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 きっとやつらはほほえんで、あいもかわらず絡みあい、狩りにいったりするのだろう。瞼を閉じたおれはいま、膜の外へと意識をむける。

 すべての接続を遮断して、感覚するのをやめるというのは相当にあぶない。おれはおれを捉える術を失うはめになり、それであやうく溶けかけたことだってあるのだが、外を眺めつづける苦痛を思い、どうだっていいのさと開き直ったりもする。

 そして想像する。まだ太陽が照らす前の原野に描かれた、ひそやかに吹く風の姿を。高空をわたってゆく鳥の整然たる隊列を。崩落した高速道路を住処としてねむるヒトの末裔。その安心しきった寝顔。いずれにしても結果はおなじことなのだという囁きが、存在しないおれの鼓膜をふるわせ、想像するにしたってもっとましなことはないものかと問いかける。

 そうしてしゃぼんの外へむけたセンサを閉じていても、視界は暗闇とはほど遠い。依然としてしゃぼんが放つ光が、そこかしこをやかましく満たしている。

 このしゃぼん球なるものが果たして何なのか、本当のところをおれは知らない。

 おれにはつねに、七色に輝く球状の壁面の全体が視えていて、一点に意識を延ばせば、知覚は接続先のしかるべき眼と連結される。一連の動作はきわめてなめらかに、ほとんど同時に完了する。

 しゃぼんというのはだからその、感覚オペレータとして働く機関の総体で、おれの眼球であり、遠眼鏡であり、外に広がる天球そのもののようで、考えるおれ自身はそれらの間を光速で反復横飛びするあり方なのだとも言えるのだが、眼を通じて観測した世界をただ信じるしかない現状では、しゃぼん球が実際に真球であるのかはわからずじまいだし、そもそもここに外があるのかも定かではない。

 無数の感覚が空っぽのしゃぼんのその中を行き交う。

 走行し、泳行し、飛行しながらも、眼群は切れ目なく情報を送ってよこす。光学系の眼と接続すれば、観測の開始を示すちくりと刺すような感覚がもたらされ、多元視点での観測を行おうとすれば、接続感覚は剣山のごとくおれを苛む。

 眼の性質によって、そうした接続感覚は変化する。音響を拾えば甘みが広がり、磁気なら全面が痺れ、電流は涼やかな感触をもたらし、重力はしっとりと湿っている。ひとつひとつの眼はたいてい、種々の情報を一度に伝えてくるので、接続はそういった、さまざまな感覚が分かちがたくないまぜになったものとして感じられる。

 接続がなくとも、区画から区画へと膜の壁面を這って乱舞する接続要求はそれだけでわずらわしく、強制力をもっておれを侵襲する。痛みに近く痒みとも呼べそうなその刺激もまた、おれにとって親しみ深いものではあるのだが、いずれにせよもう、うんざりだ。

 この星に残された、ひょっとしたら最後のしらふな人格は、しゃぼんの中でまどろみ、退屈にとろそうになりながらもなんとかいのちをつなぎ、そうしてまた、いっそとろけてしまいたいものだと考えている。

 こんなふうにならないようにと、最善を尽くしてきたつもりなのだ。目新しいものと見ればすぐさま飛びついてきたし、こちらから積極的に対象に働きかけもした。けれども与えられた時間はあまりに長く、もはや費やすに価するものはどこにも見つからない。

 限界とは、おれの想像力の限界だったのだ。この世に生を受けて幾星霜。おれは枯れ果て干からびて、ただ全てが終わるのを待ち望んでいる。

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