第33話

  ☯


 ――自身の中にある青龍魂珠を覚醒させた青葉ちゃん。


 これで正式な東方を守護する五方の巫女として認められることになる。


「青葉ちゃん、やったね!」


「……うん!」


「これからが、大変だよ。魂装師のために青龍魂珠を大量に生成しなくてはいけないから」


「でも、がんばるよ。そのための魂生師だから」


「じゃあ、もう、俺が助ける必要は、ないね」


「……えっ?」


「青葉ちゃんは、きちんと自立できる人間になれた。俺の手助けは、ここまでだ」


「……どういう、意味?」


「そのままの意味だよ」


 俺は想いを告げる。


「青葉ちゃんは自分の力をこの世界に証明した。あとは青葉ちゃんと青花ちゃんのつながりの術式を解除するだけ。…………術式解除」


 青葉ちゃんと青花ちゃんの術式によるつながりを解除した。


「これで、もう大丈夫だ」


「ちょっと待って!」


 青葉ちゃんは、戸惑いの表情を見せる。


「えっ? 蛭子くんは、ずっと、わたしのそばにいてくれるんじゃないの!?」


「いや、俺には、俺の使命があるから」


「使命……?」


「この日本を守り救うってこと」


「守り、救う?」


「そのためには、証明しなければいけない。俺が悪神でないという証明を」


「蛭子くんは悪神じゃないよ! わたしは、ちゃんとわかっているよ!」


「でも、俺は、まだ世界に証明していない。青葉ちゃんの試練は、これからもあるかもしれない。けど、俺は、まだ、その試練を突破していない。審議は、これからなんだ」


「…………そう、なんだ」


「覚悟を決めるよ」


 すう……と、息を吸って……はあ……と、息を吐く。


「俺の名は皆神蛭子っ! 三百年前、日本から追放されたヒルコと呼ばれる神を覚えているかっ! 俺は、この地に帰ってきたぞっ! 日本を守るためにっ! 聞いているかっ! 広輪京を守護する神々よっ!」


 闘技場で声を大きく響かせる。


 その声は伝わっているはず。


 俺を追放した、あの神々を――。


「俺も戦うっ! 広輪京をっ! この日本をっ! この世界を守り救うためにっ! だからっ! 俺も証明したいっ! 俺の力をっ!」


「それができると断言してもいいのかい?」


 俺の目の前に、太陽のように輝く少女が現れる。


「我の名を知っているか? 忌み子のヒルコよ。そして我の兄さま」


「ああ、知っている。ヒルメ……現時点の日本の最高神……アマテラス」


「ヒルコ兄さまには試練を与える。五体の神との戦いをしてもらう」


「五体の神?」


「木、火、土、金、水の神のことさ。それらの神と戦い、勝利する。これがヒルコ兄さまが悪神としての穢れを完全に祓った証拠になるだろう。まずは木の神と戦ってもらおう」

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