一章 15 冒険者パーティー

数時間後



目的の薬草と量を採取しおえ、帰る準備をしていると森の方から数人の人がこちらに歩いてくるのが見えた

向こうも狐太郎に気づいたらしく手を振ってくる

狐太郎も手を振り返してしばし待つことにする


歩いてきたのは見知った顔だった

服装は革装備の上下で動きやすそうだ

急所に当たる部分には金属系で補強してるのが見える

腰には片手剣を差している

昨日の宿の昼食時に女将にイジメられてた人・・じゃなくて狐太郎にアドバイスをしてくれた人だ


「おー、誰かと思ったらコタローじゃねぇか!」

『ディーノさんこんにちは』


ディーノの後ろにはパーティーメンバーだろうか

計4人のパーティーのようだ


「ディーノ、紹介してくれよ」


身長が高く金属鎧で身を固め、バスターソードだろうか大剣と菱形で人が1人隠れられるような盾を背中に差している

メンバーの中で一番体格が良い筋肉モリモリのまさに接近戦に特化した男がディーノに言う

他のメンバーも頷いている



「ああ、お前らは昨日別で飯食ってたからな。さっき話したろ?こいつがコタローだ」


どんな話なのか気になるがとりあえず紹介されたので『こんにちは』と頭を下げる


「ほほぅ、君がコタローくんか。思ったより小さいな。もっとたくさん食べた方がいいぞ!」

「あんたに比べたら大概が小さいわよ」


とメンバーの1人の魔術師風の格好をした女性が筋肉質の男の肩にバシッとツッコミを入れる

ローブっぽいがどっちかと言えばマントっぽい

ダークグリーンのマントを羽織り、手にはロッドを持っている


「貴方達、自己紹介しなさい。こんにちは、私はライカ。あっちのツッコミ担当がリクネで脳筋バカがロイっていうの」

「おいライカ、誰か脳筋バカだ!?」

「ツッコミ担当って何よ」


ライカの身も蓋もない紹介にロイとリクネが抗議の声を上げるがライカは華麗にスルーした

見るとライカの格好はローブは着ていないが動きやすい革装備の服装に短めの杖を持っている

メイスとは違うのだろうか先端には魔石が付いている

そして腰にはナイフ

どんな職業なのだろうか


「ふふ、気になる?一応回復専門でヒーラーなんだけど接近戦もいけるわよ」

「ライカはな、ヒーラー戦士って所か」

「戦士って言わないで!!あくまでメインは回復なんだから。護身として接近戦も嗜んでるだけよ」

「いや、こないだのアーマーリザードを短杖でタコ殴りにしてたの見たら嗜むなんてレベルじゃないと思うわよ」

「戦士と言うより狂戦士だな」

「あれは単なる八つ当たりだろ」

「あら、ディーノとロイはこの短杖の硬さを試したいのかしら?」


アーマーリザードとはその名の通り鎧を着たリザードマンだ

それを短杖で倒したとなるとかなりの破壊力があるような気がする

青い顔で首をブンブン横に振るディーノとロイ


「いっそ接近職に鞍替えしたらどうかと思うわ」

「そしたらこのパーティー回復役いなくなるじゃない。あくまでストレス発散で短杖使ってるだけだし」

「お前ら内輪もめは後でやれ。すまんなコタロー、いつもこんなんなんだ」


苦笑いしながら頭をかくディーノ


『仲良しなんですね』


未だにギャースカやっているディーノの仲間たちを見てそう思う


「まぁな、悪かったらパーティーなんて長続きしないしな。ところでコタローは何か依頼か?」

『はい、薬草採取です』


採取した籠を見せる狐太郎にディーノは一瞬籠を覗き込み固まる

どうしたのかとメンバー達もディーノの後ろから籠を覗き込み同じく固まる


「コタローなんの依頼を受けたんだ?尋常じゃない数だが・・・」

『初めての依頼なんで一件だけ受けようとしたんですが、リリアさんが近場に生えてるから他の依頼も纏めて受ければお得だと』


数枚の依頼書をディーノに見せると再び絶句するディーノ達


「お前・・新人冒険者の初依頼のレベルじゃねぇぞこれ。数が多すぎる」

「手伝った方がいいんじゃないの?」

「そうなんだが・・・」

『あ、でも一応予定の数は揃ったんで大丈夫です』

「「「「なにぃぃぃぃぃ!!」」」」


あっさり言う狐太郎に驚くメンバー


「よく集められたな。いくら群生地とはいえ、初見で薬草集めは大変だぞ」

