マクガフィン

月輝陽炎

第0話 プロローグ

「ねぇレン。大きくなったら俺のウエポンズになってくれる?」

誰かが優しい笑顔で聴いてくる

「___の?」

「うん!いや?」

誰かが少し寂しそうな顔になる。

「……いいよ。___のウエポンズになる」

答えに誰かはまた嬉しそうに笑った

「やったぁ!!約束だよ?絶対だよ?」

そう言って抱きしめられた。

暖かくて、優しいお日様の匂いがする。大好きな場所。精一杯抱き返す。

と肩を叩かれた。実際にではなく頭の中で

『交代してよ』

声に振り返ると鏡合わせの様な同じ顔を突き合わせる。

周りは真っ暗。一筋の光が有るだけのそこ。光の中に立てば外に出る。


レンは2人。

身体も2つ。


でも、繋がっている。

行ったり来たり出来るんだ。


俺は君で

君は俺で


それが当たり前なんだよね。



小さな家が燃えている。

真っ赤に燃えている。

少し前まで居たのに

「レンはここに居てね。俺すぐに戻ってくるから!!」

一緒に逃げてきた誰かは頭を優しく撫でながらそう言って燃える家に戻って行った。

ゆっくり歩く。

博士達に言われた場所に行くために。

『ねぇどこ行くの?』

「博士が言ってたとこ」

『でも、___がここに居てって言ってたよ』

「でも博士がそこに居てって言ってたから」

ゆっくり歩いて行く。

『すぐに戻る?』

「うんきっと」

『すぐだよ?』

「うん」

真っ暗な森を歩いて行く。


多分行っちゃ行けないってわかってた。

それでも足が進んだのは……


「ズルい」って思ってたから。




「体外受精成功ですよ。先ずはおめでとうございます」

そこには笑顔が溢れてた。

「さぁここからですよ!頑張りましょう!」

裏で何が起こっていたかも知らずに。


「軍研究室へ。被験体N37卵子切断完了。α、Ω共に正常に分裂開始。Ω回収完了。αは母体へ移植完了。母体健康状態は良好。続いて被験体N38卵子切断完了。αは異常分裂開始。被験体N38破棄決定。続いて被験体N39卵子切断完了。α、Ω共に正常分裂開始……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る