第25話 評論家

2017年11月にはビットコインの価格は100万円を突破した。


12月になってからも仮想通貨は好調だ。


そんな中、ユーチューブや動画配信サイトでは仮想通貨・ビットコインの討論が盛んになっていた。


ミナトもその討論を真剣なまなざしで見ていた。よく話を理解しながら聞いていた。だが、しかし、そういった評論家、専門家たちが言うビットコインに対する見解があまりにも的外れで否定的なことにガッカリした。


「ビットコインを買うのは自国の紙幣価値が下がっているためにドルに換金したいから仲介する便利なものとして一時的にビットコインを使っている」とかね・・・。


確かに自国の紙幣価値がなくなったアルゼンチンのような国やブラジル、社会主義の国である中国やロシアでは国の規制が厳しいので換金や投資に対する上限が定められているだろう。


その国の法律の抜け穴を通るためにビットコインを仲介する通貨として一時的に使っているだけだ・・・という意見は果たしてどうだろうか?


この意見、この考え方にミナトは懐疑的な気持ちになった。もはや不信感しかない。


テレビで話す二流芸能人、タレントの意見はどこか的外れで”一部を見てすべてを判断している”としか受け取れなかった。


ビットコインはバブルだ、投資するのは危ないなど、そういったトピックスもある。しかし、ビットコインはまだまだこれから機能が向上して、社会に浸透していくはずだとミナトは予想している。


中学1年生のミナトからすれば自分よりも学歴があり知識がある大人たちがいう言葉を信じたい気持ちはあったが自分の考えを信用して自信を持つことにした。


きっとその人たちは”仮想通貨やビットコインのこと”を深く知らないだけなんだ・・・。


ミナトが心の中で思ったこと、心の深い部分で感じたことは当たっている。


テレビに出ている評論家、専門家などアテにならない。


スマートフォンが世に出現したときに「誰も買わない。使わない」と言っていた奴らと同じである。


テレビの放送には、スポンサー企業が多く契約して観ていることもあり、そういったテレビに登場する評論家や専門家は国民に対して正しい意見を言っているのではなく、スポンサー企業の顔色をうかがって、スポンサー企業にとって都合のいいことを吹聴しているだけなのである。


デタラメなことをいう。情報操作をする。スポンサー企業に気に入られようとする。二流芸能人、タレントとはしょせんそんなものである。


ミナトは次第にユーチューブの討論とテレビを見なくなっていった。


彼は考えていた。将来はヒナちゃんを連れて海外に移住するべきだと・・・。


法定通貨を信用しきっている人たちのほうが危ない・・・と。


事実は逆である。借金だらけになり、それでもさらに増税によって多く税金を回収して大手企業や海外の国にお金をばらまく日本の在り方のほうがよっぽど危ういとミナトは思っていた。


どうせならゆったり暮らせる海外の国がいい。治安が良い国で今の日本円の紙幣価値で豪邸が立てられるならそこに住もう・・・。


将来、僕らが大人になり老後を迎えるころには年金制度や健康保険料、生活保護などの保証や手当がなくなり一元化されているはずだ。


そのとき全国民に対して一律3万円~5万円を支給するだけの国に成り下がっているのではないだろうか?


ミナトの予想のほうが遥かにジャーナリストである。


中学1年生にして、評論家や専門家の意見や考えを超えてしまっていた。


なぜなら彼こそがクリプトカレンシーボーイと噂される少年なのだから・・・。

小学校で伝説となった人物であり、誰も彼がその伝説の人であることに気づいていないが小学生のときから仮想通貨の情報サイトや経済に関するニュースを読み、世界の経済状況や社会情勢を把握して、日本の未来までも的確に予測していたのだった。


そういった討論を見た後は、ヒナちゃんのお父さんやタケル君のお父さん、自分の両親と意見を言って話し合い、持論を展開して、大人たちをあっと言わせるミナトであった。


教師をしているヒナちゃんのお父さんもミナトの意見を聞いて「ぐぅの音」も出ないほどうなっていた。


ヒナちゃんのお父さん「すごいな・・・そんな切り口があったか・・・。確かに言われてみればそうだ。この国の将来は不安がたくさんある。それに仮想通貨、ビットコインのバブルと言っている連中はまったく仮想通貨のことをわかっていない」


教師すらもうならせるミナトはもはや大人には頼れないと思った。


投資仲間との意見交換では”ほぼ同じ意見”であったり”同じ方向性”でミナトの考えに同意してくれる人が多かった。


ミナトの予想・予測は確信へと変わった。


今、米国の現状は仮想通貨に人気があり、自国の紙幣価値が下がったり税金が回らなくなって州への分配金が払えずに公共機関がマヒすることが度々起きていた。


税収による地方への予算がまわすことができないと判断されたとき、前もって「仮想通貨を流通させなさい」と”指示”されることがある。


ドルが滞り、公共機関がマヒするのならデジタル通貨であり、通貨以上の価値を持つビットコインを決済に流通させることによって一時的なパニックを回避することができるようだ。


仮想通貨のメリットはその流動速度にもある。


どこかでお金が止まるのではなく絶えず流れ続ける血液のようだ。


その流動速度が経済を活性化させ、自国の紙幣を使わなくても社会をまわすことができる魔法のような存在になっていた。


米国では仮想通貨・ビットコイン決済はなくてはならないものへと変化しつつある。


年金制度の廃止や事実上の破綻のため、仮想通貨・ビットコインやイーサリアムによる積み立て年金制度を導入する企業まであるという。


今の日本の未来、5~10年後を見ているようだとミナトは感じた。


たとえビットコインがバブルであってもその崩壊はずーっと先だろう・・・という予想である。


いずれイーサリアムやリスク、モネロ、ダッシュ、ライトコインへ価値は分散されていくこともわかっている。しかし、それは”今”ではない。


たとえばエジソンが考えた豆電球を使っていた時代、将来、これからは蛍光灯になるとわかっていても”今”ではない。


蛍光灯を使っている時代に将来はLEDライトになるといっても”今”ではない。そして、さらに消費電力が低くて明るくて場所を取らない有機ELライトになるといっても”今”ではないのだ。


それが流通するまでには5~10年かかる。

開発とライン作業による流通の実現には時差が生じる。


ミナトはこのタイミングというやつを非常に慎重に扱うべき優先事項と捉えていた。


だから、自信を持ってビットコインを買ったりマイニングしてコインを増やしている。


テレビに出てスポンサー企業をアテにする”人生の敗者たち”の意見に惑わされている場合ではない。


物事の本質を見て、自分で考え、自分で判断する必要がある。


その判断するときにテレビや評論家・専門家の意見はノイズでしかないのだ。


まるで雑音。無意味。ただの音であり、それが何らかの未来を示すことはない。


いつも以上に繊細に研ぎ澄まされた心で深く考えて年末を迎えたミナトであった。


それでも”まだ自分は中学生だ”という甘さもあり、日本が危うくなるのは”今”ではない、という安心感も彼にはあった。


来年は仮想通貨のさらなる飛躍を願うミナトであった。


これが2017年の年末である。

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