なろうとカクヨム

 なろうとは何か?

 コミケそのものである。


 最低限のレイティングのもとに、自由に作品を発表できる。作品の販売数に応じていい場所と、大きなブースが割り当てられる。評価の基準は作品を購入する読者だ。運営はマーケット内のトラブルに対処することだけ考えていればいい。


 その結果、どう発展してきたか。


 なろうには自分の本を置きたい人が大勢集まった。その中で多くの人に読まれるジャンルのブースが大きくなった。なろうにそういう本が集まっていると聞いて、その傾向の本を欲しい人が、どんどん集まってきた。そういう本を売りたい人もどんどん参入した。


 なろうは一つの社会現象になり、その中から書籍化される作品も多く生まれていった。この流れは今後も変わらないだろう。中心となる作品が異世界ファンタジーから別のものに変化する可能性はある。しかし構造そのものが変わらなければ、その時代にウェブ上でもっとも求められる題材において同様の状態は続くことだろう。


 しかし、そこでなろうに参加した人間のうち、一部の者は考える。


 自分の本は売れない。でも作品の質では負けていない。

 なろうのマーケットでは、売れるジャンルではないかもしれない。しかしそれが全てだろうか。

 

 なろうがコミケであるとすれば、それは当然ながら、あらゆる読者を代表したものではない。マンガ全体で言えばコミケがその一部に過ぎないように、小説を読む人間全体として考えれば、なろう系と呼ばれる物語を求める人間はごく一部だ。

 上記の考察による連鎖反応がその状態を生み出しただけであり、なろうは時代が生んだ一つの傾向でしかない。


 そこで、なろうで受け入れられなかった人間がカクヨムに流れるという現象が発生する。


 カクヨムの運営方針はなろうとは違う。


 大手の出版社だから、もともとからしてサイトの運営目的が違う。出版社が求めるのは、本として売れる作品だ。王手だから、当然なろうに代表されるコミケ的な作品にも手を出すが、別のジャンルの物も欲しいと考えているはずだ。メディアミックスとして展開できる作品の商品としてのケタ違いの魅力も、ロングセラーを生み出し、新しい定番になる作家が存在することも知っている。


 私見では、カクヨムはサイトを分けた方がいいと思う。


 カクを応援する新しい時代を作る創作サイト『カクヨム』


 ヨム人が作る現代の創作の新しい形『カクヨムフリー』


 それで、リンクでも貼ったら、いい感じになる。『カクヨムフリー』は読書選考のみで評価し、運営は一切口を出さない。盗作や不正のみを注意し、単純に上位の作品をレイティングに問題ない限り書籍化する。なろう等の上位作品もかなりの確率で重複投稿するはずだから、それが実質上、日本で公開される最高レベルのウェブ小説になる。


 そして、それ以外の価値もしっかりと『カクヨム』で主張する。

 運営の評価を積極的に表に出し、コンテストなどにより才能の発掘や育成を丁寧に行っていく。

 自分たちの作品もウェブ小説と同列に評価される。努力次第ではあるが、出版界でウェブ小説に勝つ可能性も十分にある。そう思う作家が次々に生まれれば、そこにも連鎖的に才能が集まってくる。


 オリジナリティーで勝負することには特別な価値がある。力のある作家を集めることができれば、出版社にも大きな利益があるのではないだろうか。

 

 


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