二日目 4/5

 夕食を終えた須王一家は、テレビの正面を奪い合っていた。無論、龍範と紗耶香は奪い合いに参加していない。

 龍野もテレビを見る気にはならなかった。買った本を部屋で眺めていたが、やがてページを閉じた。

「よし、風呂入るか!」

 真っ先に脱衣所に向かい、着替えとバスタオルを準備して風呂に入った。


 皐月もテレビ正面の奪い合いには参加していなかった。代わりに、スマホの画面を眺めていた。

「皐月ちゃんへ シュシュが龍野君と仲良くしてるか、見届けてください。 ヴァイスより」と、画面に映されていた。


「ああ、今日は疲れた」

 入浴中、一人悦に浸る龍野。

「二人目の妹か……ハハ、悪くないな!」

「兄卑? 入ってるの?」

「ああ、睦月か! 入ってるぜ」

 すると、脱衣所から衣擦れの音が響いた。

「おい、睦月?」

「よしっ!」

 睦月は意にも介さない。

「どうしたんだよ!」

 龍野が痺れを切らす。


 すると、睦月が風呂場に入ってきた。


「ちょ!? おま、何考えてやがんだ!? おい、悪いことは言わねえからさっさと出ろ!」

「やだ。その為に水着を入れたのよ」

「バカ、襲っちまうぞ!」

「別に? どうだっていいわ。それに、兄卑はお姉様のようなグラマラスな体型が好みじゃなかったの?」

「あのな、年頃の男ってのは、異性の裸を見たら……大体どぎまぎするんだよ!(ああクソ! 二年経って、すっかり色っぽくなりやがって! このバカ妹、本当に襲っちまうぞ!? つか早く逃げろよ!)」

 龍野が真っ先に視線を向けたのは、膨らんだ胸である。二年前とはすっかり違う、大人に一歩近づいた胸だ。

 ヴァイスと比べれば雲泥の差だが、それでもシュシュの胸は確実に成長している。もし手や腕を押し付ければ、確かな弾力をもって返されるくらいには。

「うーん……やっぱり、裸で入ればよかったかしら……洗いづらいわ」

「(いやそれよりも先にすべきことがあるだろ!?)」

 龍野は最早、睦月を見ることは出来なかった。ただ、風呂板を上げ、睦月が入るスペースを確保することは全うした。

 睦月が体を洗い終え、強引に湯船に浸かってきた。龍野は素早く背を向ける。

「ねえ、兄卑?」

 睦月が構わず胸を押し付けてくる。水着越しとはいえ、確かな弾力を龍野は感じ取る。

「な、なななな、何だ一体」

「へえ……。兄卑ってば、お姉様と触れ合っている内に女性への免疫が付いたかと思えば……そうでもなかったのね」

「あのな、ヴァイスとお前は別だ! ああもう何で、そんな大胆になる!?」


「好きだから、と言えば?」


「!? 嘘つけ、兄卑兄卑と呼ぶ癖に!」

「そんな……!」

「いやごめん、言い過ぎた。けど、そういきなり言われても、信じらんねえんだよこっちは!」

「……。もういいっ!」

「おい待て! 話はまだ……」

 睦月は龍野の制止も聞かず、風呂を上がった。

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