168話

 翌日、誠実は激しい寝不足だった。

 結局三時間ほどしか眠れず、目の下にはクマが出来ていた。

 一方の武司と健は、誠実以上に起きていたはずなのに、翌日も朝から元気に朝風呂に向かっていた。


「まったく……あいつら元気だな……」


 誠実はそんな事を思いながら、いまだに布団の中にいた。

 時刻は朝の8時、誠実は朝食までの間、少しでも睡眠を取ろうと、布団の中に丸まっていた。


「あぁ……ねっむ……」


 日が出ている事もあり、誠実は中々眠れなかった。

 仕方が無いので、誠実は眠くなると噂の音楽を聞きながら眠る事にした。

 耳にイヤホンを付け、再び布団に潜る。

 しかし、丁度その時だった。


「誠実! いつまで寝てやがる! さっさと起きやがれ!」


「朝風呂も中々良かったぞ?」


 なんともタイミングの悪いことに、武司と健が朝風呂から帰って来てしまった。

 武司は誠実の布団をひっくり返し、無理矢理布団から誠実を出す。


「勘弁してくれよ~お前らの馬鹿話しに付き合って、寝てないんだからよ~」


「風呂に入れば目も冴えるだろ? さっさと行ってこい!」


「寝れば冴えるから……」


「風呂に入った方が冴えるって、良いから行ってこいって、ここで寝たら起きれなくなるぞ!」


「うぅ……」


 その後も誠実は粘ったが、武司と健に負け、風呂に向かい朝風呂に入る。

 確かに目は覚めた、しかし体がだるいのは変わらなかった。

 湯に浸かっている間も体の節々がなんだかだるく、今日一日この調子かと思うとテンションが下がる。


「あぁ……なんか気分悪い……」


「全く、夜更かしするからだ」


「健には言われたくない」


 風呂から上がり、誠実は武司達と合流し朝食を食べに女子の部屋に向かった。

 昨日の事もあったが、一晩寝たからか、そこまで気まずい雰囲気は無かった。

 

「今日はどうするの?」


「また海って言うのもな~」


「折角、いつもは来ないところに来たんだし、観光したいよね」


 本日の予定を朝食を取りながら相談する一同。

 誠実はそんな武司達を他所に、別の事を考えていた。


「おい、誠実聞いてるか?」


「え? あぁ、すまん聞いてなかった」


「たく……まだ眠気が残ってるのか?」


「まぁ、そんなところだ……」


 誠実は武司にそう言うと、ご飯を口に放り込む。

 本当は、今日の事を考えていた。

 どのタイミングで二人に言うべきか、誠実は朝食の焼き魚を食べながら考える。

 なるべく、皆が帰る頃を狙って話しをしようと考えていても、中々タイミングが難しい。


「……弱ったなぁ……」


「何が弱ったの?」


「ん? あ、沙耶香……」


「うん、どうかしたの? なんだか困ったような表情で…」


 正面で食事を取る沙耶香に声を掛けられ、誠実は沙耶香の顔を見つめる。

 これからの事を考えると、沙耶香に対して申し訳ない気持ちが出てきてしまう。


「あ。いや……大丈夫だ、それよりこれ上手いな!」


「え、あ……そうだね」


 誠実の言葉に、沙耶香は笑顔で答える。

 そして同時に沙耶香は違和感を感じた。

 食事を終えた誠実達は、荷物を旅館に預け、近くの観光地に向かう。

 旅館の近くには、有名なパワースポットがあり、その他にも有名な観光施設が多く、観光にはもってこいだった。


「パワースポットね~、んなもん効果あるのか?」


「さぁな、だが有名な観光スポットだ、行って損は無い」


 武司と健はガイドブックを見ながら話しをする。


「そもそもパワースポットってなんなの? 私良く知らないんだけど?」


「えっと、なになに? ここのパワースポットは、人の悪意や邪念を取り除き、清らかな心の人間にすると言う、大きな大木があるらしいぞ」


 志保の疑問に、武司がガイドブックを見ながら答える。

 

「要するに変態なアンタにぴったりの場所って訳ね」


「あぁ~はいはい、わかったわかった。全くお前は何もかわらねーな」


「うっさいわよ、この変態」


 旅館から少し歩いたところのお茶屋で、和菓子を食べながら誠実達は何処に行くかの相談をする。

 

「私はこの水族館にも行きたいかも」


「あ、そこには私も行きたいなぁ」


 ガイドブックを見ながら、美沙は水族館のページを指さす。

 そんな美沙に便乗して、沙耶香も言う。


「それなら私は、ここに行きたいな」


「あ、私もいきたい! もちろん健君と!」


「俺は行きたくない」


 綺凜と鈴は指を指したのは、海の岬の灯台だった。

 なんでも灯台に上ることが出来たり、灯台近くに露店なども出ているらしい。


「じゃあ、皆それぞれ行きたいとこに行くか? そうすれば、全員行きたいとこに行けるし、スマホで連絡取って、旅館に集合して帰れば問題ないだろ?」


「それもそうね、じゃあ私はパワースポットに行くわ」


「俺もそうすっかな、行きたいところ無いし」


「だ、だからって、な、なんで私について来るのよ!」


「別に良いだろ?」


「い、良いけど……もう……」


 武司と志保はパワースポットに向かう事になった。


「じゃあ、私と鈴ちゃんは灯台に行く?」


「うん! 綺凜ちゃんも行こ! あと健君も!」


「断る、俺は……」


「じゃあ決定!」


「話しを聞け」


 鈴と綺凜、そして健は灯台に向かう事になった。

 そして残った、沙耶香と美沙、そして誠実は水族館に行くことになった。


「じゃあ、そう言うことで、解散! 何かあったら、スマホで連絡するってことで!」


 武司のかけ声で、皆はお茶屋を後にし、それぞれの行きたい場所に向かった。

 誠実は沙耶香と美沙と共に、水族館に向かう。

 正直誠実は、チャンスだと思った。

 これで二人と話しが出来る。

 誠実はそんな事を考えながら、水族館に向かって歩いて行く。


「それにしても、今日も暑いわね~」


「そうだね、汗かいちゃうよ」


 誠実は沙耶香と美沙の前を歩き、二人の話を聞いていた。


「沙耶香の場合は、胸の谷間とかに汗かきそうだよね~」


「あ、あんまりそう言うこと言わないでよ! この時期は胸の汗疹とか大変なんだから!」


「あぁ、下乳に出来るって言う?」


「だから、詳しく言わないで!!」


 二人に話しを前で聞いていた誠実は、いろいろと想像してしまい、顔を赤く染める。

 男の前であまりそんな話しをしないで欲しいと、思いながら、誠実は水族館までの道を確認する。

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