第95話 中央塔へ
クロウとイヨは、第三塔の街を歩き回っていた。マナ達を探しているが、見つからない。
「いないね。まだ戻ってないのかも。ねえイヨ、僕お腹すいたんだけど、お昼ご飯食べようよ」
「そうですね」と言いながら、イヨはぐるっとあたりを見渡し、店を探す。
「あのヌードル店とかどうですか?」
「うーん、お肉が食べたいな」
イヨは「分かりました」と木の幹に飛びついた。
「高いところから探しますから、ここで待っててください」
クロウが手を振り、イヨが登っていこうとした時、ドン! という爆発音とともに、グラグラと街が揺れた。落ちそうになりながらも木にしがみついたイヨは、クロウに向かって叫んだ。
「上から見てきます。そこから動かないでください!」
木のてっぺんから第三塔の壁に飛び移り、さらに上へと登っていく。
音の出所は第四塔だった。イヨが懐から取り出した望遠鏡を覗き込むと第四塔には、マイ・ザ=バイで見た巨大な飛行機が、頂上に引っかかるように停まっていた。第四塔の街からは煙が上がっている。
イヨはすぐに外壁からクロウの元へと飛び降りた。
「若様、第四塔で連合国陸軍が何かしてるみたいです。急いで街を離れましょう」
「え、うん……。でも」
「でも、何ですか?」ぐっ、と睨みながら言う。
「マナさん達、大丈夫かな……ちょっと探して」
「ダメです!! 若様のお優しいのはいい事ですが、ご自身の安全を第一に考えてください」
イヨはクロウの目の前にしゃがみ、肩をつかんで揺さぶった。
「若様は次期棟梁なんです! もしあなたが死んだら、アキツ国は路頭に迷ってしまいますよ!」
本気の気迫を見せたイヨに、クロウも素直にうなずいた。
「わ、分かったよ……」
*
「……デメバードです」
リズは覗いていた双眼鏡をヒビカに渡した。ヒビカもそれを第四塔へと向ける。
マナ達は中央塔を登っていた。塔の中腹ほどにさしかかろうとした時に爆発音が響いたため、何事かとバルコニーのような場所へ出てきたのだ。
「くっそーっ、オイラとした事が! マイ・ザ=バイで音を聴いてたはずなのに、どうして思い出せなかったんだ!」
マナの肩の上でコッパが頭を掻きむしった。
「無理もないよ。見たこともない新型のエンジンがついてる。装甲も分厚くなって砲台も増えて、大改修されてるね。だから気が付かなかったんだろ」
リズはそう言ってコッパの頭をなでた。ヒビカもマナの元へと歩いてきた。リズに双眼鏡を返し、マナに話しかける。
「マナ、どうする? あいつらはここを目指してくるかもしれないぞ。逃げるなら早い方がいい」
「うーん……」と考え込むマナ。答えを出せずにいる様子を見て、ヒビカが付け足した。
「陸軍は今はまだ第四塔で何か作戦を展開しているようだ。ここのジャングルは、エラスモやガンボールではまともに進めない。来るとしたら人間の足でだ。それなりの時間はある」
「じゃあ、上まで登ろう」
マナは決断し、歩き出した。全員それに続いていく。
いよいよ、ペンダントとランプを使って、ハウとの約束を果たせるかもしれない。まだジョウとリズに何も話していないが、陸軍がやって来た以上モタモタはしていられない。話すのは後回しにせざるを得ないだろう。
マナの心はどんどん追いつめられ、焦りも募っていった。
*
クロウとイヨは第三塔の街から地上に降りた。出口の門に、見慣れない獣のような形をした四本脚の乗り物が何台も停まっている。
「若様、下がってください。私が様子を見ます」
イヨはクロウを自分の後ろに押しやると、乗り物に近づいた。四本の脚は太く、複雑な関節がついている。このジャングルを移動するには最適だろう。機体には連合国陸軍のシンボルマークがついている。
キャノピーの窓から一人の軍人が顔を出していた。イヨと顔が合ったが、下からだと日光で顔がよく分からない。だが向こうはイヨの顔が見えたようで「あっ」と驚くような声を出した。
「あなたはアキツの……イヨさんでしたね」
乗り物から降りてきた軍人は、長い前髪で右目が隠れている若い男。
「あ、マイ・ザ=バイでマナさん達と一緒にいた……バンクさん! そういえば、マナさん達と一緒じゃなかったんですか?」
バンクはイヨににっこり笑って見せた。
「いろいろあってはぐれてしまったんですよ。ひょっとして、この街でマナさん達と会いました?」
「いえ、私達が会ったのはジャングルです。霊獣を探してたみたいで。多分、もう目的は達した頃だと思いますよ。私達爪痕を探してジャングルに入ったんですけどどこにあるかなって歩き回ってたら赤い木を見つけてここにあるかもって探してたんですよそこにマナさん達が来たんですけどそこが霊獣の住処だって言うんで」
「なるほど。ありがとうございます」
イヨの話を容赦なくぶった切り、バンクは乗ってきた兵器に再び飛び乗った。
「クロウ君もそばにいるんですよね? 第三塔は安全ですから、街から出ない方がいいですよ」
そう言い残し、バンクは乗り物を発進させた。木々をよけながら、ジャングルの中を凄まじい速度で進んでいく。
通信機のスイッチを入れ、連絡を入れる。
「ジェミル閣下、マナ達はすでに霊獣と会ったものと思われます。ご指示通り、残りの三将閣下とタクラ元帥閣下と共に、中央塔の出入り口四カ所から乗り込みます」
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