黒い彼の日々
月見うどん
オレの名はG
オレの名はG、群れに所属する若きエースだ。
オレたちの住処はここだ。さあ、ご覧あれ。
暗くてジメジメとした最高の住処、外敵に襲われることの無いパラダイスだ。
まずは、オレの家族を紹介しよう。
父のGGだ。つい最近まで群れを率いて猟をしていたのだが、足の負傷が原因で隠居した。
上の姉のG美だ。いつまで経っても嫁の貰い手の無い行き遅れだな、誰か貰ってやってくれ。
最後は下の姉のG子だ。父の後を継ぎ群れのボスとなった、隣の家のGAの嫁に行く予定だ。
母は、オレが生まれる前に亡くなったと教えられている。
次にオレの所属する群れを紹介しよう。
群れのボスはGA、隣の家の兄ちゃんだ。そのボスを補佐する役割を担うのが斜向かいの家のGJ、一応オレの彼女だ。
この群れに従うのは、上姉のG美、オレG、GAの弟GC、GD、GJの兄GIだ。
オレたちの仕事は、獲物を狩って猟をすることだ。下手すりゃ命を落とすこともある、とても危険な仕事だ。
群れとは言うが基本的には、個人主義だ。個々人の成果を持ち寄り、分け合って生活している。
しかし、大きな獲物や収穫のある時には、協力し力を合わせることもあるのだ。
今日も今日とて狩りに向かう、食料の備蓄は少ない。
オレは最近見付けた狩場に直行した、高い壁を昇り煌く床を走り抜ける。
ここは外敵の目がある危険な場所だ、一瞬たりとも気が抜けない。大きな筒状の物の陰に入る、今日も獲物は大量だ。
オレはここを狩場にしているが、他の連中を見掛けたことが無い。彼らはどこで狩りをしているのか、今度相談してみよう。
そんなことを考えながら、獲物を懐に忍ばせる。あまり多くは持てないのだ。
「安心した時が一番危険なのだ」父GGがよく口にする言葉だ。思い出し気を引き締める、周囲に常に気を払い警戒する。
「帰り道のルートは変えよう」独り言ち、筒の裏手から素早く走り去り、絶壁を一気に下る。
前方に外敵の姿を捉える、まだこちらには気が付いてないようだ。さっと周囲を見る、オレの体がギリギリ収まるほど狭い道がある、即逃げ込み身を隠す。
怖い、怖い、怖い、怖い、父GGはヤツらに襲われ足を負傷した。GAの弟GBはヤツらに無残にも殺された……。
外敵・ヤツらはオレたちよりも遥かに大きな、それは山のように大きな存在だ。立ち向かったって、勝てる道理がない。
「外敵を見たら一も二もなく、ただ逃げろ」これがオレたちの絶対の掟。
外敵は去ったようだ目の届く範囲には居ない、今の内に掟に従い逃げるしかない。オレは無我夢中で逃げた、住処に辿り着いたときにはもう記憶は曖昧だった。
懐に忍ばせた獲物がほんのりと温かい。
「そんなに震えて、どうしたのG?」
「GJか、外敵を見たんだ。追われてはいない」
「どこで見たの? GAに報告しないと!」
GJはオレを連れてGAのいつもも居る場所に急ぐ。
「GA大変よ! Gがヤツらを見たって」
「本当なのか? G」
「あ、ああ、オレの狩場の近くで見たんだ……オレの狩場はヤツらの領域だ、毎回手薄だから踏み込んでいるのを忘れていたんだ」
「なんて危ない真似をするの! 次から私が監視に付くわ、いいわねG」
「G、ヤツらの領域での狩りはとても危険だ、暫く控えた方がいいだろう」
GAには諭され、GJは付き纏う気だ。
「ほら、これが獲物だ。こんな獲物が大量に放置されているんだ、あそこには」
「これは……大量にだと?」
「GA、早まらないで! とんでもない危険が伴うのよ」
「そうだな、場所を詳細に教えろG。偵察だけでも向かわせてみたい」
「偵察だけよ? それ以上は許さないわ」
こういう時のGJはとても怖い、外敵と大差ない。
いや、全然違うか可愛いもの…な。
オレは家に帰る。獲物は群れに一時預かりとなる、後で分配されるだろう。
道すがら思う、今日もなんとか生きている、明日も無事に生きられたらいいな。
黒い彼の日々 月見うどん @tukimi_udon
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