ひだまりの丘に貴方の絵を
楠木黒猫きな粉
第1話 ある日それは獣となった
───天才は1%の才能と99%の努力でできている───
そう言っていたのはどこの誰だっただろうか。今、この世に存在しているのならば一発ぶん殴ってやりたい。
なんせ才能が初めからなければそいつは99%なのだ。決して100にはなれない。なることすら許されないのだ。
だから、天才は理解されない。誰もわからないのだ。解ろうともしていないのだろう。だってそれはいつも遠く離れた話なのだから。
凡人は天才にはなれない。秀才止まりなのだ。それは変わらない。才能なんて物があるからだ。誰にも平等に配られず、最もそれを欲する者に与えられず、なにも関係ないものに与えられる。才能とはそんなものだ。
だから、人は逃げるのだ。才能を言い訳にして、適材適所と言って逃げ道を作っているのだ。
そして、何処かの天才は思い付いたのだ。
その天才は逃げ道を作る凡人が嫌いだった。自らは何も努力せず、ただ逃げ道を作るだけの凡人が嫌いだった。
だから天才は考えたのだ。ならば逃げ道を作らせなければ良いんだ、と。
そして天才は才能を均等に配る方法を作り出した。
だがそれは人の感情を集めた物になってしまった。その実験は失敗だった。
天才は考えた。どこで間違えたのだろう。どこがおかしいのだろうと。
そして、天才は行き着いた。その間違いに気付いたのだ。
───人が全て違うという間違いに───
そう、天才の理論には人が全て違うと言うことが邪魔だったのだ。
天才の考えは全ての人類に『平等』に才能が与えられるようにすることなのだ。なら『違い』は必要が無かったのだ。
そして、天才は作り上げたのだ、自分の為だけの理論を完成させたのだ。
天才はその理論を試した。実験は成功だった。
その日から世界は変わった。天才はそれを世界中に広めた。人は才能を欲しがった。そして、誰しもが平等に同じ才能を手に入れた。
誰もが笑顔になった。才能という物に振り回されない世界を喜んだ。
しかし、同時に世界は停滞した。変わらなくなった。変わるのが怖くなったのだ。失うのが怖いのだ。
だが世界は停滞を許さなかった。『神』は世界は変わるものだと言った。『世界』は全ては変わるものだと言った。しかし『天才』はそれを認めなかった。自分の嫌う物がいる世界が嫌なのだ。そう言って天才は神と世界を否定した……拒絶したのだ。
天才に拒絶された世界と神はあるものに目をつけた。
『積み上がった才能の余り』があったのだ。
もとより才能とは人に不平等な量で配られる物だ。そうして配らないと余りが出てしまうからだ。
しかし天才はその才能を均等に配った。そして余りが出たのだ。
全人類に配るには足りなくて、しかし微妙に量がある余りはどうしようもなかった。
だから『神』と『世界』はその才能に《ナニカ》を与えた。
すると【それ】は形を獲て、色を獲て、変わらない止まった世界を壊すように塗り替えるように喰らって言った。
そして、人々はその【破壊】を『敵』とした。
────その時から停滞した人と才能の獣の戦いは始まり、『天才』と『神』そして『世界』は見えない《ナニカ》を望んだ────
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