裏路地のマリオネット
カゲトモ
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「っはぁ」
劇場のこの空気が好きだ。ホール独特の、この匂いが。つい、深呼吸してしまう。
半券を切ったチケットを見て座席を探す。普通のホールのように正面にステージがあるとは限らないのが、この劇団のいいところだ。
中央に丸く作られたステージを囲うように壁三面が座席になっている。どの座席からもステージが良く見えるように設計されているようだ。
「Cの十二」
お店の常連である、スタジオトライトットの役者、マリオ君から購入したチケットはC‐12。俺の席は上手の前から二列目の端から二番目。なかなかにステージに近く、良い席だ。
座席は会議室なんかでよく見るようなものだったが、気にならない。座り心地が悪くて集中できないような劇団じゃないし、第一俺はそう言うのに鈍感だ。
開演十分前の座席は上々の入り。皆、これからの公演を楽しみに待っているようだ。もちろん、俺もその一人。
微かにスモークが焚かれているようだ。ステージの向こう側からふわりふわり、と白いものが見えた。
今日の舞台は“裏路地のマリオネット”二人の男と一人の女が、不平な世の中に自由を訴える話だ。副題は“三人ぼっちの独立戦争”
マリオ君が演じるのはそのうちの一人の男。白黒のパンフレットを見ている感じでは、かなり強面のハードロッカー、みたいな感じで、今まではイケメン役が多かったマリオ君の新しい一面が期待できそうだ。
開演まで残り五分のアナウンス。円形のステージの上には、ステージと同じ色に塗りつぶされたドラム缶が二つ置かれている。スタジオトライトットは舞台装置はシンプルかつ多様。はてさて、これがどう化けるのか。今から楽しみだ。
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