264話
*
「じゃあ、今日はここまでで伊敷君も帰ろう」
「はい」
放課後、18時を過ぎてようやく生徒会の仕事は終わった。
少し周りが薄暗くなり、誠実と生徒会のメンバーは揃って昇降口に向かう。
「それにしても、助かったよ。伊敷君がかなり仕事を終わらせてくれて助かったよ」
「いや、自分は全然」
「会長はいつも通り遅いですけどね」
「玲子ちゃん! それを言わないで!!」
「じゃぁ、私はこれで、皆さん気を付け帰って下さいね」
「あ! 待ってよ! 僕も帰るから~!」
徹と玲子は先にそう言って、学校を後にしていった。
「あの二人仲良いですね」
「あぁ、まぁ両思いだからな」
「え!? そうなんですか!!」
「あぁ、でもお互いに気がついて無いみたいで、まったく進展してないけど」
「マジっすか……」
侑大の言葉に誠実は驚き、再び二人の後ろ姿を目で追いかける。
「そろそろ今期の生徒会も終わるってのに、あの二人はどうするんだか……じゃ、俺も帰るわ、伊敷も気を付けてな、蓬清はどうせ送り迎えあるんだろうけど」
「はい、お疲れ様です」
侑大も帰って行き、残ったのは誠実と栞だけになった。
「じゃあ、俺もこの辺でそろそろ・・・・・・」
「あ、そう言えば私、今日は送迎が無いんです」
「え? なんでですか?」
「義雄さんが学校でトラブルを起こして、メイド長に叱られているので、送迎にこれないそうです」
「あぁ・・・・・・なるほど」
(まぁ、確かに不審者扱いされてたしな・・・・・・)
「なので誠実君、一緒に帰っても良いですか?」
「あぁ、そうですね、こんな夜道に先輩一人は危険ですし、家まで送って・・・・・・」
「せ、誠実君!!」
誠実が栞にそう言いかけた瞬間、昇降口から息を切らした沙耶香が出てきた。
「沙耶香? どうしたんだ? 部活か?」
「う、うん・・・・・・い、今帰るところでさぁ~誠実君達も今帰り? よ、良かったら一緒に帰らない?」
「あぁ、良いけど・・・・・・なんでそんな息切れしてるんだ?」
「な、なんでも無いよ!」
「……前橋さん、狙ってましたね……」
「放課後誠実君を独占なんて許しませんからね、先輩……」
栞と沙耶香は視線を合わせてそんな事を言う。
沙耶香も加わり三人で帰る事になった、誠実達。
普通の男子からしたら、この状況は非常に羨ましい光景なのだろうが、誠実にとっては少し気まずい状況だったりする。
「せ、誠実君、生徒会はどんな感じだったの?」
「え? あぁ、みんないい人で安心したよ、瀕死の状態の俺も受け入れてくれたし」
「待って、なんで瀕死だったの?」
「うふふ、会長も副会長も誠実君の事を気に入っていましたよ、やはり私の判断は正しかったようですね」
「俺はそんな大した事してないと思うんですけど……まぁ、でも嫌われて無いなら良かったです」
「うふふ、これからは毎日放課後は一緒ですね」
栞が一緒を強調して誠実にそう言う。
その言葉に沙耶香はムッとした表情をする。
「せ、誠実君私も最近はこの位の時間に部活終わるんだけど・・・・・・あ、明日も一緒に帰らない?」
「え? あぁ良いけど・・・・・・料理部ってそんなに遅くまで活動してたっけ?」
「う、うん! 最近するようになったの!」
今度は沙耶香の言葉に、栞がムッとした表情を見せる。
二人の無言の圧力に誠実は少し息苦しさを感じていた。
そうして歩くこと数十分、まず先に栞の家に到着した。
「それじゃあ、栞先輩また明日」
「はい、送っていただきありがとうございます」
「いえいえ、それじゃあ・・・・・・」
「あ、誠実君!」
「はい?」
「絶対に人通りの少ない場所を歩いてはいけませんよ? 襲われかねないので」
「いや、自分男なんですが・・・・・・」
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