劣化コピーってマジですか!?

焼き肉

第1話

「うおおおぉぉぉぉおおおおお!死ぬ!死ぬ!神様、女神様、可憐な美少女ヒロイン様、クールに気取ってる勇者様!誰でもいい!誰かだずげて〜!」




 そこは一面緑が広がる大草原。走れど走れど同じ光景が広がっている。



 俺の後ろには、今まさに俺を餌だとばかりに追いかけまわすワニのような生物。


 いやワニではないな。だって二足歩行しているんですもの。俺の全速力と同じ速度で二足歩行で走るワニってどんな悪夢だよ。







 異世界転移。ラノベでよくある展開だ。

 まさかスマホ見ながら歩いていたらマンホールに落ちて変な部屋で変な親父にスキル貰って、変な世界に落とされたら目の前には変な生物がいた。


 簡単にいうとそんなこんなでいまの状況になっている。


 やばい。横腹痛い。


 そろそろ休もうか。


 後ろを覗く。


 キラーンっとギザギザの歯が見える。


(あぁ。アレに食べられるのか。痛そう)


「いやや〜。俺まだチェリーも卒業してない16よ。ピチピチより熟れたほうが美味いってぇ〜」


 死ぬ気で走る。止まったらガブガブされて死んでしまう。


 変な親父にスキル貰って、変な世界に来た時は夢かと思ったがこの目の前の現実は夢じゃない!!


「そうじゃん!俺!スキル貰ったじゃん!」


 そう思う!


 しかし───


 どんなスキルか説明しないで叩き落とされたんだったぁ〜!


「死ぬ!死ぬ!やばい!やばい〜」


 人間死ぬ気になれば幻聴が聴こえるのだろうかスキルを使おうとした瞬間に頭の中で声が響く。


『ようこそ。この世界へ。ここはあなたのいた世界とは違うせか───』


「そんな話いいから早くスキルプリーズ!使い方スピーディーにカムヒア!」


 頭の中に響いた女の人のような声を遮り、俺は全速力で走りながら混乱した頭で催促する。


『───っ!私の出だしが。まあいいです。このまま死なれても勿体無いですし』


(出だしとかいいんでマジでお願いします)

 涙を流しながらひたすら走る。



『コホン。貴方のスキルは劣化コピーです』



「はぁ!?」


 ダメだ。俺もうスキル名から死亡フラグ全立ちですわ。


『そのスキルは相手を選択しさえすれば、相手のどんなスキルでも10分の1で発動できます』



「クソスキルじゃねぇか!」



『酷い!私が考えたのに!もういいです。最後に使い方はアナライズと頭に思い浮かべ、対象を選択してください』


 俺は全速力で走りながら後ろ1mほどを追いかけてくる走る二足歩行のワニにアナライズと念じる。



<アナライズの発動を確認>


<対象のスキルはナシのためコピー出来ませんでした>



「クソスキルじゃねぇか」


 俺は地団駄を踏む。



「あっ」



 そのスキを逃さない二足歩行のワニ。



 俺はカプカプされるのか。



 頭を口に含まれたその瞬間──




 《シュッ》



 なにかが通る音がした。



 生暖かい口の中、真っ暗で何も見えない。ところどころチクチクとギザギザの歯が当たって痛い。



(ん?俺まだ死んでない?)




「よっと」


 俺は頭を抜いてみる。ワニさんの頭だけがそこにいた。


 何事か!そう思って周りを見渡すと──

 ミルクティー色の肩まで伸びたサラサラそうな細い髪。

 全てを見通す様な透き通った淡い茶色の瞳。

 絹のようにきめ細かい白い柔肌。

 絶世の美少女が細剣を片手にこちらを見てニコッと笑って手を差し出してくる。


(ヒロインキタコレ)



「1000ゴールド」


 手をグッパグッパしてジェスチャーしてくる。



「ん?あれメインヒロインじゃないんですか?」


「なに言ってるか分からない。ほら出すもの出して」



 言葉は通じる。


 でもそうじゃないだろ?可憐な美少女に手を差し出して貰えたら大丈夫ですか?とかお怪我はありませんか?とかそんな展開じゃないのかよ!


 指が細くて美味しそうだったのでペロっと舐めてみた

 。美味い!紳士?私は変態ですyo!ヘブシッ!


 拳が頬を突き抜ける感覚と共に地面に吹き飛ぶ。







 DOGEZAする。



 お金?そんなものあるわけないじゃないですか?



 日本の作法は困った時はDOGEZAだよ。



 そんな作法はないがひたすら謝る。どうにか付いていかないと俺はまた死ぬほどの恐怖に合うのは目に見えているからな。


 こんな可愛い美少女の前なら土下座なんて安いもんだ。むしろご褒美だ。


 チラッと上を覗くと美少女の短いスカートからパン───



 《グシャッ》



 頭の上になにかが落とされると共に一瞬草の味がした。

 そして俺の意識が絶たれたのだった。

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