『あ、形とかは知ってたんで割と楽に見つかりましたよ』

「・・・まぁそれなら・・ってもなぁ・・リリアさん何考えてるんだか・・・」

『それよりディーノさん達も依頼じゃなかったんですか?』


話を逸らすために他の話題を振る


「おう、そうだ!よく聞いてくれた」


と言いながらロイが魔法袋から取り出したのは1つの大きな青色の魔石だった


サッカーボールくらいの大きさなのだが、ロイが持つとソフトボールくらいに見える


『大きい魔石ですね』


狐太郎がその大きさに驚いてるとディーノはそうだろそうだろと嬉しそうだ


「こいつはリードスケルトンって奴の討伐証明なんだ。依頼ではスチルスケルトン討伐だったんだが、行ってみたら上位種のリードスケルトンがいてな」


リードスケルトンはスチルスケルトンの上位種でレア種とも言われている

討伐証明もスチルスケルトンは薄い青色の拳大くらいの魔石なのだが、ロイが今手に持っているリードスケルトンから出た魔石は青色も濃く大きさも段違いだ


「サクッと倒したわけだ」

「どこがサクッとよ!!ギリギリの勝利よ、辛勝もいいとこだわ」


ディーノにツッコミを入れるリクネ


「退路も絶たれたんだから仕方ないだろ」

「おかげでポーション類も空だ」

「だがそれでも黒字には違いない」

「でもディーノ、もうあんな特攻はこりごりだわ。回復する人の気にもなってね」


ニコリと笑顔のライカだが目が笑っていない

それに気づいたディーノはコクコク頷くだけだった


「まぁ今回は運がよかっただけだ。退路が絶たれなければ完全に逃げてる相手だしな」


スチルスケルトンは単体Bランク相当でパーティーで戦う場合はCランクでも可能だ

しかし上位種のリードスケルトンはAランクの魔物だ

Aランクの冒険者かBランクパーティーでないとキツイだろう


「んじゃここで立ち話も何だから帰りながら話そうぜ」

「私は早く美味しいお酒が飲みたい」

「俺は飯だ」

「はいはい、ギルドで換金したらいくらでも食べれるわよ」


リクネとロイを窘めながら歩き出すライカ

ディーノと狐太郎もそれに続く


街に到着したのはまだ日が出てる時間だ

日没まではまだ余裕がある


「んじゃギルド行くか。コタローも行くんだろ?」

『はい、依頼報告するので』

「んじゃ私らは一旦宿に帰るわ」

「うむ、後でな」


ロイから魔法袋を受け取り、リクネとロイは宿へディーノとライカと狐太郎はギルドへ報告&換金だ

リクネがバイバイコタローちゃんと手を振ってきたので振り返す


3人はギルドへ入る

まだ早い時間だからなのか人はまばらだ


「あら、コタローくんどうしたの?ディーノさんまで一緒に」


入ってきた狐太郎達に気づいたリリアは声を掛ける


「ああ、途中で会ったもんでな。一緒に帰ってきた」

「知り合いだったの?」

「まぁちょっとしたな、んで俺は依頼報告だ」

「ディーノさんも早いわね。たしかスチルスケルトン討伐だったかしら」

「ああ、だが出たのは上位種だった。これが証明部位だ」


ゴトンと魔石をリリアの前に置く


「え?リードスケルトンが出たの?よく無事だったわね?」

「運がよかっただけです。もう一度戦えと言われても嫌です」


リリアの問いにライカが答える


「普通なら逃げるんだが、今回は退路を絶たれてやむを得なかったんだ」

「でも全員無事なんだから良かったわね」

「ああ、それだけは本当よかった」


ディーノはライカをチラリと見る

ライカは気づいてないがリリアはそれを見てクスリと笑う


「それじゃちょっと換金してくるから待ってね。ミリッサ、これお願い」


リリアはミリッサと呼ばれた女性のギルド職員に魔石を渡す


「んじゃ待ってる間、コタローくんの話を聞きましょうか?」

『話と言うか、依頼の報告なんですけど』

「え?まさか全部?」

『はい』


言われて驚くリリアはディーノに視線を向ける

その目が手伝った?って言いたいのだろうかディーノも察したのか首を横に振る


「とりあえず依頼の薬草見せてもらえるかしら」


リリアに促されるままに狐太郎は薬草の入った籠を受付に置く

各薬草10束ごとに纏められていてわかりやすい

驚きの表情で薬草の数を数えていたリリアがため息を付く


「依頼の数全部あるわ。まさか1日、半日足らずで集めてくるとは思わなかったわ。数日はかかると思ってたのに」

「やっぱりか、俺もリリアさんがそんな無茶な事させるわけないと思ったんだが・・」

「数日どころか半日足らずで終わらせたと」


3人の驚きと呆れの表情をよそに意味がわからず首を傾げる狐太郎


「とりあえず依頼完了の判押すわね

それとこれが成功報酬よ」


渡された革袋に入ったお金を確認もせずにポシェットにしまう狐太郎にディーノが待ったをかける


「コタロー中身確認しないのか?」


見ると横のライカも頷いている


『したほうがいいですか?』

「当たり前だろー!もらった報酬が少なかったらどうするんだ」

「こら、コタローくんに変な事吹き込まないの!ギルドがそんなことするわけないじゃない」

「いや誤解だ、言葉のあやって奴だ。でも普通は確認するだろ」

「そうね、普通の冒険者は確認するわね。特に新人冒険者は初報酬だからもっと喜ぶかと思ったけどコタローくんは普通ね」

「普通と言うか仕草はベテランのそれだぞ」

「何しても規格外な子ね、コタローくんは」


3人が三様の感想を述べてるとリリア後ろからミリッサが入ってきた

手には革袋を持っている

先ほど狐太郎が貰った革袋よりもふた周りほど大きいし重そうだ


リリアその革袋をミリッサから受け取ると金額の書いてある紙と一緒に受付に置く


「計算終わったわ、結構大きい濃い魔石だったからかなりの値段になったみたい」


言いながら金額の紙をディーノに渡す

受け取ったディーノは金額を見て一瞬フリーズし驚きの声をあげる


「おおー!!スチルスケルトンの3倍以上じゃねぇか」


紙には570万とある

純金貨5枚である


「パーティーで割るんだから両替も済ませといたわよ」

「ありがとうリリア」


ライカは未だテンション高いディーノはほっといて、用紙に受け取りのサインをしてリリアからお金が入った袋を受け取る


「ほら、ディーノ行くわよ。周りに迷惑よ。この後ポーション類も買いに行かなきゃいけないんだから」


ディーノの服を引っ張り連れ出そうとする

それに反応したのはリリアだった


「あら、ポーション切らしたの?」

「ええさっきのリードスケルトン戦で全部使っちゃったわ」

「それならポーション格安で買わない?」

「それは安いにこしたことないけど、ギルド販売も値段変わらないじゃない」

「ギルドからの販売じゃないわ。コタローくん調合できるらしいの。今からポーション作るから買わない?」

「「え?」」

『え?』


リリアの発言にライカもテンション上がってたディーノすら驚き狐太郎に視線を向ける

いきなりの展開に狐太郎も驚いている


「コタロー薬草の調合もできるのか?」

『えーと、一応・・』

「ほんと何もんなんだコタローは」

「それはそうと買う?」

「まぁ安く手に入るなら買ってもいいが、効果が低いとかじゃないだろうな?」


3人の視線が狐太郎に向く

一瞬気圧され後ずさりしそうになる


『えと、今まで作った奴は大丈夫でした』

「なら平気ね。さっそくギルドの部屋を使わせてもらいましょう」


立ち上がり狐太郎が収めた薬草の大半を持って奥へ行こうとするリリアにディーノが声をかける


「おい、その薬草は依頼されてたやつじゃないのかよ?」

「大丈夫よ、コタローくんに渡したほとんど依頼書は依頼主私だから」


一様に驚くディーノ達

受付に置いてある狐太郎が受けた依頼書を手に取り依頼主を見ると8割がリリアの名前だった


「うわ、えげつな・・」

「職権乱用じゃないの?」

「コタローくんも経験積めて、私も必要な薬草を手にできて、さらにライカ達も格安でポーション買えるんだから一石三鳥じゃない」

「そういう問題じゃないと思うが・・コタローは気づかなかったのか?」

『まったく気づきませんでした』


ディーノは盛大なため息をつき、ライカは呆れた顔でリリアを見る

当のリリアは涼しい顔で早く行きましょうと急かす


「コタロー、犬に噛まれたと思って諦めろ」


狐太郎の背中をたたくディーノは疲れた表情をしていた

先に行くリリアに続き3人も奥へ入っていく






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