Reloaded②

「っあー! 付いてくのに精一杯だクソ!」


2度目の訓練が終了して床に倒れ込み、戦場を駆け回って疲労した体を休め、上がった息を整える。

訓練データを睨むJBと目が合うと、難しい顔をして首を横に振る。


それを見てもう一度立ち上がり、頭の上にずらしてあったギアを着け、何から何まで作り上げられた世界に飛び込む。

ikarugaから飛び降りて着地した地点から始まり、目の前の数字がカウントダウンと共に小さくなり、0と同時に弾丸が飛来する。


「作戦内容は分かってるでしょ、Reloaded。つまりPhantom Princessの回収、それ以外どうでも良いこと。ファンプリを守りながら道を開き、ikarugaに器材とメンバーを避難させる。離陸まで時間を稼いで」


「了解。裏取りしてやる、距離2000、下手すりゃ狙撃されて即死。運が良くて行動不能ってところか」


「真面目にやりなさい、これが最後よ」


「ういうい、任せとけ! 五月蠅いけど優秀な指揮官のお陰で動きやすいからな、つい張り切っちまう」


「とっとと行け子犬ぱぴー! お前の短い足じゃぎりぎりだぞ!」


JBとの会話を聞いていたのか、鋭い犬歯と気迫を剥き出しにして、私の背中に皮肉と確実な殺意を乗せ、へばってきていた足に力を入れさせる。

ASCに表示されている地図を確認しながら進んでいたが、突然通信と地図表示がノイズを生じさせ、体内情報以外を視界から消す。


「おいJB! なんだこれ、1回目も2回目も無かったぞ。ASCの不具合か?」


「今回はジャミングが・・・・・・ら、ASCの・・・・・・が・・・・・・」


殆ど内容が聞こえずに切れたのに加え、距離は疎か時刻ですら表示されておらず、本隊が動き出すまでどれ位かも分からない。

だが、一度ウラノスの記憶で体験したからか、私にそれほど困惑はないが、初めて体感する他のPhantomは大きく動揺している。


「落ち着け、私たちのやることは変わらないだろ。裏取りが出来なくて怒鳴られるより怖いものなんてないだろ、私はそっちのが怖いね」


「確かに怒鳴られるのは嫌だな、それなら成功させて怒鳴られるほうがマシだな」


「どっちにしろ怒鳴られるんじゃねぇかよ!」


「そう言う人だろ?」


「そいつは違いないな、うじうじしてたんだろ蛆虫共が! って皆で怒鳴られようぜ」


「良し、良い気分で行こうぜ。どうせなら暴れてやろう!」


全員で笑って緊張が解けると、話す前よりも軽い足取りに変わり、迅速に敵陣営の死角地点に入る。

銃のロックを外して引き金に指を掛け、全員と一度目を合わせて意思を確認して、建物の陰から飛び出す。


少し高くなっている敵陣営を目指して、遮蔽物の少ない坂を駆け上り、見張りを7人潰して銃を拝借しながら進む。

HK416を肩に掛け掛けて、左手でテキトウに鷲掴みしたHK417を構えると、広範囲から弾丸が飛来する。


「まさかデルタフォースとかねえだろうな、そんなの来られたら裏取りどころじゃねぇ。ここから逃げるのすら危ういぞ」


「デルタフォースって国には認めてられてないんじゃないのか、何で対アメリカのシミュレートなのにそんなのが出て来るんだ」


最後の遮蔽物である岩に身を隠して覗き込むと、目の前の岩に当たって弾丸が跳躍する。

焦りを言葉に出してPhantomに伝えると、文句にして私に言葉を返す。


「反制府組織を潰す為なら何でも使うって事でしょ、本当に嫌な世の中ですね」


「これは仮想の設定だからデルタフォースが出てくるなんて決まってないでしょ、」


「しゃーね、公式には認めてないから使いやすいんだろ。世界最先端の訓練がされてる部隊だ。A、B、Cのどの部隊か分からないけどよ、とにかくヤバいのは変わんねぇよ」


狼狽えるのは構わないが、これが恐怖に変わると厄介な為、腰が引ける前に岩陰から飛び出す。

飛び出した瞬間に狙撃手を2人潰して、スモークを投げて視界を遮る。


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