二章 29 イカれた思想

─ルシア視点─



俺は久しぶりの戦闘に気分が高まっていた


なんせこの死者の大森林に来る奴らは死を望む奴らばかり

この大樹まで来る奴はいない

一応死者の大森林の奥地、大樹には一生遊んで暮らしても使い切れないお宝が眠ってるって噂はあるらしいが、来る奴はすべからく死者の大森林の途中で力尽きる


根性を見せろ


稀に大樹まで来る奴らは全部知り合いで退屈この上ない

死に損ない共がたまに来てはちょっかいを掛けてくるくらいだ

だからこの久しぶりの生の戦いを心の底から楽しんでやる


本当なら全員を相手にしてやりたいのだが、すでにルシーリアや朱姫に取られているので俺は目の前のリーダーらしき奴一人で我慢する事にする


順番が三番目ってのは気に入らないが、ここは狐太郎に花を持たせてやる事にしよう

一応主人公だからなあいつは


「ふむ、さすがアークエネミー主敵でしょうか。これだけの殺気を当てても平然としているとは…」

「あ?殺気だったのか?てっきりそよ風が吹いたのかと思ったぜ」


余裕の表情で目の前でベラベラ語るのは真っ黒の黒装束に身を包んだ所謂[忍]と言う奴だ

俺の真っ白な髪とローブでまるで相反するオセロのようだと自嘲する

光と影なんて格好良い呼び方はしない

たいした敵じゃないし、オセロで十分だろ

まぁオセロ面白いけどな


俺が転生する前の世界で忍と言えば諜報活動、破壊活動、浸透戦術、謀術、暗殺などを仕事としていたとされる


こっちではあまりお目にかかれないが、どっかの転生者が広めたんじゃないかと思っている

かくいうこの大樹の村にも忍のようなものはいる

もっとも諜報活動くらいしかさせてないが、実力は折り紙付きだ


こいつは人間にしてはなかなかの殺気で及第点を上げてもいいが、忍としてはダメだな

ベラベラとよく喋る


黒装束の敵は俺から離れると視線を辺りに彷徨わせる

それを見た俺は若干不愉快そうに眉を顰めてやる


「よそ見とは随分余裕じゃねえか」


隙だらけだが、一瞬で終わらすのももったいない

せっかく俺を殺しに来てくれたんだ

まだまだ付き合ってもらわなきゃな…


「…戦ってるのは女性と子供。いくら人が足りないとは言えあんまりですね」

「見た目で判断すると痛い目見るぞ。あとあっちに男もいるだろうが」

「どれも力不足ですね…これなら私一人でも十分でしたね」


こいつ……なんて上から目線で偉そうで自意識過剰な奴だ…

よくこんな奴が忍のリーダーをやってるな

まるで昔の狐太郎を見ているようで嬉しくなった


視界の端ではルシーリアが部下の魔族を使って隔離結界を作っている

朱姫もそれにならって────に結界を張ってもらってた


一応この村の建物や至る場所には俺が強化魔術を施してあるから生半可な攻撃じゃ建物には傷一つ付かない

多分リファ達や一般の住人に被害がいかないように気を使ってくれたんだろうな…

そのリファ達だが、少し離れた場所で座ってこちらを見ている

危ないから建物に避難してろと言いたいが、そばに真っ白なバカでかい犬がいるから大丈夫だろう

────もいる事だしな


そして見れば狐太郎も、エルマノ達もそれぞれ結界を作っている

狐太郎の場合は朱姫と同じく────が結界を張ったんだけどな

相変わらず身内には甘いのな

視線を送ると返事がきた

何?俺も甘い?甘々だ?

バカ言うな、俺は甘くはねぇ

狐太郎にだってスパルタだ


ちっ、信じてねぇな…

後で俺がどれだけ厳しい男か小一時間くらい説教してやる



とにかくこれで今周囲に出ている敵はこいつだけ

だが、警戒は怠れない

おっと、エルマノ達がいたか

まぁあっちはあっちで大丈夫だろう


幸い死に損ない共が丁度村にいるからカーナに頼んで残りが隠れていないか頼んである

カーナと視線が合うとカーナは頷いた


「さて、んじゃこっちも始めるとするかね」


俺の言葉で二人の周りの空間が歪み湾曲する

時間にしてコンマ何秒だが慣れない奴はこれで酔う

さすがに敵は大丈夫みたいだな


「何かしたのですか?何も変わりませんが…」


そう、周りは今までと変わらない景色

だが景色・・だけだ


「見た目はな。誰にも邪魔されたくねぇからな。ちょっと次元を移動・・した」

「…ほぅ?私達以外の気配が何も無いのはそのせいですか。しかしいいんですか?あそこに残ってなくて」


こいつ、結界を張ったのにもわからない?バカなのか?それとも大物なのか


「その口ぶりだとまだ何か隠してやがるのか。だが心配いらねぇよ。うちは戦力は豊富なんだ」

「そうは見えませんでしたが…まぁいいでしょう。あなたの、アークエネミー主敵の首を持って戻れば足掻きも諦めるでしょう」

「できるならな…」


俺は一言つぶやくと刀を鞘から抜くと刀身が白く輝いた

黒装束の敵が両手に持つ武器はクナイ

刃の部分が濡れているのは毒が塗ってあるからか

ちなみに俺の刀は名は夢幻白夜と言う

捻りも何もないが、俺のお気に入りの一つだ


「その自信、いつまで持つか楽しみですね」


相変わらず上から目線の黒装束は静かに、俺に向かって走ってくる

俺の刀の間合いに入る寸前、黒装束は両手のクナイをこちらに投げつけてくる

それを俺は無造作に刀を横凪に振るい防ぐ


「ん?」


注意がクナイにそれた一瞬、視線を戻すと黒装束はいなかった


「上か!」


バッと上を向くと上空からこちらに飛びかかってくる黒装束

その手には先程と同じクナイが握られていて、俺が気付くや否や再びこちらに投げつけてきた


「効かねぇっての」


今度は刀の鞘で打ち払う

さすがに空中では移動ができないのかそのまま向かってくる

が、それは格好の的だぜ


間合いに入る前に黒装束は両手を背中の腰辺りに這わせる

クナイを入れる場所がそこにあるのだろう

そして両手に握られているのは予想通りクナイ…


「何本持ってんだ!」


俺の叫びに黒装束は笑った、気がした

今回は投げつけてきたりせずにそのまま空中からクナイを持った状態で振り下ろしてくる

バカなのか…


俺はクナイをかがんでやり過ごすと刀を力を込めて横に振るう

黒装束の胴に刃が食い込む


「──!?」


そのまま胴を切り裂き上下に断ち斬る

普通の人間なら、いや生きてる生物なら死ぬ一撃だ


しかし斬った感触がおかしいと思ったのも束の間視界が細切れになった黒い紙吹雪で遮られる


「変わり身か…」


俺は刀を鞘に収めて紙吹雪が収まるのを待つ


すると最初に立っていた場所に黒装束は佇んでいた


「どうしましたか?」


まるでさっきの攻防が嘘のような最初と変わらない対峙

黒装束は俺を出し抜けたのが嬉しいのか目が三日月になっている


その表情に俺はカチンときた

今度は俺から黒装束に突っ込む

刀は鞘に収める、ギリギリまで抜かない


「ふっ」


間合いに入るや否や鞘から抜いた刀を上から弧を描く様に上段から袈裟斬りに振り下ろす


─ギィン─


「おっ!?」


防がれた事に小さく驚いた俺は攻撃には移らずに間合いを開ける


「へぇ…よく防げたな」


俺は驚きと感嘆の声をあげる

黒装束の覆面の下はニヤニヤ顔でいっぱいだろう

隠してくれてて助かるぜ

拝んでいたらぶん殴ってそうだからな


「動きは速いが、ただそれだけです。初動から目を離さずにいれば、どこを狙ってくるかはわかります」


俺の想像とは違う的はずれな答えをドヤ顔で語る黒装束

ほんとイライラする奴だ

アルス教は人選を間違ったんじゃねぇのか?


ちなみに俺が賞賛したのはクナイの強度だ

並の強度じゃクナイごと体をぶった斬っている

こいつを作った転生者は多少の鍛造知識もあったかもしれねぇな


それともこの世界が進歩したのか

俺は世界に興味が無いからわからない

まれにうちの忍やカーナが拾ってくる情報を聞く程度だからな

あいつら俺が聞く耳持たないのを知ってるくせに、逃げ場のない食事時にベラベラと話す

お陰で少しはの情勢はわかる


しかしまだまだクナイの創りが甘い

黒装束は気づいてないが、防いだクナイは俺の刀が少し食い込んでいた

あれなら次は少しスピードと力を上げれば断ち切れるだろう

どうせ変わり身を使うだろうが、無傷では逃さねぇ

面白い表情にしてやる


そう決意すると左手に刀を持ち替え、再び黒装束にさっきと同じ・・速さで突っ込む

黒装束は余裕の表情

と言うか歓喜の表情だろそれ


「その余裕ぶった表情を変えてやるよ」


重心を低くして地を這うように接近した俺は今度は地面スレスレから左手一本で刀をすくい上げるように振るった


「それは楽しみですね」


俺の斬撃に臆することなく答える黒装束は半身の体勢で刀をかわすと、左手のクナイを心臓めがけて突いてきた


「みえみえなんだよ」


毒が塗られたクナイを体を捻ることでかわした俺はその捻りを利用し、刀を横に凪ぐ

黒装束は突きの為重心が前に掛かっている

簡単にはかわせねぇぞ


と思いきや、軽く屈んだと思ったらジャンプ一番俺の上空を飛んで行った

猿かあいつは!


体を捻りながら着地し、今度は黒装束から無音で間合いを詰めてくる


上等だ、俺も勢いをつけるべく突っ込んだ

刀とクナイ、普通に考えれば刀の方が間合いは長く、クナイは短い

なので黒装束はクナイの間合いまで俺の懐に入らなければならない


それを狙って俺は誘い込む

若干緩慢に放つ振り下ろしの斬撃を黒装束は余裕の表情でかわし、懐に潜り込んでくる

普通ならわかろうものだが、こいつはバカなのか自分の実力だと思い込んでいる

今の俺の斬撃も普通ならさっきと比べて弱いから何かあるって思うのが普通だろ?


