24話 先へ
ゆうくんの下にコミカライズの話が来た翌日、私はとあるスタジオに来ていた。
今日はアニメのオーディションだ。
前回までのオーディションでいったい何連敗していることだろう…。
ゆうくんは漫画連載の話を勝ち取ったと言うのに、私もこんなとこで足踏みしてちゃいけない!
自分の手で頬を叩いて、気合いを入れ直し、マイクの前に立った。
今日受けるのは『空食う異世界人』という、ネット小説が原作のサブヒロインだ。
メインヒロインは既に人気声優陣が起用されることが決まっている。
サブヒロインすら経験したことがない私はここでしっかりと役を勝ち取って、今後の役に繋げないといけない。
いつかゆうくんの作品のヒロインを演じる時に下手くそじゃ嫌だからね。
私の前の順番の声優さんがスタジオから出てきた。
いよいよ私の番だ。
重い扉をガチャリと開けて、スタジオの中に入る。
「村山事務所所属、愛流美佳です。よろしくお願いします!」
マイクの前に立ち、スタッフさんたちに挨拶をする。いつものオーディションの流れだ。
「はい。では、さっそく撮っていきますが準備はよろしいですか?」
「大丈夫です」
次こそは役を掴むんだという気持ちで、一生懸命練習してきた。準備はばっちりだ。
「3秒前、2、1、どうぞ!」
「ただいま!」
オーディションが終わって家に帰るが、ゆうくんの返事はない。
まだお仕事なのだろう。
朝のうちに干しておいた洗濯物を取り込んで、料理の支度にとりかかる。
最近、仕事と小説に大忙しなゆうくんのために今日の晩御飯はスタミナの付く生姜焼きにする。
「ふふっ、ゆうくん喜んでくれるといいなぁ」
しっかりと栄養を取って、毎日元気に頑張ってほしい。
「ただいまー!」
ご飯の準備が出来た頃にゆうくんが帰ってきた。
「おかえり!」
私は玄関まで駆け寄ってゆうくんのことを抱きしめる。
えへへっ、やっぱりこうしてると落ち着く。
「先にお風呂でしょ?」
「そうだな」
「じゃあ、ごゆっくり」
ゆうくんがお風呂に行ったので、私は出来ているお食事をテーブルに並べて明日の台本のチェックをする。
しばらく台本を読んでいたら、ゆうくんがお風呂から上がってきた。
「よしっ!じゃあ、ご飯にしよっか」
私は読んでいた台本をぱたんっと閉じ、食卓に向かう。
「おぉ!今日は生姜焼きかぁ」
私たちは向かい合って、食卓につく。
「毎日お疲れだからね、元気になってもらおうと思ってスタミナ食にしました!」
「いつもありがとな、俺の体調のこと考えてくれて」
「いえいえ、お嫁さんですから。当然のことですよ!」
大好きな旦那さんのために尽くしてあげたい、私はまだまだ恋する女性です。
「冷めても勿体無いし、食べるとするか」
「そうだね、じゃあ、いただきます」
「いただきます」
「うん、美味しい!」
「えへへっ、ありがと」
ゆうくんは本当に美味しそうに箸を進めている。
そんな姿を見ているだけで幸せだ。
「そういえば。アクトの件はどうなったの?」
食事の合間に、話題を振ってみる。
「あぁ、今日仕事の休憩時間に電話してみたよ。今週の日曜日に編集部に行くことになった」
「そうなんだ!連載楽しみだなぁ」
私はゆうくんの作品が好きだし、早く読みたいな。
「そうだな。俺も早く始めたいし、やるからには今までよりもっと多くに人に読んでもらいたい」
ゆうくんの目が燃えている。こんな本気のゆうくんいつ振りに見ただろう。
絶対に成功させて欲しい。
そのために出来ることは何でもしてあげたいな。
「ねぇ、ゆうくん、目瞑って?」
「ん?」
そういうとゆうくんは素直に目を瞑ってくれる。
そして私は旦那さんの唇にそっと自分の唇を重ねる。
「ちょっ、急にどうしたんだよ?」
「えへっ、うまくいくおまじないだよ」
うまくいくといいね。
ゆうくんの顔は赤いままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます