魔法学校【 革命の狼煙 】部
吉野 龍馬
第1章 始まる高校生
プロローグ
「あぁたくよ!オーディンのジジイも、トールのジジイも何考えてんだよ!異世界へ力を貸すとか信じらんねぇ!一気に防戦一方になったじゃねーか!神様の数増やせば強くなるってか?ふざけんじゃねえ!」
荒野を走りながら、文句を垂れているこの巨人はロキと言う名の巨人だ。
裏で手を引き、
その結果、世界同士が繋がるホールという黒い穴が世界中に発生した。
その穴に落ちた同胞達は、別の次元へ飛ばされてしまった。
世界は終末へ向かっていたはずだったのだ。
巨人、ムスプルヘイムに住むスルトでさえ、別の世界からこの世界へ乗り込んできた、
私はというと、こんな状況で戦うなんて無謀と判断し、逃亡を決意した。
「無理無理無理!やれるわけねーじゃん!逃げよう逃げよう逃げよう〜」
男は奇術師や詐欺師などと、呼ばれただけあってその辺の判断の速さは人一倍鼻が聞いた。
そして私は結界の中に引きこもった。
それから何百年もの間、私はその場から動くことはせず、世情には疎くなる一方だったが、私にはどうでもよかった。
何故なら、世界滅亡は失敗したのだ。
別の世界から来た、神々の力により。
「おい!お前神様か?」
それは突然の声だった。
どこのから声がしているのか、最初に探すところから始めなければならないほど、ちっぽけな人の子供だった。
「君は、こんな所で何をしてるんだい?」
私の問いに少年はこう答えた。
「契約できる神様を探しに来た」
成る程。オーディン達が言っていたっけな。
確か別の世界への者達と契約して、利益を生むと。
というかだ。ここは私の結界の中だ。
ただの人が入ってこれるはずがない。
何故この子は入ってこれたのだ。
「君はここがどこだかわかるかい?ここはね、私の結界の中なんだよ?どうやって入った?」
理由を知らねばならない。
結界が弱まったのか、それとも結界を破る手段があるのか。
いや二百年は維持して来た結界だ。綻びもあるのかもしれないが、決して何もせずに入ってこれる場所ではない。
「俺と契約してくれる人を探してここまで来た。あんたが神様なら、契約してくれないか?」
「質問の答えがズレているね。私は君が来た理由なんて聞いていないよ?私はどうやって来たかを聞いた。それにね、契約なんて私はしない。私に利益はないからね」
少年は俯き、何かをブツブツと言いながら、こちらへ足を進めた。
私は少年の前に胡座をかいて座っている。巨人なので、座らないとまともに話もできない。
変身してもいいが、こんな小僧一人のために、そこまでする必要もない。
なので胡座をかいて話を聞いていたのだが、少年は私の足に触りこう言った。
「楽しめるよ?俺と契約したら、君さ、暇なんじゃない?だから、向こうの世界の俺という歪な存在を結界が通した。君の思考というよりも、君の本心がそうしたんじゃないかな?」
なっ!?
私はあっけに取られた。
こいつ何を言っているのだ。
いやしかし、実際暇なのは確かだ、悪戯をする相手もおらず、ただズルズルと日々を寝て過ごすだけ、叛逆したとしても、すぐに返り討ち。
やる事がなくて暇とは思ったことはないが、詰まらないと感じたことはあったかもしれない。
この小僧はそれを見破ったというのか?
それとも勘で言っているのか?
「それは勝手な理屈だな小僧。私は現状で満足している。なーにやりたい放題やったんだ。ここで待つくらい簡単なことだ」
私の言葉に小僧は心底退屈そうに言った。
「嘘つき。最後に聞くよ。本当に契約してくれないの?」
その目はなんだ。
向こうの世界の人と言ったか?
