第162話 帰還




「それは何だ、松茸か? 巨大な松茸が海に浮いているのか?」

 コン! とアカネが紙を筆で叩く。ゴロウは「分からん!」と頭に片手を置いた。

「松茸でないなら一体何だ!」


 隣からヒビカがアカネを呼ぶ。

「アカネ、とにかくそれにマナ達が乗っているんだな?」

 返事の代わりに丸を書くアカネ。ヒビカは「よし」と体をひるがえし、声を張り上げた。

「南十二度東!」


 ヒビカの指示を聞き、シンシアが舵を切る。アキツ最大の軍艦『アタケ』はヒビカ達の他、ゴロウや配下の眷属達を乗せ、マナ達を探していた。




「見えたよーーーっ!」

 アタケの中央、巨大な楼閣の屋根の上でヤーニンが叫んだ。船は一旦停止。指さす方を見ようとみな競って集まってくる。


 進行方向左の海の上に浮かぶ白いグライダー。その上に乗っているのは、間違いなくマナとコッパ、ジョウとリズだ。


「あぁっ! マナさぁーーーーん!!」

 パンクは見つけるなり大声で呼びながら手を振ったかと思うと、海に飛び込んだ。マナ達の方へ泳いでいく。それを見て「あーあ」とジョイス。

「興奮しちゃって。…………マナーーーーっ!」

 ジョイスも海に飛び込んだ。さらに、楼閣の上からヤーニンも飛び込む。


 そわそわしているシンシアの隣に、タマモの眷属コエンがやってきた。

「操舵は俺が代わってやるよ」

「ありがとう」と舵を渡し、シンシアも海に飛び込む。


 泳いでいくみんなをヒビカが甲板の上から眺めていると、片目のキンが肩を叩いた。

「お主も行っちゃれ」


 ヒビカは霊術で海面から足場を引き上げるとそれに乗り、パンクやジョイスに「ズルい!」と非難されながら、二人を追い越してマナ達の所へ一番乗りでやってきた。

「無事だったか、よかった。……モス・キャッスルは墜ちたのか?」


「はい」と笑顔でマナ。コッパは右手でグーサイン。ジョウとリズもコッパに続いてグーサインを掲げた。




 軍艦アタケの上で、ゴロウはマナ達が乗るグライダーとアカネの描いた松茸を見比べていた。


「どうしてあれがこうなるのだ……」



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