5話 リスタート 勇介の場合

 サイスター文庫新人賞の結果発表から一夜明けた土曜日、朝食と洗濯を終え、俺は家のリビングでノートパソコンに向き合っていた。

 ちなみに美佳は、朝食を終えた後、すぐにレッスンに行ったので、家にいるのは俺だけだ。美佳は、週7日毎日演技のレッスンに行っており、土日の家事は俺が行っている。


「んー、まいった……」

 決まらない。新作のプロットが決まらない。

 俺が今、行っているのは、来年度のサイスター文庫新人賞に向けた、新作のプロット作りだ。

 しかし、2時間近く画面とにらめっこしているが、タイトルはおろか、ストーリーさえ一向に思いつかない。

 というのも、今まで高校生を主人公にしたラブコメを書いてきたが、正直ネタ切れだ。かといって、ジャンルを変えるというのも難しい。前に一度、バトルものを書こうとしたことがあるが、技の細かな設定や、バトル描写が難しくて断念した。


 頭を抱えていると、ふとスマホの着信音が鳴った。いったんパソコンから目を離し、横においてあるスマホを手に取った。

 どうやらメールのようだ。差出人は、渡瀬わたせさんだ。内容は_____

『月曜日の会議に使う資料はしっかりできてるか?』というものだった。

 俺はそれに対して、

『ばっちり、できています』と返信した。


「あ、ネット小説…!」

 そういえば、昨日、渡瀬さんに小説をネットで掲載すればと勧められていたんだった。


『ネット小説サイト おすすめ』と検索をかける。

 すると『カクヨム』というサイトが出てきた。早速ユーザー登録を済ませて、トップページへと移る。


「へぇ、ネット小説もジャンルはいろいろあるんだな」

 ネット小説といえば俺tueee系の異世界バトルものばかりかと思っていたが、ホラーやミステリー、歴史小説なんかもある。

「よかった。ラブコメもしっかりある」

 それからラブコメのページに飛び、様々な小説を読んだ。


「そっかぁ、ラブコメでもジャンルは色々あるんだな」

 俺は今まで高校生の物語ばかり書いていたが、中学生だったり大学生だったり、異世界人だったりとそれは多岐に渡っていた。バトルラブコメや、ミステリーラブコメなど幅広い。

 小説にはそれぞれ、読者からのレビューも書かれており、賛否両論あるが、どれも作者にとってためになりそうなものばかりだった。

 これなら、プロ作家になるためにいい参考になるかもしれない。


「よっしゃ、やるか!」

 気合を入れ直し、パソコンの画面へと向き直る。


『カクヨム掲載用小説  ジャンル:ラブコメ、大学生』

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