それをこいつは…


懐に潜り込んだ黒装束は狂気を含んだ笑みを浮かべ、攻撃モーションに入る

カスリさえすれば勝てると思い込んでるから当然といや当然か


俺はかわされた斬撃を振り下ろし途中で止めて両手で持つと、さっきより力と速さを上げて横凪ににする


攻撃モーションに入っていた黒装束は驚愕に目を見開き、慌てて防御するべく攻撃を中断しクナイを刀の軌道上にかざす


─ギ……キンっ─


噛み合う音は一瞬、刀はクナイを断ち切った

一瞬の間、だが黒装束の口元が笑みに歪むのを見た

そして再び黒装束の胴に食い込む刃

やはりさっきと同じ感触…

刀を振り切った瞬間、視界が黒に覆われる

バッと黒装束の体が黒い紙くずに早変わりだ


しかし俺は笑みを浮かべる


「灯れ」


俺が呟くと同時に辺りを舞っていた黒い紙吹雪一枚一枚にボボボっと白い炎が灯り、黒を燃やし打ち消していく


「ぎゃあああ」


瞬間どこからとも無く叫び声が響いたと思ったら、離れた場所に蹲る黒い塊

いや、黒装束か


その黒装束の全身から煙のようなものがぶすぶすと立ち上っている


「くっ…よくぞ私の技を見破ったな……さすがはアークエネミー主敵


くぐもった声じゃなくなったなと思ったら、顔全体を覆い隠していた頭巾と覆面が無くなっていた

しかしそれを見た俺は笑いを堪えられなかった…


「ぶっ、ぶはははははははははははははははははーー」


黒装束の髪がどこぞのコントみたいに爆発した感じーー俗に言う酷いアフロヘアーだーーになり顔にも煤けたような模様があったから…


「きっ、貴様…笑ったな……私の顔を見て笑ったな……」

「ぶはははは、イケメンじゃねぇか。こんなに二枚目なら頭巾と覆面いらねぇんじゃねぇか?ぷっ」


黒装束はその表情を怒りに変えプルプルと体を震わせている

今までの余裕ぶった表情はどこへやら、今は屈辱に表情を歪めている


俺はそれが可笑しくて笑いが止まらない


「ゆ、ゆゆ…許さんぞ。わ、わた、私を侮辱したつ、罪……いかなアークエネミー主敵とは言え……」


俺は笑うのをピタリとやめて黒装束を見る

奴は懐からピンポン玉くらいの真っ黒な宝玉を取り出した


「き、貴様の命を…持ってして…………」


あれは──


「つ、償え──」


そう言うと手のひらに乗っかった宝玉をグッと握り込んだ

瞬間割れた宝玉から黒い霧が吹き出した


やっぱり瘴気…

魔族化したか


吹き荒れる瘴気は黒装束を中心に集まっており、さながら繭玉のようになっている

変体中って事か?


隙だらけも甚だしいが、終わるまで待ってやるのも一興か

何か情報が得られるかもしれないしな


待つ、と言っても数十秒だった

まぁ戦場ではそれが致命的なのだが、どうでもいいか


黒装束を包んでいた黒い繭玉も中に吸い込まれるように霧散して消えた

そして中から出てきたのは額から伸びる三十センチ程の角を持ち、目全てが紅く塗りつぶされた魔族だった

普通の魔族のように瞳孔が紅いと言うわけではなく、目の全てが紅い

手にはクナイの代わりに鉤爪のようなものがある

残念ながらアフロヘアーも煤けたペイントもなくなっていた


「落ちた魔族…か」


魔族の中にも人間と同じように肌の色、髪の色が違うだけで差別したりする輩がいるように、魔族にもそう言う腐った奴らはいる

そして普通と少しでも違う外見で生まれた魔族は隔離され、迫害されてきた

特徴として目の前にいる魔族のように目が違ったり、或いは角が無かったり翼が片翼だったり、魔力が少なかったり酷いのだと外装の色が黒じゃないからってのもある

魔族イコール黒って誰が決めたんだ


だが、基本的に魔族の中ではそういうのはほとんどない

魔族人口の一割にも満たない数だろう

なので魔族の頂点にいたルシーリアはおそらく知らない


そしてそういった迫害された魔族を総じて[落ちた魔族]と呼んでいるらしい

なぜ知ってるか?それはこの死者の大森林、魔族からは黄泉の入口とも呼ばれているこの場所へ生まれてすぐ捨てられたり、成長して発覚した場合もそのままここに連れて来られたりしているからだ


追い立てられて森の中で瀕死だった奴もいた

森の中までは奴らは追ってはこない


俺の村はそういった奴らが多くいるからな


「ふふ、力が溢れる。これでアークエネミー主敵を葬り去る事ができる」

「自意識過剰は変わらないのか…所で、さっきの黒い玉はなんだ?それを割ってお前は変わったが、その外見はお前らアルス教が忌み嫌う魔族じゃないのか?」


知らないふりをして質問してみる

ベラベラとお喋りが好きな奴だから答えてくれるといいんだが…

自我がいつなくなるかわからないから今のうちに聞けるだけ聞いてやる


「……良いでしょう。我らは慈悲の心はあります。いかにアークエネミー主敵と言えど、知らぬままでは気の毒だ。死への手向けに教えましょう」


バカ確定


「私も暗部の一部隊を従える身、しかし全てを知ってるわけではありません。しかし仕事を請け負った事はあります」

「魔族の子供を攫う仕事か?」


俺の言葉に少し目を見開いた黒装束だが気分を害した様子はなかった


「その通りです。子供以外にも女性の魔族、男性の魔族、成人、年寄り、妊婦…ああ、迫害されていた魔族の集落を襲うと言うのもいましたね」


喜々として話す黒装束に俺は胸糞悪い気分になる

しかし奴は気づかない


「それを…どういう風にしたのかは知りませんが魔族の力を収めたもの、それが先程使った宝玉ですよ。いまだ実験は続いてるみたいですが」

「危険はないのか?」

「それも実証済みです。と言っても実証されたのは最近のようですが。それまではもう少し大きい宝玉だったと聞きます」


前来た転生者…マサツグだったか、そいつの時はまだ完成してはいなかったか

いや、まだ実験中って事は完成してないんじゃないのか


「んでその宝玉には魔族の瘴気を収めてるのか?お前の外見を見ると実験に使った魔族の外見が出てる?」

「ふふ、よい所に気が付きましたね。瘴気のみを吸い出し宝玉に収める。これでは魔族の力を十全に発揮できない。なので生きたままの魔族そのものを宝玉に閉じ込めています。もちろん色々処理をしているそうですが…これにより封じた魔族の力をそのまま糧にできるのです」


