義神のヒルコ

三浦るぴん

第1話

  ☯


 神現暦しんげんれき一年。


 世界は崩壊した。


 世界中に存在する火山の噴火。


 火山の噴火による火山の亀裂。


 火山の亀裂に伴う地震の発生。


 地震の発生による地盤の崩壊。


 地盤の崩壊に伴う津波の災害。


 世界中の存在する都市は災害によって生物の住める場所ではなくなった。


 人々は村落へと向かい、新たな都市をつくろうとしていた。


 世界中に現れた神々の指示によって。


 ――同年。


 神々は不気味な物体を発見する。


 その物体は神であった。


 神ではあるが、邪悪な気を放ち、足が立たず、小さく、不気味であるため、神々は、その神を葦舟あしぶねに乗せて、海へと流した。


 そのとき、その神――いや、その神に転生したたましいは心の中で思った。


 絶対に強くなって、この地へ戻ってくる……と。


  ☯


 ――ここは、どこだ?


 俺の意識は冷水によって覚まされた。


 ――寒い! 早く、ここから……あれ?


 動かない。身体が、動かないのだ。今まで動かしていた部位が反応しない。


 ――なんで、なんだ? どうして、だ? 俺は、どうなってしまったんだ?


 記憶がない。なぜ、この状況になっているのか? 理解できない。


 ――そもそも、どうして俺は冷水に浸かっているのだろう……?


 この冷水は、いったい……なんだかヌルヌルする。


 ……どうしてヌルヌルしているのだろうか?


 とてつもなくエロいプレイをしているわけでもないのに……そもそも経験ないけどな、俺。


 だったら身近なところで考えてみよう……。


 ……これは、ただの冷水にしてはありふれているはずだ。


 つまり、海!


 これが一番、身近な冷水だ。


 要は海岸なんだ、ここは……おそらくな。


 しかし……どうやったら、この身体は動けるのだろう?


 四肢の感覚をまったく感じられない。


 ――ん? 俺の腕と足は……――。


 ――もしかして、ない……のか?


 どうやら、そうみたいだ。


 今の俺の身体には腕と足が存在しないらしい。


 理由は、わからないが……もともと発達できなかったようだ。


 どうすれば、ここを移動できるのだろう……?


 ――……人?


 人……のような気配がする。


 本当に人だといいのだけど……いや、人でも優しい人じゃないとダメだ。


 なにをされるのか、わからないのだから――。


「――心を感じる。なにを思っているのか……こんな身体で、かわいそうに」


 かわいそう? 俺が?


「ああ、誰かに捨てられたのだろうな。いや……誰かというには、多すぎる。八百万の国からやってきた、というところか」


 八百万? 国?


「極東に位置する日本ひのもとという国からだろう……ここではイアポニアと呼ばれているが……まあ、いい」


 彼には俺と同じ寂しさを感じた。


「僕と同類だ。介抱しよう」

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