嘘つきの・私の・先輩が・いうことには

Han Lu

ワラムクルゥ 01

カグヤイサミ(高1・冬) overture

#1 鍵の形は 

 誰かと誰かが出会う。

 その誰かと誰かが男と女なら――別に男同士でも女同士でもいいけれどここは世の中の大勢を占めている組み合わせを採用させてもらうことにして――もしかしたら、いつか二人は恋に落ちるかもしれない。

 ボーイ・ミーツ・ガール。

 やがて二人は惹かれ合い、恋人同士になる。

 それって、何だろう。

 どういう条件下でその感情は発動するんだろう。

 この前授業で習った酸化還元の化学式のように、何か決まったパターンや法則があったりするんだろうか。

 恋をしたことのない私には想像することしかできない。

 心臓のあたりにそっと右手を置いて、私は想像する。

 そこには目に見えない鍵穴のようなものがあいている。

 誰かがその鍵穴にぴたりと納まる鍵を持っている。

 私の鍵の形。

 それはどんな形をしていて、誰がその鍵を持っているのだろう。 

 やれやれ。

 らしくないな。

 そんなことを考えながら、その日私はカラタチ町商店街の入り口に立っていた。

 先輩に――恋をしたことのない私にもなぜか恋人がいたりする――渡すバレンタインデーのチョコレートを買うために。

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