妹
214話
*
あの日の事を俺は今でも良く覚えている。
親父から聞かされた……あの話しを……。
当時俺はまだ中学生で、それが本当の事なのかどうかも良く分からなかった。
『誠実……お前ももう中学生だ……だから話しておこう』
いつもはふざけた感じの親父が、その日は真面目な顔で俺に話しをしてきた。
だからこの話しは良く覚えている。
内容も内容だったこともあり、俺は衝撃を受けた。
『……だから誠実……この事は……には……内緒だ』
『……うん』
俺は真剣表情で親父の言葉にうなずく。
*
「ん……むあ……朝か……」
花火大会の翌日、誠実の目覚めはあまり良いものでは無かった。
色々な事がありすぎて結局は良く眠る事が出来ず、誠実は頭を抱える。
「うーん……なんだかなぁ……」
朝から暑い上に、寝汗で来ていたTシャツはビショビショ。
朝から目覚めは最悪だ。
「誠実ぃ-! 早く起きなさいよぉ!!」
「分かってるよぉ-!」
一階から聞こえる母親の声に、誠実は部屋から大声を出して答える。
まずはシャワーを浴びて、朝食を済ませて……。
なんて事を考えながら、誠実は風呂場に向かう。
シャワーを浴び、誠実は汗を流してリビングに向かう。
「おはー」
「あんたねぇ、もうすぐで夏休みも終わりなのよ、生活リズム戻しなさい」
「へーい」
誠実は欠伸をしながら母親の忠告に答え、誠実は用意された朝食を食べる。
「あれ? 美奈穂は?」
「朝早くからお仕事に行ったわよ、アンタと違ってあの子は働き者だから」
「どう言う意味だよ! 俺だってバイト始めただろうが!」
「アンタとあの子じゃ稼ぐ額が違うのよ」
「結局金かよ!」
誠実は母親にツッコみつつ食事を続ける。
「なぁ……それよりも……今日だよな? 美奈穂の誕生日……」
「……そうね」
「……来年には話すんだろ? あのこと……」
「……えぇ……お父さんも悩んでたわ……あの子の誕生日が来る度に辛くなるって……」
「……だよな」
誠実は洗い物をする母親の背中を見ながら、何かを考えるように顎に手を当てる。
「行くのか? 今日」
「えぇ……幸い美奈穂は仕事だから、変に怪しまれなくて済むわ……」
「そうか……まぁ、安心しろよ、いざとなったら俺がなんとかするから」
「アンタみたいな不細工に何が出来るのよ」
「息子に向かってなんてこと言うんだよ!! それに不細工関係ねーだろ!!」
「でも……そうね……いざとなったらアンタに頑張って貰わなくちゃね……」
「あぁ……なんたって俺は……兄貴だからな……」
誠実はそう言ってアイスコーヒーに口を付ける。
「しょっぱ!! 何だこれ!?」
「あぁ、ごめん。それ麺汁だったわ」
「どんな間違いだよ!!」
*
「と言うわけだ!」
「「何がだよ」」
誠実は近くのファミレスで、健と武司を呼び出していた。
誠実の言葉に健と武司は声を合わせて尋ねる。
「だから言ったろ? どうやったら気持ち悪くなく、プレゼントを相手に渡せるかをだな……」
「その前にどうやったら気持ち悪くプレゼントを渡せるんだよ……」
「まぁ、誠実も武司も顔面が男性器だからな……無理もない……」
「「誰の顔が男性器だ!!」」
「頭からパンストを被って渡すのはどうだ? 多少は気持ち悪さが軽減されるはずだ」
「「そっちの方が気持ち悪いわ!!」」
健の言葉に、誠実と武司は健を怒鳴る。
「大体だ、その相手って美奈穂ちゃんだろ? 普通に渡せば良いじゃ無いか、兄妹なんだ」
「まぁ……それもそうなんだが……改めて渡すとなるとなぁ……」
「じゃあ部屋の前にでも置いておけよ……そんなくだらない事でいちいち呼び出すな」
「どうせ暇だろ?」
「そ、そんな事は!」
武司にそう返す誠実。
誠実の言ったとおり武司は暇だった。
夏休みも後残りわずかとなり、残された夏休みで何をしようかと考えている最中だった。
そんな時に誠実に誘われたものだから、暇つぶしに丁度良いと思ってファミレスにやってきたのだ。
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