両手を広げてアピールする黒装束

表情が完全に自己陶酔してる表情だ

俺は今すぐにでも殺したい衝動を抑える


「…今はその魔族と同化してるって事でいいのか?」

「ええ、自我はないそうなので純粋に魔族の力だけが私のものに…もちろん戦闘が終われば元の姿に戻れます」


恍惚の表情で語る黒装束は見ていて気持ちが悪い


「さて、そろそろお喋りは飽きましたね。私はあなたアークエネミー主敵を屠り、地位を得てさらなる強さを手に入れます。そして我がアルス教を頂点に、人族以外を滅ぼします。なので──」


そう言うや否や黒装束の姿が掻き消える


「──!?」


いきなり襲ってくるとはなんて卑怯な野郎だ

人の事言えないが…

先手必勝はわかるぜ


「死んでください」


目の前に現れた黒装束はすでに攻撃モーションに入っている


「ごめんだな。それに人族至上主義なら俺も人間なんだがな…」


動きは速いが見えないわけじゃない

俺は振るわれた左手の鉤爪の一撃を上体を後ろに反らす事でかわす


「──!?あなたは人族ではありません。滅ぼすべきアークエネミー主敵です」

アークエネミー主敵って種族じゃないんだが…」


攻撃をかわされて一瞬驚いた表情を見せた黒装束だが、さらに踏み込むと右手の鉤爪を突き出してきた


─ッキィン─


俺は無造作に下から斬りあげた刀で鉤爪を弾く

そして空いている手で握りこぶしを作ると踏み込んで普通にストレートパンチをお見舞した


「ぐほっ!?」


顔面にパンチを受けた黒装束は面白い様に吹っ飛んでいく

もやし体型だから体重が軽い

少しは肉を食って筋肉付けろ


さすがにこれくらいじゃ倒れないだろうがいい気味だ


黒装束は揺らりと立ち上がるが抑えた鼻からは血がボタボタこぼれ落ちている

鼻骨が折れたか


「ば、ばがな……」


信じられないと言う表情で俺を見る黒装束

ああ、いいなこういう自信満々だった奴が見せる驚愕の表情は

ムカつく奴なら爽快感抜群だ


「何がバカなだ。お前に倒されるくらいアークエネミー主敵様が弱かったらとっくの昔に殺されてるぜ」

「わ、わわ…私は、強くなったはずだ。手に入れた力は、魔王すら凌駕すると…」

「デマカセだろ。お前、弱いぞ。つか──」


挫折した事ない奴が挫折するとこうなるのかね

負けを非を認められなくなるのか

俺は未だ鼻を抑えて立ち尽くしている黒装束に一気に近づくと多少力を込めた刀をぞんざいに振るう


プライドがへし折れた奴なんて脆い


「ぎゃあああああああああ!」

「他人から与えられた力で悦になるんじゃねえ」


回避する間もなく咄嗟に空いている腕をかざし、防ごうとしたのだろうがその腕ごとぶった斬る

そしてミドルキックをお見舞いして吹っ飛ばした


「それが自分の力だと?本当の強さは自分で努力して得るもんだ」


刀を持ってない手を上にかざして魔力を集める

すぐに手のひらが熱くなるくらいの火球が出来上がる


紅色の火球クリムゾンフレイム。まがい物の力と一緒に消し炭になりな」


俺は悪役が言うようなセリフを吐くと頭上に掲げていた手を振り下ろした


「ひ──ひぃぃぃぃぃ」


黒装束は情けない声を上げて火球が迫ってくるのを見ることしかできない


そして火球は黒装束を飲み込み、強大な火柱を上げた





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