206話
「あれ? どうしたの美奈穂。キョロキョロして」
私が周りばかりを気にするので、気になったのであろう友達が、私にどう尋ねてくる。
流石に会場に来ている兄を探していたなんて言えるはずもなく、私は適当にごまかし。みんなと一緒に花火大会に出店されている屋台を見て回り始めた。
「美奈穂って、夏休みは何してるの?」
「あ、そうそう私もそれ気になった。連絡してもいっつも仕事中なんだもん」
「うん、夏は撮影が多いからね。ごめんね、あんまり遊べなくて……」
「それは良いけど、大変だね」
「そんな事ないよ、楽しいし」
考えてみれば、こうして友達と遊びに来るのもかなり久しぶりだ。
最近は撮影も忙しかったし、ライバルも増える一方でそれどころではなかった。
どちらかと言うと、おにぃの知り合いと合っていた方が多いかもしれない。
「夏休みももうすぐ終わりだね~、宿題やった?」
「私はもう少し~、美奈穂は?」
「私はもう終わってるわよ」
「えー! 良いなぁ~」
「美奈穂は真面目だもんねぇ~」
私はあらかじめ、忙しくなる八月前に宿題は終わしていた。
今年は受験もあるので、その勉強もしたかったのだ。
「私は夏期講習が忙しくてさ~、あんまり遊べなかったなぁ~」
「俺も塾三昧だったよ、そう言えば伊敷ってどこの高校狙ってんの?」
「え? 私?」
クラスメイトの男子が私に話しを振ってきた。
私は振り向きながら、何も考えずに答える。
「西星だけど」
「え! 伊敷って西星狙いなの?」
「うっそー! 美奈穂頭良いのに、もったいないよぉ!」
「なんで?! もしかして、西星に行きたい理由でもあるの?」
そんな事を言われても、理由なんて凄く簡単だ。
ただおにぃが居るからだ。
でも、そんな事を言うわけにもいかず……。
「まぁ……仕事を続ける関係上……かな?」
「「「あぁ~なるほどぉ~」」」
ごめん、本当はただのブラコンなんです……。
「ま、まぁね……」
「モデルも大変だねぇ~雑誌見てるけど、毎回可愛く写ってるし」
「あ、あはは……」
嘘はついて居ない。
あまり遠くの学校に行くと、モデルの仕事に支障をきたす恐れがあるので比較的近い学校の西星高校を選んだのだ。
「おい関口! 良かったな! 馬鹿なお前でも行けそうな高校だぞ?」
「う、うるせーよ!」
「今日の花火大会で、一気に距離を縮めろよな!」
「わ、わかってるっての!」
何やら後ろでクラスの男子がコソコソ話しをしている。
一体何を話しているのだろうか?
後ろの会話が気になり始めたとき、突然誰かかから話し掛けられる。
「あれ? 美奈穂ちゃん?」
「え……あ、美沙さん」
そこに居たのは、おにぃの知り合いであり、おにぃを狙う恋敵の一人、美沙さんだった。
しかし、噂では美沙さんは兄に一回振られてしまったらしい。
後ろにはもう一人誰か居るが……一体誰だろうか?
「美奈穂ちゃんも遊びに来たの?」
「はい、美沙さんもですか?」
「うん、そうだよ。あ、あのさ……もしかして誠実君も来てたりする?」
「えっと……確か栞さんと来てるはずですが……」
「え! ほ、蓬清先輩と!? ま、マジか……あ、あはは……」
「み、美沙! 顔が引きつってるわよ! 大丈夫?」
「だ、大丈夫よ……き、綺凜」
後ろには山瀬さんもおり、二人で遊びに来ている様子だった。
相変わらずこの二人は美人だ。
道行く人々が思わず振り返るくらい、この二人は美人で綺麗だ。
「うぅ……折角誠実君と偶然あって、花火デート出来ると思ったのにぃ……」
「美沙、私が居るの忘れてない?」
呆れながらいう山瀬さん。
この二人がこうして二人で居るところに、おにぃが入ると、普通ならかなり複雑な人間関係になるのではないかと私は思っていた。
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