あるエルフの追憶

@HAO

プロローグ

「ねえ、おじちゃん」

 私は、彼の大きな顔を見上げて言った。

「おじちゃんはなんで毛むくじゃらなの?」


「気付いたらこうなっていたのさ」

 切り株に腰掛けた彼は、膝の上で手を組みながら答えた。


「おじちゃんのお鼻はどうして大きいの?」


「それも、いつの間にかこうなっていたんだ」

彼は組んでいた手を胸の前に突き出し、何事か唱えた。その瞬間、彼の目の前にあった萎れた花が光を放ち出し、たちまち瑞々しく開花した。


「わあ、すごい!どうやったの?」

私はそれを見て大はしゃぎしながら尋ねた。


「これはエルフの一族に代々伝わる再生のおまじないさ。昔は動物にでも効いたと言われてるね」


「ねえ、わたしにも教えてよ!」


「いいとも。おじちゃんは色んなおまじないを知ってるんだ。君に全部教えてあげよう」


「おじちゃんはエルフじゃないのに、どうしてエルフしか知らないおまじないをたくさん知ってるの?」


「おじちゃんは昔、エルフだったからさ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る