あの人に死を

月見うどん

チュートリアル

第1話 よくわからない

「な!」

 何が起きたのかわからない、昼寝から目覚めたと思いきや自身の寝姿が目の前に。

 体から抜け出ている、幽体離脱っていうやつ?

 もしや死んだ? と思ったら、戻れた……。


「夢?」

 首を傾げつつもまぁ夢なんだろうと割り切り、とりあえずトイレへGO



 手を洗い、冷蔵庫のリンゴジュースを一杯。

「ビタミン切れると肌がヤバイからな」

 独り言を漏らしながら飲み干し、同居人を探す。


 玄関に脱ぎっぱなしのスリッパが一足分と、脇に置いてあったゴルフバッグがないので、父はゴルフに行ったらしい。

 週末になると友人やら彼女が車で迎えにやってくる、友達の限りなく少ない俺と大違いだなと感心するわ。

 七十歳を越えても彼女を作ったりと遊びが上手だ、そんな余裕を持てる父が羨ましい、俺には無理だったからね。

 もう数年前になるが、父が母と熟年離婚した翌年、俺も離婚したのだ。「親子揃って何やってるの?」と近所のおばちゃんに揶揄われたものだ。



 夕方になり父が帰宅した。

 二階の自室に居た俺は階段を降り「おかえり」と声を掛ける。

 しかし、父は独り鼻歌を歌いながら通り過ぎていく。

「おい! おかえり父さん!」

 やはり聞こえていない、というより此方を認識すらしていない。

「ふざけてんのか、クソ親父?」

 後ろから肩を掴もう手を伸ばすとすり抜けた!

「……へ? 何で? どういうこと?」

 先程まで家の中をウロウロしたり、テレビを見たり、冷蔵庫漁って飯作ったりしてたのになんで? 疑問が後から後から押し寄せてくる。


 額に手をやり頭痛を堪えるかのように考える、考えてわかる訳が無い!


 父親に何かあったのかもしれない、玄関から急ぎ外に出る、夕方なので近所の子供たちが走り回って遊んでいた。

「おーい、お前ら」

 ちょうど良いので、軽く声を掛け頭でも撫でてやろうとしたが無視され、またもすり抜ける。


「何がどうなってんだよ……もう」

 頭を抱えて蹲り途方に暮れる、時刻も相まって正に黄昏。



「…あらあら」

 声が聴こえたので顔を上げると、とんでもないおっぱいの女性が空中に佇んでいた。

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