Cp.3 Outro.
神住市郊外、年季の入った武家屋敷の邸内の縁側に、白桜色の振袖を纏った少女が腰かけ、明鏡止水の如く静かに瞑目していた。まるで瞼の裏の暗闇の奥に見える何かを探していたように意識を集中させていた彼女は、やがて悟りを得たようにそっと瞼を開いた。
そこに、袴姿の青年が邸内から歩み寄り、縁側まで来ると、少女に声をかけた。
「首尾はどうだ、咲弥」
「マリィ姉様には話をつけることができました。リラとケイネ様はまだ捕捉できていません。それと、イェル姉様の身柄はマリィ姉様が預かっているそうです」
咲弥と呼ばれた少女の返答に、青年はわずかに厳しげに眉根を寄せる。
「そうか……これで、話をつけられるのは何色だ?」
「青、赤、緑、黄。そして私達白と、囚われた黒。事実上は、私達を含めて五色です。ですがイェル姉様の身上が危ういことを考えると、時間はあまり待たない方が良いかと」
「そうだな。《月壊》の進行速度を考えるに、事は早いに越したことはないか」
頷き、袴姿の青年、白の命士・斯道源十郎は、その彩姫・咲弥に事態の進行を告げた。
「
「畏まりました、源十郎様」
咲弥は緊張した面持ちで頷きを返し、招集をかけるべく、早速再びの瞑目に入った。
五月の青葉を揺らす静かな風が邸内に流れる中、一つの真実へと至った彩姫と命士の宿業を巡る動向が、静かに、しかし大きく動き出そうとしていた。
真実は、時にあまりに、身を切るほどに残酷で。
それでも、あなたが知ることを望むというのなら。
あなたの心を信じるならば、その覚悟に応えて知らせよう。
あなたを傷付ける真実を、あなたが力に変えることを、信じるならば。
Pieces of IRIS in Your Dream Chapter.3 Fin.
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