第5話赤い空
「・・・とりあえず座ろっか」
と、軽く頬を赤らめ滝本が言う、妖精は好き放題言ってどこかへ飛び去ってしまった。
妖精がいなくなってめっきり静かになった誰もいない公園で僕らは話し続ける
「そうだね」
これから僕らの日常は崩れていくのかもしれない、しかし僕らは今生きている、ここに、確かに生きている。僕らの平和は残り24時間、それまでに二人でくだらない話でもしていよう。
「・・・私が告白したの覚えて・・・る?高校一年生のころ、すごいカッコいい人がいるなぁと思って、でもおとなしそうだったから私と同じで会話が苦手かなぁ・・・って勝手に想像したりした。」
昔の話だ、今から、少し昔の。
「覚えてるさ、君だけが僕の中で光っていたよ」
うわ恥かしい事さらっと言うなぁ、と冷静に今話したことを軽く恥じた最近はテレビの影響か くさい言葉を平気で発してしまう。そんな僕が照れたことに気付くと
「・・・カッコいいと思うよ、そのセリフ」
と少し笑ってくれた僕は未だ残る恥かしさを抑えながら、口を手で覆い隠しはにかむ
「「やっぱり君以外あり得ない」って言ってくれた時すごく嬉しかったなぁ・・・」
滝本が少し僕をいじめる、確かにそのセリフは恥ずかしいがしかし君も真っ赤になっていただろう?
僕も滝本を軽くいじめ返してやろうと思ったとき滝本が言う。
「・・・ねえ、このまま遠いどこかへ二人だけ逃げちゃおうか」
お決まりのセリフだが少し目頭を刺激する。
妖精が言うにはバイトもしてない学生のたかが知れてる足じゃ死ぬ時間は対してそう変わらないらしい。
それを知ったうえで滝本は話している。
「僕は逃げてもいいが滝本はそうもいかないだろ、大好きなお父さん、お母さん、友達、兄弟、いっぱい守るものがある、僕にとっては君だけだが君にとっては僕だけじゃないんだ」
「君一人の体じゃない」
と僕はたいへん大真面目に言った がしかし滝本は笑い、少し涙を流しこういった
「・・・まるで私たちに赤ちゃんができたようなセリフ」
気付けば僕からも涙が頬を伝っていた、僕は将来この人と結婚する。しかしアーリアに行かなければ僕たちはここで終わってしまう、死ぬまで一緒だがここで終わってしまっていいのか?天国というものがあってそこでまた再会できるのか?そんな人生であまり考えないようにしてきたことまで浮かんできた、妄想もそこまで来るとなぜかアーリアに行くという強迫観念までもが生まれてくる。
「一緒に来てくれるか?」という言葉が喉元まで出てくる、そんな自分勝手なセリフをこの子にぶつける気はない。だが、しかし、本当に出そうになった。そんな僕を戒めるように僕はこのセリフを言った
「二人だけで結婚式を挙げようか、今ここで」
滝本が一瞬何をするのか解らなかった顔をする、しかし瞳は潤み頬を赤らめ
「はい。」
と言った、僕たちはだれ一人来場者のいない式場で簡易的で稚拙であやふやな結婚式を挙げた。
時間はもう夜になろうとしている
「・・・それじゃあ、また明日学校で」
「おう」
と言い合い僕たちは別れた、こんなことをやっている暇はないとは思うがこれが日本に居れる終わりの日かもしれないと考えるとせめて最後まで周りには心配はかけたくないという僕らの気持ちはわかってもらえるだろうか
結局僕らはそれぞれの帰路に着くことになった
ただし、僕から家族に宛てる言葉など何一つない育児放棄・・・とはいかないまでも自由に育てられた僕の家庭環境は乾いていた、両親が死んで清々するとまではいかないがあんまり感情がわかない。明日エスキテルが来るという確信が持てないから特に何も思わないのだろうと勝手に自己完結する、滝本と別れたのは、親御さんがムスメloveだからである、僕のためではない。妖精に出会ったのは夕方の4時だからまだまだ時間はあるな、明日に備えて少し眠ろう・・・と僕は部屋の電気を消した。
て・・・
夢の中で誰かが叫んでいる
・・・きて
白い靄がかかっていてはっきりと聞こえない、しかし次の言葉で誰の声なのかは分かった。
「起きてプリ!!!!」
うわぁ!かかっていた布団を投げ飛ばす。ふとんがふっと・・・
寝ぼけた頭を速攻でリセットつつ整理する。この声、誰もいない・・・テレパシー、妖精の声だ・・・!!
どうした、まさか・・・「ああ、思ってたより半日も早いプリ」
妖精を見つけ出そうとカーテンを開けて外を見てみると目に入る光景があった
「夜空が・・・赤い・・・」
「月の方角を見るプリ・・・来る!!」
山が吠えたかのような音がした、草木は嵐の時のようにざわついて、風は肌を切り裂くように打ち付ける
その中で赤い月だけが不気味に淡く強く光っていた
僕たちが愛する国日本、そこには幾つもの守るべき人たち守る者たちがいる。それら兵どもが眠る深夜2時27分丑の刻東京都渋谷のはるか上空。
そこに、エスキテルは現界した_________
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます