から落ちた絵は中庭の土の上へ転がった。才吉の白銀の目が其の絵に描かれた龍の力強い瞳を捉える。


「臨…兵…闘…」


 苦しみの中で右手で刀を作り、力なく伸ばした腕は震えながら空を切る。その姿を見た明月が其の傍らで同じような動作で九字を唱える。右手刀で空を切り、左手で鞘を作る。そんな中、月影兄弟はそれぞれの腰に据えた妖刀を引き抜く。辺りにはあらゆる音が響き合い、其処に生まれた風が地に散っていた葉を巻き上げ、天へと放る。才吉が悲鳴を上げるように護身法を唱えた後、力尽きた様にその場に崩れ落ちた。「麦太様!」と明月が名を叫ぶと時を同じにして、墨絵で描かれていたはずの昇り龍が巻き上がる葉の合間を縫って飛び出したのだ。


「なんと…これは…」


 其の龍は五丁程の長さを持ち、鋭い牙を持つ大きな口で中庭で猛威を振るう悪しき獣を食い破った。其の姿は神々しく、黒い鱗を纏った姿からは想像も付かぬ程に優しい瞳を持つ黒龍だった。そして、其れは何時しか空を蔽っていた厚い雲を突き破り、けたたましい落雷と共に板へと戻っていった。其処に居合わせた全ての者が夢を見ていたのではと疑う程に、幻想的な一瞬の出来事であった。


「…何だったんだ。」

「…わからん、しかし…我々は助かったようだ。」


 上月丸と下月丸も互いの顔を見合わせたが、今は頭首である津守麦太の一大事である。妖刀を鞘へ納めると麦太の元へと走った。元より色の白い才吉であったが、其の肌は更に青白く、呼吸は酷く弱々しかった。


「もう大丈夫じゃ…少し安静にしておれば、直ぐに目を覚ますだろう。」


 明月は上月丸に麦太を預けると立ち上がる。顎に蓄えた立派な髭を撫でながら、ふう、と深い溜息を零した。


「私は麦太様に代わり、文忌ぶんき様の耳にこの事を入れておこう。」


 ***


『…大丈夫、貴方は私が守ろう。』

「誰…」


 才吉はまた微睡みの中に居た。今が何時なのかも、あの化け物がどうなったのかも分からないまま、ぼんやりと天井の一点を見つめた。其のはっきりとしない意識の中で、幾度も聞いたことのない声を聞いた。しかし、其の声色は懐かしかった。ただ其の懐かしい声は『貴方は私が守ろう』と繰り返すばかりだった。


「麦太様!…麦太様!!」


 上月丸の声で才吉は目が覚めた。身体は酷く重たかったために起こす事は叶わなかったが、代わりに上月丸と下月丸が自ら才吉の視界に入ってくれた。才吉と目が合うと二人はとても安心した様に微笑を浮かべた。


「ご無事で…本当に良かった。」

「もう5日も眠っておられたのですよ。」

「五日…そうだ、あの絵は…あの絵は今どこにある。」


 才吉は無理やり体を起こすと全身がぎしりと軋み骨が悲鳴を上げる様に鈍く痛んだ。両側から二人が身体を支えると、才吉の正面にある床の間の壁に絵は飾られていた。しかし、其の前の床板に腰を掛ける黒く長い髪を持つ青年の姿に目を見開く。


「如何なされた、麦太様。」

「如何もこうもまだ体が痛むのであろう…麦太様、もう少し横に…」

「貴方は…あの時、」


 二人は才吉の様子に戸惑った様に顔を見合わせると才吉の視線を追って床の間の方を見た。しかし、其処には誰の姿もなく、昇り龍の絵が飾られているだけだった。


『彼らには私の姿が見えぬのです。どうか、黙ってお聞きください。私はかつて鳴雪めいせつの捌筆に宿っていた。しかし、鳴雪の死後、此の絵に宿っている。彼女は津守一族にとても感謝していた。心無き貴族によって目と筆を奪われた彼女に再び筆と希望を与えたのは先代の麦太様であった。貴方の手に絵が届いたあの日、彼女がどんなに幸せそうな顔をしたことか。だから、彼女亡き今、私が鳴雪に変わり、津守一族へ恩を返すべく、私は此処におるのです。私は彼女の描いた黒龍の如く強い忠誠心を以って、此の屋敷を守ることを約束しましょう。』


 そう言って青年は深く頭を垂らす。漆黒の長髪がさらりと水の様に畳に広がった。才吉の瞳から零れた滴は静かに一筋、頬から顎を伝い布団へと落ちていった。その姿を傍らで見ていた上月丸が再び慌てた声を上げる。


「やはり!身体が痛むのですな…!幼い麦太様のお身体では無理もない。どうしたものか!」

「まあ、落ち着け、兄者…」


 才吉が目を擦り溢れた涙を拭うと青年の姿はもう其処にはなかった。代わりに月影兄弟の声が賑やかに響いていた。そんな穏やかな時間と青年の想いに才吉の胸はとても温かかった。そして、くすくすと肩を揺らして笑い出した。


「何がおかしいのですか!麦太様。」

「上月丸の慌てぶりを見れば、誰もが笑い出すに決まっている。」

「全くだ。」

「下月丸まで酷いことを言ってくれるな。主を心配するのは当然のことだろうに…」


 才吉の体を支えながら小さく言葉を吐いた上月丸の姿に、先程から笑っている才吉に釣られ下月丸が笑い出す。結局、二人に釣られ上月丸も豪快に笑い声をあげるものだから、静かだった室内は一気に日が差した様に明るくなった。


『麦太様、貴方は一人ではないのですよ。』


 窓枠に小鳥が一羽舞い降りて可愛い声で囀る。

 其の声に紛れて女性の優しい声が聞こえた様な気がして才吉は窓へと目を向けた。

 換気のために開け放たれた窓からふわりと白いものが舞い込む。


「雪…とはな。」

「どうりで今日は冷えると思った…」

「これは花見酒と雪見酒が同時に楽しめるな!」

「これ、兄者…麦太様は病み上りで…」

「良いではないか!ぱあと快気祝いじゃ。麦太様には甘酒を用意しよう」

「全く…兄者ってやつは…」

「下月丸、そう怒らないで…僕も雪見がしたい。」


 舞い込んだ雪が火照った才吉の頬留まる。

 その熱で溶けた水滴が頬を撫でながら落ちていった。


 窓の外で降り注ぐ雪を見ながら、

 才吉は絵の前に二つ酒を置いておこうと考えていた。




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誰かの世界で生きるということ 蜂谷 @hachiyamart

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