ウェブ小説の弱点について
前章で書いたウェブ小説には明確な弱点がある。
弱点とは常に利点と表裏一体のものだ。だから、最大の利点を考えたらいい。
前章で述べたウェブ小説の最大の利点は、共通認識を持つ人間にとって余計な描写を省くことができることだった。だから、前提が崩れればそれは成立しなくなる。
共通認識がなくなれば、それは単独の作品としては存在しえない。時代背景に依存した表現は、例えば電話やガラケー、金銭単位の描写などは(それでも流行りの物を避ける作家はいるが)時代背景としての脚注で理解を得ることができる。
しかし、あえて省略することを利点として書いて、その効果で作品価値を押し上げてきた小説が、それが一転してマイナスになった時に対応しうるのだろうか。
否である。
それが何か月後か、何年後かはわからないが。永遠の未来ではない。
これには実例がある。何十年か前に圧倒的な人気を誇ったマンガの二次創作作品が現在ひとつでも残っていて市場価値を示しているだろうか。
原作のマンガそのものは、単独で存在し得るものとして成立しているので、今も価値は失われていない。数十年を経ても残っている小説にも同じことが言える。キャプテン翼もドラゴンボールも、初めて読んだ人間を楽しませることができる。
しかしその原作マンガと、そしてそれを面白がる巨大なコミュニティーがあるのが前提となっている作品世界に、当時、それを共有した人間以外の心をとらえる力があるだろうか。
ウェブ小説のもうひとつの利点は、よみやすい文章を書く能力があり魅力的な導入部を書くことができれば人気を博する可能性が広く存在することだ。
それを弱点として考えてみる。
その結果として生み出された作品は、作者のオリジナリティーや才能を必ずしも保証してはいない。逆に言えば、ほとんどのウェブ小説は、他の誰にも真似ができない特別な作品ではないということだ。
だから他の誰かに代わられる可能性が常に存在する。同様の文章能力を持つ人間が従来以上に魅力的な導入部に至る発想に至れば、そちらが人気作品となる。もっと言えば、そちらの方が商業的に価値の高い作品になる。
あいつに俺が取って代われないわけがない。
そう思った小説に自分がとって代わった時、次の作品では逆に取って代わられるかもしれない。
うまいだけの話はない。利点と弱点は表裏一体。それは、ある程度の真実であると思う。
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