急募、LV1のまま世界を救う方法【LVあげ縛り】
ハイロック
第1話「縛られしもの達」
「また、戦闘不能なの?もう、だらしないね」
「バカヤロー、このステータスで何とかなるわけないだろ」
名前:アルフォート
年齢:22
身長:170前後
LV 1
HP 35
MP 30
攻撃力 25(装備後)
守備力 30(装備後)
素早さ 55
魅力 5
職業:花火技師
スキル:スモーク、ダッシュ、爆音
装備:鉄の剣
花火師の作業服
このデータは俺こと、戦士「アルフォート」のステータスだ。
スキルがなにかは後で説明するが、俺はこのステータスで「不気味な森」にひそんでいたモンスター「ドリルタイガー」に挑み、すでに2回死んでしまった。
そう死んでしまったのである。死んでは蘇りドリルタイガーに挑む。今俺はそれを繰り返している。
ドリルタイガーが強いというよりは俺が弱いのだが、
最初に戦った時は出会った瞬間に、ドリルタイガーのドリル攻撃を食らい一撃でし新んだ。そして、この女神の間に引き戻された。
今回は初撃は何とかかわし、多少かすった程度で済ませたものの、ドリルタイガーの予想外の地中からの攻撃に気づかず、あえなく命を落とした。
結局またこの白い空間に戻って来てしまった。
「女神さんよ、このステータスで倒すのは無理なんじゃないか? やっぱ順当にレベル上げさせてくれよ」
俺は目の前にいる、俺を世界を救う戦士に任命した張本人である『封印の女神ブルボン』に対して不平をぶつけた。
ブルボンは女神といっても、そんな美しい女性とかではなく、ぱっと見は身長130㎝程度のちんちくりんのガキである。
ロリコン属性のない俺にとっては、ただただムカつくだけの存在であるのだが、死んでもよみがえることができるのは、この女神のおかげであるのでおとなしく従っている次第だ。
「何度も言わせないでほしいんだなあ。魔王の力を封じる際に、その代償として僕自身の能力も大きく失われることになってしまったんだ。それゆえに僕が選ぶ戦士たちの能力は、一切上がることはなくなってしまったと説明したじゃないか。魔王の呪いといってもいいね」
少年のような口調のブルボンは、俺に対してめんどくさそうに説明をした。
本人いわく、能力を失う前は絶世の美女で身長も高かったのだが、能力が失われるとともにその美貌はなくなり、口調も乱雑になってしまったのだという。
また同時に自分が選ぶ戦士のレベルが、一切上がらないという呪いにかかってしまったというのである。それが、魔王を封じる際の女神の代償ということだった。
「じゃあ、早く俺を選んだことを取り消して、普通の冒険者に戻してくれ。能力が上がらない冒険者なんか、ただ辛いだけじゃないか。」
そもそも俺は冒険者ではなく一介の花火職人だったのだ。なんで、世界の平和を守らなきゃいけないんだ。
「それも言った通り、選ばれたのは全くのランダムだからね。残る4人の選ばれし戦士たちもそうさ。そして君たちはそれを拒否することはできない。」
そう、俺にはあと4人同じ境遇のかわいそうな仲間がいる。彼らも、またレベルが上がらない縛りを課せられてしまった戦士である。
しかし女神の恩恵を得られたものでなければ、世界を滅ぼす魔王の復活を止められないのだという。それゆえにレベル1のままで、魔王復活を止めるための旅を続けなけらばいけないのだという理不尽な説明を、口の悪い女神はしていた。
しかもたった1年、つまり365日でそれを成し遂げなければいけない。
このくそ女神がいうにはあと1年で魔王は復活して、そして復活した瞬間に世界を滅ぼす能力を持つのだと言っていた。
時間制限+レベル上げしばりという鬼畜条件で、つい二日前に俺の冒険はスタートしたばかりである。
ただし、アドバンテージもある。
俺たちは何度でも死ぬことができるのだ。
正確には、死ぬと一日が消化されて次の日の朝から再び冒険が始まるため、死ねるのは最大でも365回だ、何度でもというではない。
そしてすでに、一日をかけてドリルタイガーのもとにたどり着いたあと、2回死んでしまっているので、残り362日しか俺と世界には残されてないのである。
「さて、気を取り直して、ドリルタイガー退治に行ってみよう!」
のんきそうに、このくそ女神ブルボンが言うと、周囲が一面真っ白で、何もない空間だった女神の間から、ドリルタイガーが住まう「不気味な森」の入り口に変わった。
三度目の光景だ、もう慣れた……。
こうなるともう、俺が死ぬまでブルボンとは会話ができない。仕方ない懲りずにドリルタイガーを倒しに行くか。
少なくともあいつを倒す推奨レベルは最低で5だと思うのだが……。
俺は深く溜息をつきながら、一人不気味の森に足を踏み入れるのだった。
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