輪廻
泡沫 空
第1部~幻と恋~
第1話 幻
――お前は永遠に生き、
そして、その者を永遠に愛し続ける。
これが、お前への呪いだ――
あれから何年経っただろう。何度あいつが死ぬのを見てきただろう。そのたびに、おれの心は引き裂かれ、気が狂うのではないかと思うくらい、悲しみ、苦しみ、悶えた。いや、いっそ、気が狂ってしまったほうが楽なのかもしれない。
何度、あいつの死を見ても、おれの心は、あいつの死に慣れることはない。
★ ★ ★ ★ ★ ★
おれは、葛城幻(かつらぎげん)。
今は、新潟県立新発田南高等学校普通科の3年生をしている。髪はボサボサで、目が隠れるように前髪を垂らしている。服装も、できるだけ野暮ったく見せる。背は高いほうなのだが、できるだけ低く、小さく見せようと、前屈みで、猫背っぽくする。どちらかといえば、根暗な、オタクっぽい雰囲気を漂わせるのだ。ひ弱な、いじめられっ子タイプでもいい。
クラスでも、静かで、目立たないように振る舞った。孤立することもいとわなかった。クラス中の女子が、おれを煙たがった。「葛城幻って、何考えてるかわかんなくて、気持ちわるーい」と。これでいい、とおれは、一人で納得する。おれは、そんな葛城幻を演じている。
おれには、わかっていた。今日、あいつがここに来ることを。おれの心臓が、そう告げている。
★ ★ ★ ★ ★ ★
その日、新年度の始業式の日、教室で、担任教師が言った。
「今日から、高校生活最後の年度が始まります。みんなは、いよいよ受験生です。就職を希望している人も何人かはいますが、みんな、気を引き締めて、勉強に励むように!
それと・・・・、突然ではありますが、ご家庭の事情で東京から引っ越して来て、今日からみんなのクラスメイトになる生徒が一人います。時期が時期だけに、通常では考えられないのですが、前の学校でも成績が抜群だったので、例外的に、入学が認められました。1年だけですが、みんな仲良くしてください。よろしくお願いね」
担任がそう言って、あいつを教室に招き入れた。クラス中の男どもが色めき立った。みんな口を開いたまま、ぼーっとしている。女子たちは、そんな男たちを見て、「まったくもー!」と嘆いていた。
あいつは、それくらい美しかった。いや、美しいのだ。
「水無月恋(みなづきれん)です。1年間、よろしくお願いいたします」
★ ★ ★ ★ ★ ★
超絶美人転校生のニュースは、その日のうちに学校中に広まり、休み時間になるたびに、学年中の男どもが、恋を見に来た。男どもだけではない、女子たちまでも。
恋は、ただ頭がよく、美人というだけではない。気立ても良いのだ。飾らず、気さくで、だれに対してもやさしい。だから、クラスの女子たちからも、あっというまに受け入れられて・・・・、恋は、男子からも、女子からも、憧れの的となった。
恋の周りには、いつもたくさんの女子たちがいた。男どもは、目をハートにして、そんな光景を遠巻きに眺めている。「こいつら、受験勉強大丈夫なのかよ?」と思ってしまう。でも、かわいそうと言えば、かわいそうかも。高3の大事な時期に、恋が転入してきたのだから・・・・。少し同情する。
もちろん、恋をおもしろく思わない女子たちもいたが・・・・。まあ、そんなのは、いつの時代にもいた。
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