魔女・飛行機・義手 ~さえない文化人類学者と女性パイロットのささやかな抵抗~

@ahab

プロローグ…… 世界の定義

 かつて、この世界には大きな戦争があった。

 国と国。

 思想と思想。

 民族と民族。

 多くの対消滅が繰り返され、今の雑多な世界を作っている――。




 物語は、内海に大きく突き出している半島で始まる。

 主人公は傾いた眼鏡をかけた、パッとしない青年(ギリギリで)。くすんだ暗灰色の髪は、乱雑に短く刈り取られている。

 

 せっかくの半島という条件だが、物語にはあまり関係がない。

 重要なのは、街から遠く離れた山間部ということ。

 はたして「ツギハギ」という言葉を、建築物の表現に使う事が正しいかどうかは疑問だが、ほったて小屋がとんでもない山奥にポツンと落っことされていると思ってほしい。

 静かな生活をお望みならもってこいの物件。ただし、一番近い店までは徒歩1日だ。住むには覚悟がいる。


 空には旅行者を詰み込んで国を超えていく飛行船。そのすぐ脇を、最新鋭の飛行機が飛んでいる。

 いや、もしF35の様な次世代型戦闘機を想像したのなら世界が違う。形はあくまで奇妙な形をしたレシプロ機だ。ただ、侮るなかれ――機体前方に取り付けられたプロペラは推進力を得るものではなく、電子を取り込むための物らしい。


 なにやら空想科学的な推進力で、クラシカルにも見える機体がぶっ飛んでいく。

 20世紀初頭を思わせる世界観にオーバーテクノロジーが山ほど盛り込まれているカオスな世界……。



 広がりきらない世界観だが、それでも物語は強引に始まる。



 

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