5連休

本を開こうとも思えないくらい退屈だ。降って湧いたような5連休だったが、5連休であると気がついたのは最終日を迎えた真夜中で、ああ、この4日間なにもしてないな、とぼんやり思った。居心地の悪い家にあまり居たくなくて、可能な限り外にいる時間が長くなるように生活していた私にとってこの5連休は異色だった。ずっと家にいて、眠って、眠って、文章を読んで、たまに思い出したようにピアノを弾いて、そしてまた眠った。異常なほど眠りこけていたからか、いつもは起きた瞬間に夢をいくつも思い出して疲れるのに、ひとつも思い出せず、夢を見た記憶そのものがパッと消えた感じがしていて、夢を見ない人はいつもこんなに爽やかに目が醒めるのかと驚く。

連休最終日、スーパーと図書館に行くために自転車に乗った。スーパーの駐輪場に自転車を忘れて歩いて帰ってきてしまった。また、二の舞。



ほぼ1週間ぶりに電車に乗る。お気に入りの曲を口ずさみながら駅構内を歩いていると、いろいろな光景が目に入って来るから驚いた。道をゆずりあってステップを踏んでしまったおばさんとお兄さんがすみません、と笑い合ってすれ違っていく。駅員さんに道を教えてもらい、ありがとうと笑顔の家族……。小学生の作文や道徳の教科書にそのまま出てきそうな、ありがちすぎるそんな光景。先週だって、先々週だって、その前だってずっと同じ道を通っていたはずなのに、今まで全然目に入ってこなかった光景。変わったとすれば私。



苦手な家で眠りこけるだけでこんなに変わるのか。へえ。そりゃすごい。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る