ラノベ作家になりたい俺とヒロインになりたい嫁

アレクさん

プロローグ

1話 ラノベ作家になりたい俺

 8月26日、世の小中高生の夏休みが終わろうかという頃、俺、愛流勇介あいるゆうすけは緊張の面持ちでノートパソコンの画面を眺めていた。

「愛流くん、どうだった?」

「あっ、渡瀬わたせさん、お疲れ様です。……今年もダメでした」

「そっかぁ…、こればっかりは仕方ないからね。来年に向けて頑張ろう」

 俺が何を見ていたかというと『サイスター文庫』というライトノベルレーベルの新人賞一次選考通過作品掲載ページだ。

 俺はこの新人賞に高校一年生の時から毎年投稿しており、今年で十年目になる。

 現時刻は午後12時10分で、職場の休憩時間だ。社員食堂で結果を見ていたのだが、今年も見事落選。一次選考さえ通らなかった。

「どうしたら、面白い文章が書けるようになるんでしょうか」

「そうだねぇ、客観的な意見が重要かな。…そうだっ!ネット小説を投稿してみたらどうだろう。プロにならなくても人に読んでもらえて、コメントなんかももらえるし、執筆の参考になると思うよ」

 俺と話しているこの人は、渡瀬一馬わたせかずまさん。職場の先輩であり、尊敬する人だ。というのも彼は、『天堂てんどうライト』というペンネームで、サイスター文庫で活躍しているライトノベル作家なのだ。

 俺はこうしてよく、仕事だけでなく、ライトノベル作家になるべく相談に乗ってもらっている。

「ネット小説ですか…。たしかに様々な人に作品を見てもらえるチャンスもあるし、指摘がもらえたら、俺の文章にも深見が出るかもしれませんね」

「うん。僕もデビュー前はちょくちょくネットに小説をアップして、いろんな意見を貰ったよ。どの意見も今の執筆活動の役に立ってる」

 ここ数年でネット小説の需要は高まっており、ネットから文庫化されるケースも多い。

「そうですね。近いうちに書いてみます」

「あぁ、そうしな。そういえば、今日はあの子も大切な発表があるんじゃないの?」

「はい。あいつは、夕方ごろに発表だそうですから、家に帰ってから報告合いですね」

「そうか。頑張ってね。僕は二人の夢、応援してるから」

「ありがとうございます」

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