ぱかぱかさんが通る 〜マジシャン探偵 清水一角〜

木船田ヒロマル

高橋 未央


 鳴り続けるスマートフォンのコール音。


 夜風が彼女の髪をふわりと揺らす。


 彼女はスマートフォンを持つ手を前に差し出し、それを手放した。

 光る画面には「ぱ か」の二文字。

 スマートフォンは緩やかに回転しながら七階分の高さを落ち、コンクリートの地面に激突して砕け、コール音は止んだ。

 一筋の涙が、彼女の左頬を伝う。

 彼女は階段を降りるような自然さで、屋上の縁から暗い奈落へと身を投じた。


 どんっ、という大きな音が、辺りに響き渡った。

 

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