第23話 キャバ嬢

ミナトの投資生活は順調である。AI搭載のパソコンを使ってシステムトレードをスタートさせて以来、月5万円ほどの利益を生んでくれる。


その出た利益を使うのではなく、さらにマイニング事業を手掛ける海外の会社に投資しているのだ。


ミナトの持論はこうである。もしシステムトレードや自分で現物トレードして利益が出たとしても”すぐに使わないのなら投資に回す”という考えに至った。


それによってどんどん利益が膨らんでいくことに気づいていた。


投資で大切なのは学歴などではなく、いかに時間を有効利用するかが焦点となっている。


時間×投資=資産家


この図式を中学1年生にして意識したのだ。まさに彼こそがクリプトカレンシーボーイである。


長年投資をしていても気づかない人間もいる。それは才能や知力の差なのかもしれない。あるいは本能・・・。


12月を目前にしてユメリちゃんから呼び出された。冬のジャケットが欲しいらしい。

11月23日でクリスマスまで1ヶ月あるが先にプレゼントを買ってあげよう、それぐらいはいいだろう・・・とミナトは思った。


ユメリちゃんと一緒にショッピングモールに行って買い物をした。

冬のジャケットはいろんな種類があって目移りする。


今、ユメリちゃんが着ている服でも十分可愛いのに・・・と思ったが、やはり女の子は流行りの服が欲しいらしい。


ユメリちゃん「ねぇミナト君、どっちがいい?」

ミナト「いやぁどっちがいいだろうね。他にも色あるの?」


ユメリちゃん「あるよ。全部で6色ある」


ライトグレー、チャコールグレー、モカピンク、キャメル、ベージュ、紺色があった。

フードファー付き5WAYコートで3万円ほどする。


ミナト「そんなに色の種類があるんだね。僕だったらキャメルかな」

ユメリちゃん「その色もいいと思ったのよねぇ。でも、同じ色のコート持ってるんだ」


ミナト「形が違うからいいんじゃないの?そのコートもファー付いてる?」

ユメリちゃん「ファーは付いてないし、こんな最近のデザインじゃない」


ミナト「じゃあ、こっちにしなよ」

ユメリちゃん「けっこうリードするじゃない♪ミナトくん」


ユメリちゃんはフードファー付き5WAYコートのキャメルの色を買った。買ったといっても僕がお金を出してるんだけどね・・・。


店を出るとまた一緒にコーヒーチェーン店でカフェを飲んだ。

僕はカフェモカでユメリちゃんはカプチーノを頼んだ。

チョコレートケーキもおいしい。ユメリちゃんはモンブランを食べている。


ユメリちゃん「ミナト君、この後、なんか予定あるの?」

ミナト「とくにないよ。でも、帰ったらいろいろやるべきことはあるけど・・・・」


ユメリちゃん「じゃあちょっとだけ一緒に来てくれない?お姉ちゃんに頼まれて香水届けに行かないとダメなの」

ミナト「ああ、いいよ。お姉ちゃん近くにいるの?」


ユメリちゃん「うん、そんなに遠くない。二駅東に行ったところのキャバクラなんだけどね」

ミナト「へっ!?店に入るの?」


ユメリちゃん「店には入るけど私たちは裏に入れるから大丈夫」

ミナト「ああ、そういうことね」


ミナトはユメリちゃんと一緒にお姉ちゃんのところへ向かった。

ユメリちゃんはさっき買ったコートをさっそく着て、どこか嬉しそうだった。


電車を降りて繁華街に入って行った。


ミナトはこういった繁華街の雰囲気は初めてだった。なんか大人の世界って感じがする・・・。


ユメリちゃんはこういう場所に慣れている感じがした。


ミナト「ユメリちゃんたまにこういうところ来るの?」

ユメリちゃん「ママとお姉ちゃんのお使いでたまに来るよ」


なるほど・・・・。なんか似合うっていうか・・・様になってるって感じがする。


ミナトはユメリちゃんと一緒に姉のいるキャバクラの店に入った。


ミナト「うわーなんかきらびやかだね。どういう店なのかよくわからないけど・・・」

ユメリちゃん「ただ派手なだけでしょ。(笑)じゃあ、裏に入ろっか」


夕方でまだ店がオープンする前だったから、ひと気はない。


裏の待合室・化粧室に入るとユメリちゃんのお姉ちゃんともう一人女性がいた。


