本編(三日目)

三日目 1/5

「おはよ、お兄ちゃん」

「おはよう。いつもの『兄卑』はどうした?」

「やめた」

「おいおい……。お前と言えば『兄卑』だろ、シュ……睦月」

「ううん。本当にやめたの」

「そうかよ……。深くは触れないけど」

「それよりも、お兄ちゃん」

「何だ?」

「朝食が終わったら、百円ショップに一緒に行って欲しいな」

「いいぜ。近くにあるから、案内してやる(おいおい……本当にどうした? 変だぞ、お前)」


 朝食と支度を終え、午前十時になった。

「歩いて行ける距離だから歩くが……大丈夫、だよな?」

「うん! お兄ちゃん!」

「なら、行くぜ(睦月……いや、シュシュ。やっぱり、どこかおかしいぜ、お前)」


 五分後。

「着いたぞ。ここの三階が百均だ」

「日本の百円ショップ、憧れてたのよ! 嬉しいわ!」


 更に十分後。

「よくこれだけ買い込んだな……」

「日本でしか手に入らないからだよ、お兄ちゃん! それより、図書館行きたいわ!」

「はいはい……。荷物預かっててやっからよ」


 そこから十分後。

「ああ……ヴァレンティアの図書館とはまた違うわね」

「そうか? 変わらない気もするが」

「しばらく読ませて!」

「いいけど、図書館内ではちゃんと静かにしろよ、な?」

「当然でしょ、お兄ちゃん!」

「あと昨日のようなことがあったら嫌だから、ついていくぞ。いいな?」

「うん! お願い!」


 三十分後。

「うーん……。あまり興味をそそられる本は無かったわね」

「まあ地方の図書館だからな。そこそこ立派だけど、限界もあるし」

「お兄ちゃん!」

「何だ?」

「図書館の次は、成田山新勝寺行きたいな……」

「いいぜ。ただ……」

 龍野が何かを言おうとする。

 だが、それを遮るかのようにシュシュのお腹が鳴った。

「燃費悪いな、お前」

「しょうがないわよ、体質だもの!」

「とにかく飯が先だ。それからでいいな?」

「うん!」


 昼食後。

 シュシュは皐月に、お願いに行っていた。

「ねえ、皐月ちゃん」

「何、睦月お姉ちゃん?」

「皐月ちゃんの自転車を貸してほしいな」

「いいよ。どこ行くの?」

「成田山新勝寺」

「へえ、面白そう。いってらっしゃい」

「やったー! ありがとね、皐月ちゃん!」

 シュシュを見送る皐月。

 シュシュが完全に見えなくなってから、皐月はスマホの画面をのぞき込んだ。

「(やっぱり、シュシュちゃんおかしくなってる……。どうしよ百合華お姉ちゃん、私にはどうしようもないよ……)」

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