魔王の虚

@kakuyokuyokuyomu

第1話 誕生そして


......言葉に発せない恒久的な鈍い、精神的な痛みが全身にまとわりつく。

...そうだ。 私は死んだような死ななかったような......そして、また来てしまったのか、此処に。


辺りは空間のない黒一色が支配している。

しかし、私はその事実を事実として認識出来ている。

それはつまり、私自身がこの黒に染まっている事を指す。


輪廻転生...そう。 この空間は自分自身で、しかし依然として息苦しい自分がいて、いかなる時にもその魂は生きるように、自動的に導くように刻まれている。

これは私自身がいついかなる時でも生きもがいて見せた証拠に他ならない。




......私の魂と肉体は、絶対悪を帯びている。

悲嘆も孤独も無くなった、そうただの悪の塊。 それが私。



日常でそれを秘匿し生きる事を許された、魂の征服者、及び克服者。


定義されない生き方をする。 それが私の全貌。



■□



...正直、ここまで来たのに意味は無かった。

強いていうなら、環境がそうさせた。 そうせざるを得なかった理由があるし、そうしていなくても死んでいたけれど。


この狂おしくも優しい世界で、今度の私はどう生きていこうか。

小さい頃思っていた店の棚に置いてあるもの全部買いも良いかもしれない。


今度は騎士学校のヒーローとして活躍しても良いかもしれない。


一目惚れして後生まで引いたあの娘に告白でもしたら良いのだろうか?


ギャフンと言わせたあいつらとまた仲良くなっていたら良かったんだろうか?


追いやった自分自身にももっと気をかけてあげるべきだったんだろうか?


親友に素直に話すべきだったのだろうか?


家臣にはどう言った態度を取れば良かったんだろうか...


あの時の人の子は、情緒不安定な私をどう思っていたのだろう...


しかし、それは既に自然な身に時間を委ねた私に起きた出来事だ。 変えることはしないし、しても虚しさしか残らないだろう。

都合の良い改変ほど、中身の無いものは無い。 出来たとして、それは本心であって虚構に過ぎない。

あった事は無かったことになど出来ないのだから、それはごく当たり前のことと言える。


ふと暗闇の中に、何かの電波が届く。

感覚として掴んでそちらの方へ目をやると、何やら自分と言う存在を確かめにきているようだ。


ふむ、誰かが呼んでいるようだ。 たまには気まぐれに、行ってみるのも一興か。




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