262話

 その後も誠実は言われた事をこなしていった。

 手伝いと言っても本当に簡単な事だけであり、誠実は内心少しホッとしていた。


「これ、終わりました」


「ありがとう、じゃあ少し休憩してて、会長のところに書類が溜まってきたから」


「うぅ~・・・・・・終わらないよ、玲子ちゃん・・・・・・」


「な、なるほど・・・・・・」


「これ以上会長の元に仕事が溜まると、会長が壊れるから」


「壊れるんだ・・・・・・」


 誠実は玲子にそう言われ、自分の席に戻る。

「誠実君、お茶どうぞ」


「あ、すいません。ありがとうございます」


 栞にお茶を淹れてもらい、誠実はそのお茶を飲みながら、休憩を取っていた。

 ちなみに仕事が溜まっている徹は玲子に睨まれながら、急いで作業をしていた。


「なぁ、伊敷」


「はい? なんですか?」


 誠実がお茶を飲んでいると、目の前の席に座る侑大が話し掛けてきた。


「お前、なんで同じ相手に告白しまくったんだ?」


「え?」


「お前の噂だけは知ってたからな、本人から話しを聞いてみたいと思ってたんだよ」


「そ、それは・・・・・・その・・・・・・」


 誠実は侑大からの質問に戸惑ってしまった。 理由は隣の栞も興味津々に聞き耳を立てているからだ。


「そんなに好きだったのか? その女の事」


「いやぁ~だったんですけど、結局ダメで・・・・・・」


「根性はあると思うぞ、まぁ悪く言えばしつこいけど」


「あ、あんまり言わないで下さい、胸に来るんで・・・・・・」


「あぁ、すまん。まぁ、それ以外にもお前の噂は色々流れてきてるぞ」


「ち、ちなみにどんなのですか?」


「あぁ・・・・・・なんか女に振られたショックで男に目覚めたとか・・・・・・」


「うっ・・・・・・あのゴシック記事の影響がまだ・・・・・・」


「・・・・・・俺はノーマルだからな」


「いや、俺は普通に女子が好きです!!」


「あと、あんまり俺に近づくなよ」


「だから! 俺はノーマルです!!」


 まだ変な噂が学校中に流れている事を知り、誠実はため息を吐く。

 

「はぁ・・・・・・早く部長誤解を解いてくれないかな・・・・・・」


「あ、その新聞部がさっき新しい新聞を持ってきてたな」


「え!? マジですか?」


「見るか?」


「ホラよ、正直お前は見ない方が良いと思うが・・・・・・」


 誠実は侑大から新聞を受け取り、記事の内容を確認する。

 誠実は記事の題名を見て、肩をワナワナと震わせた。

 その記事の題名が『やっぱり三人は深い仲だった!? 学校内で話題の一年三バカの乱れた学園生活!』と書かれていた。


「ぶ、部長めぇ~恩を仇で返しやがってぇ~・・・・・・」


「まぁ、そういうわけだから、俺に近づくなよ」


「だから誤解ですって!! 会長! 今すぐこのふざけた部活を廃部にしましょう!」


「新聞部を救った君がそれを言うか?」


 誠実が新聞を見て、そう言うと隣の栞が誠実に話し掛けてきた。


「大丈夫ですよ、人の噂さも七十五日と言います」


「そうは言っても・・・・・・」


「大丈夫ですよ、私は誠実君がそんな人じゃ無いって知ってますから」


「栞先輩・・・・・・」


 栞が誠実をなだめていると、他の生徒会役員の三人はコソコソと何かを話していた。


「なぁ、伊敷って栞ちゃん振ってるんだろ? ここからどうやって栞ちゃんを好きになってもらあうんだ?」


「結構良い感じに見えますけどね・・・・・・」


「私が聞いた話しだと、伊敷君を好いてる人は結構多いみたいですよ」


「なるほど・・・・・・それじゃあライバルが多いのか!」


「そうなりますね」


「でも、蓬清だって二年じゃ一番可愛いって言われてますよ? 普通に頑張れば行けるんじゃないっすか?」


「うーむ・・・・・・しかし、一回振られていると言うことは伊敷君の中にはまだあの子への思いがあるからだろうな・・・・・・」


「つまり、それを無くせばなんとかなると?」


「可能性は十分あり得る」


「一体どうするんすか?」


「それはだな・・・・・・」


 三人がそんな話しをしていると、突然生徒会室のドアが開いた。

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