第21話:耕作者
第21話:耕作者
おめでとうございます。これを読まれているという事は、あなたは選ばれし
あえて目をそらしていた部分もある。
ゲームのような《力》もそうだが、決定的なものがあった。
『ウォシュレット』だ。
それがTOTOの登録商標だって事くらいはトワでも知っている。その上機能まで再現されていた。
例え、ここがゲームの中の世界だとして、トワはトイレを作る事の出来るタイトルは知っていても、『ウォシュレット』を作れるものを知らない。
たまたま、ゲームのような《力》をあつかえる世界に来ただけならまだしも、日本の会社の商品名そのままの物が存在するのはやりすぎだ。
勇者として召喚された、次元の狭間に落っこちた、ゲームに熱中しすぎて精神がゲームに囚われてしまった。色々なシチュエーションを考えた事もあった。
結局、どれも違った。
トワは
あなたはこの世界で右も左も分からずさぞ戸惑った事でしょう。当然です。何一つ説明せず、護身用の装備の貸与すらひかえさせて頂きましたので。
心苦しくはありましたが、全ては
そして、改めて祝福させて下さい。あなたが生きてこれを読んでいるという事は、あなたに与えられた
恐らく、あなたは
しかし、それについては、またしても心苦しくはありますが伏せさせていただきます。
理由は二つあります。
一つは、それを調べる過程がすでに義務を果す事につながるからです。他の
また、この世界のいたるところにヒントは隠されております。様々な場所に、様々な形で。
そして、もう一つの理由ですが。
全てを知った
権利と義務は表裏一体。
ですが、寛大にもそのような輩に罰則などはございません。これは固く誓いましょう。
なぜなら、
あなたが選ばれし
あなたがすべき事は、この世界で日々を生き、知り、そしてこの世界の人々と交流する事。それが義務を果す事につながるのです。
「なめた話やなぁ……」
そう呟いたトワの表情は無そのものだった。
権利? 義務? 勝手に人を連れてきておいて、何を当たり前のように言うのか。
便箋を読むと同時に頭の中に流れて来た声は、高慢の権化そのものだった。
「
トワは沸騰しそうな感情を押さえつける。
そして、考察する。
恐らくは、地球又はこの世界とはまた違う世界からつれて来られた人間。
恐らくは《力》の事だ。サンドボックス系ゲームをなぞらえてはいるが、それがこの《力》の特性なのか、
ただ、豊富なゲームの経験のあるトワだからこそすぐに馴染めた事から、後者である可能性が高いと思える。
義務とは?
トワには何もわからない。が、知っていれば放棄しただろう。その意味ではこの封書の相手のやり方は正しかったようだ。
便箋にはさらに文章が続いていたが、トワの精神が限界に近かった。
ただ、文末の追伸から始まる一文だけが目に入った。
追伸
あなたの波乱に満ちた人生の助けになるでしょう。
「なんか、最後の一言が不吉やけど。……同封?」
トワは眉をひそめた。封書には便箋しか入ってなかったはず。
念の為に封書の口を開くと、そこには手のひらサイズの銀色の鍵があった。便箋を取り出した時にはなかったはずだし、もし初めから入っていたのなら、封書が鍵の厚さでふくらんでいたはずだ。
「まぁ、いまさらやね。でも、これ何の鍵って、うわっ!?」
左手のひらにのせた鍵が、そのまま手の中に沈んでいったのだ。慌てて手を振るトワだが、鍵が出てくる様子はない。
そして、
いつも開きっぱなしのインベントリパネル。そこにある1×10の所持品枠。これまでその下段は鍵マークによって閉ざされていたが、直下の1行が
これで所持品枠は2×10となった。
まださらに下段に鍵のマスがあるので全部が
後で確認する必要があるが、
トワは嘆息した。悔しく思いつつも、《力》の
あるいはそんなトワだからこそ、
やるせなさを感じつつ、トワは便箋を封書にしまって
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