言葉は私が神だから通じているのだろうな。
「しかし日本語か、天照大神と同じ国の者というわけか。
ならば、その者たちに契約して貰えば良いのでないのか?」
「はぁ。ダメだよ。僕の属性は影なんだ。だから適性な神がいないらしい。予測だけど、君は適性があると思うんだ。だって、その心に隠した。本心はまさに影にぴったりだと思うんだ」
なんと。
この子はどこまで、私を見破っているのか。
それともハッタリが偶々当たっているのか。
なんともまあ、面白い小僧だろうか。
自然と私の口が歪み、悪戯っ子のような笑みが漏れていた。
「成る程。良い。契約を成そう。楽しめる世界を見てみたくなった。少し待て。私の魔法を少し弄る」
影か。そんな魔法私が使える訳もない、知らないし、その適性すらあるのかどうか。
だがこの小僧は楽しめそうだ。
ならば私は変えようではないか、存在のあり方をこの小僧に委ねようではないか。
私の力を。
さて、退屈な日々とはおさらばだ。
変われよ我が魔法よ。
何かが身体の中で渦巻く感覚があった。
変えるといっても根元から変えるわけではない。
変えるのはただ一部。
私の属性を影に変えるだけだ。
変えるのは簡単だった。
二百年もの間、細々とこんな暮らしをしていたためなのだろうな。
「さて、契約しよう。名をなんと言う?」
少年は心底から喜び、そして私の目を見て言った。
「
「ロキだ。君達の世界の存在からしたら、天敵かもしれんな。魔法がそちらの世界へ流れたのは元を辿れば、私の責任だから」
ラグナロクを起こしたのは私だからな。
恨まれても仕方ない。
「そうか。俺には関係ないからいいよ別に。俺が興味あるのは今とこの先だけだから」
そう言って少年は己の指を噛み、血の付いた指をこちらに向けて来た。
「そうかい。別にいいかい。しかし契約といってもそんな変なやり方しか無いのかい?」
「あると思うけど、俺これしか知らねーし。それに神様がいないことなんて稀なんだよ。こっちの世界じゃ生まれた時から、何かしらの神からの加護を受けているんだ」
「なるほどな。では君はその加護がないと言うことか。そして私の加護をか。あまり優良物件ではないがね。君もきっと優良物件では無さそうだ」
私は己の指を噛み、地を溢れさせて、彼の指にくっつけた。
その瞬間、彼の意識が私と繋がった。
「正解だ。俺は優良物件ではない。だからこそ、楽しめるんだろう?ロキ」
成る程。彼はこちらの世界へ乗り込んで来たのか。
それも影属性の適性を持つ神様を探すために。
なんともまあ、地雷のような子供だな。
しかし私が契約を成したのか。
成る程な。やつら別の神がこれをこぞってしていた理由がわかったよ。
思考をトレースできるなら、彼等が覚えた魔法なんかも全て、私達の物になる。win-winの関係としちゃ、丁度いいのかねぇ。
「楽しませろよ。友晴。私は当分ここにいるつもりだから、ここに来るために通って来た、次元の穴塞いで置いてもらえるかい?」
この小僧は最初から再起のルートでここに来たわけではなかったのだ。
ここに来た方法に関しては嘘。
そしてその後の俺の退屈とか言う話は、そう言って反応すれば、影属性に適性がある確率が上がる。
引きこもりと、退屈、その心の奥にある、本心を引きずり出すために、平気で嘘をついた。
「俺の仲間の魔法だから、消えるよ。ま、帰り道もそこを通って帰るけど」
友晴はそういうと、その場を去っていった。
私はその背中に最後にこう投げかけた。
「嘘が結局バレてたんじゃ意味がないのではないか?契約を切ることだってできるんだぞ?」
友晴はこちらを向いて笑いながらこういった。
「詐欺師ならそうするだろ?それに君が契約を解くって言っても無理だよ?血の契約はお互いの了承無しには、解けない契約の方法なんだ。今回は俺に軍配が上がったという事です。奇術師ロキ。君がラグナロクの首謀者と知って、とても高鳴る思いだね。今後ともよろしく」
「ふむ。イラつくね。嘘と本心を使い分けなければ生きていけなかったか」
10歳の子供のくせに大人びてやがるな。
これがロキと御白友晴との出会いだった。
そしてこの出会いから5年が経った。
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