僕と忘れられた廃墟と暗黒少女

赤キトーカ

第1話 忘れられた鉱山にて

岩手県。

僕と、友人の彼女が住む街からすぐ近くの、とある、寂れた町。


僕たちは、その町のある山のふもとにあるサービスエリアの外で、誰もいないなか、二人でカップラーメンを食べていた。


「寒いわ」

「そんなこと、いまに始まったことじゃない。それにほら、君のは、キムチ系のラーメンだろう?きっと体も温まる」

「もともと、私から案内して欲しいと言ったことですものね。贅沢は言えない……」

そう言って、続ける。

「でも……」

車の外で、ラーメンが温まる時間を待つ彼女が呟く。

「?」

「温まるなら、」

「温まるなら、?」

「貴方に温めてほしかったわ。」

僕は答える。

「また心にもないことを言いやがる」

「ふふ、そうね」

そして、3分が経った「辛」をすすりながら、彼女は言うのである。

「本当のことなんて、わからないものね」

「わかるよ。」

僕は答える。

「言葉にすれば、わかる。言葉にしなければ、わからない」

彼女は言う。

「……そうね。人に期待してはいけないわ」

そして続ける。

「でも、決して、嘘でもないのよ」

ぼくは豚骨ラーメンをすすりながら、彼女の虚言癖に付き合う。

僕は彼女が好きだと思う。

人を好きだとか、好きでないとか、それはとても曖昧なことのように思えるけれど、少なくとも、一緒に廃墟探索に行く中出し、好意を抱いているのは確かだし、きっと彼女もそうなのかもしれないとは思うけれど、期待はしていない。

きっと僕と彼女はそんな単純な仲ではないと思うし、その単純さが明らかになってしまうなら、とてもつまらないことになってしまう気もする。

だから僕は、彼女に、過剰な期待もしていない。

友達、と言う言葉がふさわしいのだと思う。


僕は、星光学院高校に通う17歳の高校生。

彼女は星光学院高校に通う16歳の高校生。


僕は父の車を盗み出し、「友達」である彼女、真言と共に廃墟巡りへと向かっている。


岩手県アスピートウェイ。


それが、僕たちが向かう伝説の大廃墟、松永鉱山。


ぼくはおぼつかない運転で、山道へ向かおうとしている。















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