ミナトはかなり緊張した。ユメリちゃんのお姉ちゃんだからキレイだとは思っていたが想像を遥かに超える美人だった。


お姉ちゃんともう一人の人は本当に美人でドレスみたいな衣装を着ているのも印象的だった。


ユメリちゃん「お姉ちゃん、香水持ってきたよ」

ユメリちゃんの姉「ああ、ユメリ。ありがとう♪そっちの男の子は彼氏?」


ミナト「い・・・いや、彼氏じゃないです。友達です」


ユメリちゃん「そう、今は友達なんだけどね。私はミナト君のこと好きなの」


ミナト「・・・・・えっ!?」

今、なんて言ったんだろ・・・。聞こえたけどほんとに?


ユメリちゃんの姉「なかなか頭の良さそうな子じゃない。そこの君、よかったら私の妹と仲良くしてあ・げ・て・ね♪」


ミナト「あ・・・ああ、ハイ、どーも・・・・」

こういうときなんて答えていいか、わからないな・・・。

とにかく緊張する・・・。


ユメリちゃんのお姉ちゃんともう一人の人は楽しそうに仕事の話をしていた。

あの客はいまいちだったとか同伴がどうだったとか・・・。


僕にはいまいち意味がわからなかったがキャバ嬢っていうのも大変な職業のようだ。


お姉ちゃんに香水を届けて、しばらく裏の待合室・化粧室でユメリちゃんと僕は二人掛けのソファに座って話をしていた。


今日の服を買った店の話とか前に行った買い物の話とか・・・あとは恋愛の話も少しだけした。


二人掛けに座っているとユメリちゃんが僕の腕にしがみつくように腕を組んできた。

顔も近すぎて緊張した。


たまにはこういう休日の過ごし方も悪くない・・・。ただすごく緊張するけど・・・。


キャバクラの店で働いている女性が裏の待合室・化粧室に集まりだしたので僕らは帰ることにした。


ユメリちゃんの姉「ちょっと君、こっち来て」

僕のことを呼んでいるようだ・・・。


ミナト「ハイ、なんですか?」

ユメリちゃんの姉「じゃあ3人で一緒に写メ撮ろっか♪」


僕はお姉ちゃんとユメリちゃんの間に挟まれて携帯で写メを撮ってもらった。

あとでユメリちゃんが僕のラインに画像を送ってくれるらしい。


色気がありすぎるお姉ちゃんと妹に挟まれて天国にいるような気持ちになった。


なんていうか・・・こう、体がフワフワとした感覚になった。


ユメリちゃん「今日はありがとうね♪いろいろ楽しかった」

最高の笑顔だった。


最初に出会ったときはもっと怖い印象だったのに・・・。


ミナト「クリスマスまでに冬服の買い物できてよかったね。僕も楽しかったよ」

ユメリちゃん「じゃあ付き合ってくれるの?」


ミナトはかなり焦った。


ミナト「なんでそうなるの?」(苦笑)

ユメリちゃん「ハハッ、冗談よ」


ユメリちゃん「私もクリスマスまでに彼氏つくらないとねー。寂しい」

ミナト「選びたい放題じゃん。ユメリちゃんが告白して断る奴なんていないよ」


ユメリちゃんは僕のほうを指さして「断る奴はいる」と言った。


ああ、たしかに・・・。(苦笑)


ミナト「僕は小学生のときからヒナちゃんと付き合ってるからムリだよ。もし彼女がいなかったら僕もユメリちゃんと付き合ってたさ」


ユメリちゃんは嬉しそうに笑った。


家に帰ってからユメリちゃんからラインで、今日3人でキャバクラの裏の待合室・化粧室で撮った画像を送ってきてくれた。


ミナトは思った。写メで見てもこの姉妹は別格だなぁと・・・。


かなりの美人姉妹だ。ミナトが今まで見たこともないような美人な姉妹に挟まれて写メを撮ってもらったのがすごく嬉しかった。


まさか僕の人生でこんなことがあるなんて・・・。(嬉)


人生の転機やチャンスはいつどこにあるか、わからない。

でも、ミナトはヒナちゃんに一途であった。

彼は意外と強い精神の持ち主なのだ。


ミナトがユメリちゃんに心を許しているのは”根は良い子”というのがわかっているからだ。


ただ恋愛ではなく、友達として大切にしたいという気持ちがあった。

そういう優しさにユメリちゃんも自然に惹かれてしまったのかもしれない・・・。

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