第16話:せせらぎ
第16話:せせらぎ
「『
森に入って、あっさりとツタは見つかった。というよりも、注意を払ってなかっただけであちこちの木に絡みついていた。藪に絡んでいるものもあった。
木に絡んでいるというだけで、木とは別の存在である為、
ともあれ、ツタ集めは想定以上にスムーズに進んだ。
ツタ集めが順調であった為、クロスベリー自生地の崖に作った階段を下るのはかなり早い時間になった。
石材確保の時間を考えても、まだ何か出来る時間は作れそうだ。それに、石材を掘る時間も昨日よりはるかに短縮されているはずである。何故ならば――。
「『
トワの左手に現れたのはツルハシだ。それも昨日の『木のツルハシ』ではなく『石のツルハシ』だ。サンドボックス系のゲームでは
「あっと、その前に。『
今度は右手に一枚の紙が現れる。拭き取り紙ではなく、もっとごわごわした質感のものだ。
トワはその紙に視線を落とす。そこには
これはコンパスと『厚紙』から
トワが探索した部分しか地図化されないが、逆に未探索部分が空白なので分かりやすい。
かなりの便利
またトワが
まぁ、その事に対する対策が必要になるのはまだまだ先の話で、今は一枚の地図すら埋まっていないのだが。
「うぉぉ!?」
トワはツルハシを崖の壁面に突きつけ、伝わってきた
一度でこそ
木のツルハシの場合、
「やはり、
サンドボックス系ゲームにおいて、
サンドボックス系なら必ず存在する概念という訳ではない。また
ただ、現在のトワが把握している限り、品質を示す要素は見当たらない。
「まぁ、まだ
とりあえず、今この場で悩む事でもないので、トワはしばらく無心でツルハシを振るい続けた。
予想通り石材回収も早く終え、クロスベリーの実もほどほどに摘んで、地図の未探索部分を埋めている最中だった。
その音を耳に捕らえた時、トワは走り出した。
「まさかっ!?」
背の高い雑草に足をとられて転びそうになりながらも、音の元へ一直線にトワは走った。その音にはそれだけの価値があった。
「やぁっほぉぉ! 水ゲットやぁ!!」
先日のイノシシの件があったのでトワは慌てて身構えたが、石の剣を取り出す前に相手は茂みの奥へと姿を消していた。
それは数匹のシカだった。あのイノシシのようはサイズではなく、奈良のシカと同じくらいのサイズであった。もっとも、奈良のシカはヒトの歓声程度で引くような細い神経の持ち主ではなく、どこまでもシカせんべいを要求し、拒否すると服を噛むような輩だが。
観光地なんだし、鹿のしつけも必要なのではなかろうか。
それはさておき。
「水場が見つかったんは嬉しいけど、他の動物も飲みに来て当然やろうな」
動物が飲めるのなら、まず人間も飲めるだろうが、逆に危険な動物が来る事もありうる。
「ちょっと、何か考えへんといかんか。『
「さすがに液体は無理か。まぁゲームでも汲むのが基本やもんな」
トワはその場で基本作業机を
予め、川や湖など水を確保出来る場所を見つけた場合の手順は考えていた。
「『
左手に現れたのは
水桶の内部には、計量器の目盛りを思わせる溝がいくつも彫られていた。
「たぶん、この一番上の線まで汲むんやろな」
トワは沢に水桶をくぐらせる。そして、持ち上げようとして計算外の事が起こった。
「お、重い」
なんという非力。トワは水の入った水桶を持ち上げられなかったのだ。
やむなく、沢の中のままの水桶を
「水桶はスタック出来へんから、あんまり多く持ち運びは無理やなぁ」
贅沢な話である。
昔は天秤棒をかついで水桶で水を運び、瓶に水を溜めて生活用水に使っていたのである。
もっともこの世界の生活水準や技術水準は相変わらず誰とも出会えないので不明ではあるのだが。
一度に大量に運ぶのが難しいため、トワは
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