堕ちた天使

東雲雪華

ノア

平日の昼頃。

サラリーマンは仕事に向かい、今は主婦たちが楽しげに街を歩く姿を見かける時なのだが、生憎、季節外れの台風によりここ数日は暗い雰囲気である。


空は一面灰色で強い風と滝のような雨の中、一人の少女がいた。




彼女の名前はノア。白いキャミソールのようなワンピース、いわゆる「キャミワンピ」とも見て取れる服を着ていた。私がこのような曖昧な表現を用いているのは、私が単に田舎者だからという訳では無い。彼女の身に纏うこの服が地人にはどうしても作れそうにない材質、品質、発色、そして気品。その全てが兼ね備えられていたからだ。また少女も同様だった。



「...チッ」



そんな見た目とは裏腹に、彼女のその美しい顔は至極歪められていた。



「なんで私がこんな目に...。これも全て馬鹿な人間どものせいよ。いえ、そうに違いない。そうじゃなきゃ、この私が穢界あいかいに落とされるワケないもの。」



今まで自分はどの成績もトップだった。聖心という科目が低かったということも無く、彼女の右に出る者はいなかった。そんな中、彼女は重大なミスを侵した。



「悲しい事ね。もうあの者達には私達の姿は見えていないでしょう。見えていたなら主様がお望みになった通り、平和な楽園へとなっていたはず...?はて、何故、主様はわざわざ"あの木の実"をお創りになられたのかしら。」




仲間たちは皆口を揃えてこういった。




「ふざけないで...っ、何が「試すため」よ!!そのせいで私たちはあの穢人を生み出してしまったとでも言うのですか!?」


「お、おい.....」



「主様!!何故何も答えて下さらないのですか!」



先輩方の制止の声も聞かず私は叫び続けた。

それでも主様の声は私が連れ出される最後まで聞くことは出来なかった。





「っ...お父様っ!!!」




私たちの代々伝わる教え。それはここにいる皆が私の家族。コレは身内が生み出してしまった過ち。




ねぇ、お父様。

貴方の愛は素晴らしいものです。






でもその愛ゆえにあの者達を土に還せないのなら、







「.....このワタクシが、責任をもって全てを無かったことに────」







~「堕ちた天使」より~

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堕ちた天使 東雲雪華 @cherie

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