美味しいモンスター


この世界はどこかおかしい。


どこがおかしいだとか、どこが変だとか、説明するのは難しいのだけれど、どことなく感じるのだ。


「…やっぱ変だよなぁ。」


草原のど真ん中で焼いたモンスターの肉を草原のど真ん中でむしゃむしゃ食べながら呟く。


美味いな、これ。


「なにが変なんだよ?」


隣で職業:超能力者 Lv9.6のアキがこれまた肉を頬張りながらこちらを向いた。ウマ、という端的な感想まで付けて。


「…いや、普通に考えてさ。俺ら別に勇者御一行じゃねぇのになんで旅してんの?」


そういった所でとあることに気づいた。


「てか、あれ、マリとマナは?」

「ああ、あの双子ならこの肉もっと食いたいっていってモンスター探しに行ったけど?」

「…あいつら職業なんだったっけ。」

「双子ともに獣人だが?」

「…それ共食いじゃね?」

「また転職させるのか?」

「いや、そもそもおかしいだろ。なんでリーダーの俺が商人でパーティに明らかイロモノの職業しかいねぇんだよ。」

「お前がうちらを誘ったんじゃないか。」

「消去法だよ、クソが。」

「はいはい。……で?この世界の何が変なんだよ?」


アキの質問にはっと我に返る。


そう、この世界はおかしいのだ。

何がおかしいかって?

そりゃ…


「まず、何回魔王討伐してもそのすぐあとには討伐直前まで戻ってること。」

「ああ、あれな。」

「あと、依頼の種類が基本的に「美味しいモンスター討伐」か「美味しいモンスター飼育」か「美味しいモンスター捕獲」の三種類しかないこと。」

「まあ、実際美味しいしなぁ。」

「あと、美味しいモンスターの依頼しかないのに美味しいモンスターとエンカウントしない。」

「あれ案外レアリティ高いから」

「美味しいモンスターだけを倒して魔王倒すなんて、普通に考えたら無理だろ」

「出来たじゃん」

「それはこのゲームのプレイヤーが重度のゲーマーだったからだ!俺ら何回美味しいモンスター倒したと思ってるんだ!!そろそろ飽きるわ!」

「メタ発言おつ」


…とりあえず、あの双子が帰ってきてから今回の依頼、「美味しいモンスターを5体捕獲」という上級クエストをクリアしたいと思う。

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