129話
風呂から上がった誠実は、美奈穂よりも一足遅く部屋に戻ろうとしていた。
一緒に上がるのも気まずいので、誰も居ないすきに美奈穂だけを風呂から上がらせ、その後で誠実は風呂から上がり、現在は部屋に戻る途中だった。
「はぁ~、何妹の裸を意識してんだ……」
先ほどの風呂での出来事を思い出し誠実は顔を赤く染める。
部屋に帰って美奈穂と顔を合わせるのも気まずいので、誠実はどうしたものかと悩んでいた。
「飲み物でも買ってから帰るか」
先に寝ている事を願い、誠実は時間つぶしの為に旅館の自販機に向かう。
丁度風呂上がりで喉も渇いていた誠実は、財布の小銭を確認し旅館入り口近くの自販機で炭酸飲料を買い、椅子に座って飲んでいた。
「あぁ~、いよいよは帰るだけか……」
終わって見ればあっという間だったなと考えながら、誠実は二日間を振り返る。
大変ではあったが、良い経験が出来たと誠実は思っていた。
これで給料も良いのだから、美奈穂に感謝しなければならないと思いながら、誠実は再び美奈穂の裸を思い出してむせる。
「げほっげほっ! ……マジで何を思い出してんだ俺は…」
妹を意識する自分自信を誠実は気持ち悪いと思いながら、ため息を吐く。
飲むものも飲んで、誠実はそろそろ部屋に戻ろうと立ち上がり部屋に戻って行く。
各部屋からは、まだ騒がし下な声が聞こえて来ており、二次会が盛り上がっている事を感じさせる。
「ただいまぁ……」
誠実が部屋に戻ると部屋は真っ暗だった。
敷かれた布団はの片方には、既に美奈穂が眠っており誠実は静かに部屋の中に入っていく。
「またこのパターンか……」
そう思いながら誠実は美奈穂の隣の布団に入り、眠りに付く。
風呂上がりと言うこともあり、目が覚めておりなかなか寝付けない誠実は、スマホで動画を見ながら眠くなるのを待っていた。
すると、またしても寝ぼけた美奈穂が誠実の布団に入って来た。
「な……こういうことか……」
昨日、なぜ美奈穂が自分のベッドに入ってきたのか、なんとなくわかった誠実。
美奈穂は誠実の布団に入り込み、誠実の背中に抱きつく。
「ん……」
「おい、美奈穂起きろ、お前の布団は向こうだ!」
「ん……うん……」
返事をする美奈穂だったが、一向に動こうとしない美奈穂。
そんな美奈穂をに誠実は再びため息をついて起き上がり、美奈穂を抱きかかえて布団に戻す。
「昨日見たいなことになるのも嫌だしな……」
昨日の二の舞にならないようにする誠実。
美奈穂に布団を掛け、誠実は自分の布団に戻ろうとすると、美奈穂が誠実の服の裾を握ってきた。
「……おにぃちゃん……」
「……」
昔の夢でも見ているのか、美奈穂は誠実の腕にしがみつきながら、そんなかわいらしい寝言をつぶやく。
誠実はそんな美奈穂を見ながら、昔の事を思い出す。
「こんな女っぽくなりやがって……」
誠実は美奈穂の寝顔を見ながら、一人つぶやく。
いつもはしっかりした感じだが、寝ているときはやはりまだ子供なんだなと感じながら、誠実はそっと美奈穂の手をほどき誠実も布団の中に入り、眠りに落ちていった。
*
翌朝はみんなの目覚めは遅かった。
ほとんどが二日酔いでダウンしており、運転手をしていた人以外は全員顔を真っ青にしていた。
しかし、意外な事に中村は二日酔いになっておらず、元気そうだった。
「さ、じゃあ帰りましょうか?」
「はい、じゃあ皆さんどうもお世話になりました」
この二日間にお世話になった人たちに、誠実はお礼を言い一足早く旅館を後にしようとする。
そんな誠実の元に、恵理が小走りでやってきた。
「誠実君」
「あ、恵理さん。恵理さんもどうもお世話になりました」
「うん、お疲れ様。はい、これ」
「え、なんですかこれ?」
「私の連絡先、何かあったら連絡してね」
そう言って恵理は誠実に連絡先を書いた紙を手渡す。
「あ、どうも」
「まぁ、偶に連絡して来てよ、家もそこまで遠くなさそうだし」
「そうします、じゃあどうもお世話になりました」
「妹ちゃんと仲良くするんだぞ~」
「なんですか、その親戚のおばさん見たいなのりは……」
恵理に見送られ、誠実と美奈穂は旅館を後にした。
時刻は昼前の11時、車に揺られながら誠実達は目的地に向かう。
「あ、そうそう誠実君これ」
「え、なんですか?」
「今回のお給料、忘れないうちに渡しておくわ、お疲れ様」
「あ、すいません、ありがとうございます」
途中立ち寄ったサービスエリアで、中村は誠実に茶封筒を手渡す。
「頑張ってくれたから、少し多く入れておいたわ」
「マジですか! すいません、ありがとうございます!」
「色々大変みたいだけど、頑張りなさい、陰ながら応援しているわ」
「な、中村さん……」
誠実はこの時激しく自分を責めた。
こんなにもいい人の事を生理的に無理だと思って居た事に罪悪すら覚えて居た。
「ありがとうございます……俺頑張ります……いろいろ」
「全部嫌になったら、私と同じ道を選ぶのも手よ」
「あ、それは遠慮しときます」
色々頑張った甲斐があったと思いながら、誠実は給料袋を鞄にしまい込む。
これで明日の軍資金もどうにかなった上に、夏休みに遊ぶ金も出来て、誠実は大満足だった。
「なにニヤニヤしてるのよ……」
先ほどまでトイレに行っていた美奈穂が車に戻って来た。
戻ってくるなり、誠実がニヤニヤしながら鞄を見ているので、美奈穂は若干気味悪がっていた。
「おぉ美奈穂か、いやぁ~やっぱり金があると心にも余裕が出来るよな?」
「何を言ってるのよ……それより、中村さんお昼はどうしますか?」
「そうねぇ……この先のインターで食べようと思ったけど、ここの方が色々ありそうだし、ここで食べていきましょうか?」
「そうしましょう、私もおなかすいちゃったので」
そんな経緯で、誠実達はこのインターチェンジで昼食を取ることになった。
お昼前という事もあり、お店は空いており並ぶ事無く席に座れた。
「それで、どうだった? 今回の仕事は?」
「まぁ、いつもよりはキツかったですけど、あんまり変わらないですね」
中村が今回の仕事の事を美奈穂に尋ねる。
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