第11話 悪役令嬢の私(妹)ですが、兄と可愛い妹の話を聞きたい
「他国との取引ですか??」
「そうだよ。隣の国エイタリーの王子がお煎餅を気に入ったようでね?
是非買いたいと言ってきたのだ。あとお煎餅を作ったものにも話が聞きたいとね」
——まさか…………そんなにお煎餅が広まっているとは…………
エイタリー国と私たちの住んでいるセイランブ国は友好な関係を築いている。
国の特徴としてはエイタリー国は魔法に優れ、セイランブ国は武道に優れている。
異世界といえば魔法。この世界では貴族、それも王族に近い者ほど魔法の力が強い。平民でも稀に適性がある者もいるが多くはない。私はルカの魔法を見て以来、この世界で魔法を拝める機会などなかった。
——行ってみたい…………。でも、王子に会うなど…………。
エイタリー国の王子といえば第三王子が攻略対象だったはず…………。鉢合わせたくはない…………。
「えー何聞かれるんでしょう…………。根掘り葉掘り聞かれなんてしたら…………」
「大丈夫だ!兄様が守ってみせる!!」
やる気満々な兄を流し、ふとマリーが魔法の本を読んでいることを思い出す。
この年の子供だったら魔法に憧れていてもおかしくはない。
魔法の国に行くのならマリーも連れて行ってあげたい。
「マリーは!?マリーももちろん連れて行っていいですわよね!?
「もちろん!マリーも人数に入っているよ」
「ですってマリー!」
私はマリーに向かい明るく呼びかけたが、マリーはボーっと兄の方を見ていた。
「…………」
「マリー?」
「え?あ?どこに行くんですか?」
「お隣のエイタリー国よ!!魔法の国の!!」
「えーー私まで連れて行っていただけるんですか??
魔法の国なんて楽しみです!!早速準備してきます!!
それと一回村に帰って母に伝えてきます!!」
「お母様にくれぐれもよろしくお伝えくださいね!」
「はい!行ってきます!!失礼いたします!!」
マリーはそう言うと、部屋から大急ぎで出て行った。
マリーが出て行った方向から物が落ちる音とマリーの謝罪の言葉が聞こえて来た。
——マリーあんなに慌てて何かあったのかしら…………?
ああ、きっと魔法が見れるので舞い上がっているのね…………可愛い。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「わーーーー!! 魔法です!! 魔法ですよリリ様!!」
マリーがキラキラした瞳で私に訴えかけてくる。
私たちはエイタリー国の王宮に足を運んでいた。
「すごいわね!!やはり、王宮ということもあって、あらゆるところで魔法が使われているのね!」
——風の魔法で布やほうきを操作し掃除をしているのか…………。
私たちは見慣れない魔法に少し興奮していた。
「リリ、マリー、静かにね?」
兄から注意され静かにすると、案内人が口を開いた。
「こちらです」
私たちは煌びやかな部屋に入ると、王子とみられる青年の前に行き膝をついた。
一人一人名前を名乗ると頭を下げる。
「そなたが煎餅を作ったものたちか?顔をあげよ」
顔を上げると少しきつめの整った顔立ちをした青年と目があう。
見たことのない顔立ち。ゲームの攻略者でないことがわかった。
「私はこの国の第二王子、ベルナルド・ファルネーゼだ。
単刀直入に聞こう。
そなたら、
「「なっ」」
「2人は心当たりがあるようだな。
マリーとやら、少し下がっておれ」
マリーが下がると私は居ても立っても居られず言葉を発した。
「どうして陛下がその名前を…………?」
「行ってきたからな日本へ。偶然戻ってこれたがな…………。
そなた…………梨々香か」
「っ!!前世では…………そういう名前でした。なぜ私の名を?」
「魔法の研究をしていたら何かの拍子に発動した魔法に巻き込まれてしまったのだ。気がついたらあちらの世界で偶然麻里という女子に会ってしばらく世話になった。その際に麻里から姉が作ったという煎餅をもらったのだが、こっちに戻ってきて麻里の家で食べたものと同じ煎餅を食べて、もしやと思ってな」
あちらの世界…………おそらく日本だろう。
あれから麻里ちゃんはどうしているだろうか…………。
「麻里ちゃんは元気でしたか?」
「ああ、元気だった。麻里は私と同じ年で23歳と言っていた。今は戻って来て一年は立っているから25歳近いか…………。信じられぬがこの世界があちらのゲーム?という世界だということも知っている…………。麻里がよくしていたゲームに弟が出ていた時は驚いた」
弟…………第三王子か。
麻里ちゃん大きくなって…………。
成人式見たかったな…………。
「麻里がお姉ちゃんとお兄ちゃんがこちらの世界で生きているかもしれないと言っていたぞ」
「「麻里〔ちゃん〕が…………」」
「なんでも、二人がゲーム?の悪役令嬢と攻略対象者になっている夢を見るのだそうだ」
「麻里ちゃん…………会いたいな…………」
「私は時空間魔法を確立してまた必ず、麻里に会いに行く!
もし、数人の移動が可能なら麻里とお前たちを合わせてやりたいと思っている。
それが麻里の望みなのだからな…………」
「お前っまさか麻里に惚れて————」
「エリック兄様ベルナルド様に向かって無礼ですわよ」
妹のこととなるとすぐに血が上る兄を止める。
——たとえベルナルド様がうちの可愛い麻里ちゃんを好いていたとしても、麻里ちゃんは私がちゃんとゲームにどっぷり浸からせているのだから大丈夫!!
「構わん。そなたらが知っている麻里はどんな女子だったのだ?」
「それは!! もう————
ベルナルド様が麻里ちゃんの話をふるものだから、話に花を咲かせ気がついたら帰る時間となっていた。
——マリーを待たせてしまっていたわ。
マリーが部屋に入ってくると、皆でベルナルド様に挨拶をする。
「また、何か開発したら取引してくれ。金は惜しまん」
「いい鴨ができましたわ…………」
私はニヤリとすると、これから何を売りつけようか考えていた。
「またこの国に来たら私を頼るといい」
「ええ、また来ますわ」
「そなたもだぞ。マリー」
「!」
ベルナルド様がそういいウインクをすると、マリーは驚いたように口が開き、顔を真っ赤にしていた。
私はマリーの腰に手を回すとベルナルド様に向かって言った。
「ベルナルド様、うちの使用人がいくら可愛いからって渡しませんわよ?」
「大丈夫だ!私は麻里を好いているからな。それに麻里も私を好いてくれていると言っていた。」
・・・・・。
「「なんだとおおおおーーーーーー!!!!」」
兄と私の声が重なる。
———前世での私たちの努力が…………。私の可愛い麻里ちゃんが…………。
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